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2022.03.09 目標管理、OKRとは。Googleが用いて有名になったOKRに関して、KPIやMBOの違いを用いて解説

OKR_top

企業等でのプロジェクトで重要となるのが、ゴールの設定とそこに至るプロセスを管理する仕組みです。これらは一見難しくなさそうな課題に感じるかもしれませんが、多くの要素が複雑に絡まりあうためシステマティックな評価・追跡・管理が必要となります。

その方法の一つがOKRです。本記事では、今や多くの企業が導入しているメソッドとして知られる、OKRの概要をお知らせします。

  

  

OKRの仕組み

OKRとはObjectives and Key Resultsの略で、直訳すると目標と主要結果といった意味になります。これはアメリカ・インテル社のCEOだったアンディ・グローブが1970年代に開発した、GoogleやFacebook(現・Meta)などをはじめとするシリコンバレーの企業でよく採用されている目標設定、管理ツールです。その仕組みを端的に表すと、まず一つの目標に対して複数の主だった結果が付随すると捉えます。そしてこのワンセットを、企業・部門・チーム・個人といった各階層に応じて設定し、目標管理を行います。

ここで重要となるのは最小階層である個人レベルでの目標・結果と、最も大きな階層である企業のそれとをリンクさせること。これによりそれぞれの目標と結果が相互に作用しながら、大局的なゴールへの導線が完成します。言い換えれば、目指すべき方向性を共有するためのシステムともなるのです。このとき目標であるObjectivesと、主な結果を示すKey Resultsには、それぞれの役割ごとに特定の設定条件が付与されます。

目標であるObjectivesの条件は、以下などが該当します。

・数値目標としない
・シンプルかつ覚えやすいものとする
・1~3か月程度で達成できるものとする
・チームの士気を上げる挑戦的なものとする

目指すべきゴールであるObjectivesは大局的な意味での目標であり、チームメンバーにとってのランドマークとして機能させています。

一方、主な結果を示すKey Resultsの条件は以下などです。

・数値ではかれる指標とする
・2~5程度を挙げる
・ストレッチゴールとする
・6~7割程度の達成を成功とする
・自信度は10段階中5程度のハードルとする

Key Resultsは必ず数値化できるものとする代わりに、完璧を求めない柔軟な達成率としていることが理解できます。ここでいう自信度とは1であればまったく不可能と感じるもの、10であれば余裕をもって実現できるものといったニュアンスを示します。

従って、自信度5であれば、努力すれば到達するかもしれないという五分五分の感覚を目安にするということです。

こうしたことからチーム全体、あるいはメンバーがどこに向かっており、またどの程度まで進捗しているのかを客観的に把握できるようになります。

  

  

OKRと、MBO・KPIの違い

次に、OKRとMBO、KPIの違いについてみてみましょう。

MBOとはManagement by Objectives and Self Controlの略で、目標管理と訳されます。KPIはKey Performance Indicatorの頭文字から重要業績評価指数と呼ばれます。MBOは目標管理ツールの一種ですが、報酬決定などの評価制度にも使うことが大きな特徴です。KPIは生産性を上げるために具体的な数値目標を設定するもので、決められたゴールへと導くための管理ツールといえます。

OKRとMBO、KPIの違いを以下の表にしました。

以上の事柄から、これら3つの項目はそれぞれ目的が異なることがよく分かります。OKRはイメージとしての目標共有、MBOは評価制度としての目標設定、KPIは生産性アップのための数値設定と捉えることができます。

  

  

OKRの導入事例

次にOKRを導入して成功した企業の事例をご紹介します。OKR発祥であるインテル社は除き、以下に3社を例示しましょう。

  

Google

GoogleではクォーターごとにOKRを公開し、全社ミーティングの場を設けてそれを共有しています。また上司と部下が一対一でダイレクトコミュニケーションを行う機会も設けており、その際にも個人が大切にしているものと会社全体が目指すものとの意識合わせが可能です。巨大な企業ではありますが、OKRをうまく利用してコミュニケーションを重視している点もGoogleの成功理由の一つといえそうです。

   

SanSan

SanSanは法人向けのクラウド名刺管理サービスで知られる企業で、2015年にOKRを導入しています。Googleでの成功例から試験的に運用を始めたとされ、生産性を重視する経営方針の中で個々人の行動がどのように成果につながっているのかを可視化するのが狙いでした。

特徴としては、メンバーレベルでのOKR設定は行わず、部門やチームまでとしてそれをグループで達成することを目標とする点です。またSanSanでは、この一部を報酬評価制度に利用しており、OKR達成に対する貢献度という観点を設けています。これらの取り組みを通して、全社共通の目標をメンバー全員が適切に把握するという効果を生み出しています。

  

メルカリ

フリーマーケットのアプリで知られるメルカリもOKRを導入しています。メルカリではMBOも併せて用いて評価を行い、Google同様に四半期ごとに社員とのミーティングを通してデータの振り返りを実施しています。しかも、6か月に一度チームごとのOKRを共有する合宿を行い、全社の方針を社員も参加して決定しています。OKRを活用して経営陣だけではなく、一般社員の声も汲み上げて会社の舵取りを行う点が特筆されます。

  

  

OKRの失敗事例

一方ではOKRを導入したもののうまく活用できず、失敗してしまう事例もあります。

以下にその典型的な原因を3つ挙げてみました。

  

定期的な確認を怠る

先述したGoogleとメルカリの例から分かるように、OKRは一度設定すれば終わりではなく、定期的に確認して共通理解を新たにする必要があります。そこで微調整をする場合も考えられますし、何よりも自分たちが目標までの途上でどの位置にいるのかを把握することが大切だからです。OKRを導入する際には先述の成功例を参考に、定期的な確認の機会を設けましょう。

  

ムーンショットが高すぎる

ムーンショットとは、月に届くような大きな目標のことを指しています。OKRでは目標を大きく、チームの士気を高めるチャレンジングなものにすることが推奨されていますが、明らかに実現不可能なものでは意味がありません。失敗する例として多いのは、このように目標設定が高すぎるパターンです。チームや個人が最大限の努力を引き出せるような目標を設定する必要があるでしょう。

   

設定が明確ではない

OKRについて、Objectivesの条件として数値を設定しないことを先述しました。この部分を間違って解釈し、目標が曖昧になってしまうケースも存在します。目標が曖昧な場合、プロジェクトやチームが迷子になりやすく、結果として個人も目指すべきゴールを見失ってしまうでしょう。

OKRではKey Resultsの方で必ず数値化できるものを定める必要があります。OKRを用いる際には、Objectivesの条件だけでなく、Key Resultsの条件もしっかりと考慮して設定することが重要です。

  

  

まとめ

あらゆる事業活動において目標設定を行うのは当然のことですが、組織が大きくなればなるほどメンバー個々人がどう動くべきかが不明瞭になりがちです。そうしたケースを避けるためにも正しく目標を設定・管理する仕組みが必要であり、その回答の一つがOKRだといえます。組織は小さなチームというユニットがいくつも存在する状態で運営されることが多いため、それぞれが適切かつ有機的に連動するためには共通認識が不可欠となります。

OKRには絶対に決まった型というものはなく、それぞれの企業やプロジェクトなどの特性に合わせて柔軟な応用が可能です。自社にとって最適なアレンジを工夫しながら、OKRの設定を行うのが望ましいでしょう。

  

   

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