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2022.06.08 トヨタ生産方式とは?基本思想から事例、成功と失敗の分かれ目を徹底解説

トヨタ生産方式は工場など、ものづくりにおける生産活動の運用方式の一つです。「カイゼン」や「見える化」などの言葉は誰でも耳にしたことがあるでしょう。トヨタ生産方式は、製造業以外にも活用できるノウハウです。今回は基本的な知識から一般的な生産方式との違い、メリットやデメリット、具体的な導入事例までをご紹介します。 

  

  

トヨタ生産方式とは 

トヨタ生産方式とはトヨタ自動車(以下、トヨタ)が生み出した、ムダを徹底的に排除して利益を確保する生産方式です。今では世界的な自動車メーカーのトヨタですが、戦後しばらくは小さなメーカーの一つに過ぎず、設備や人員のコストを抑えながら生産効率向上を目指す取り組みの一つとしてトヨタ生産方式が生まれました。まずはトヨタ生産方式の基本原則と仕組みをご紹介しましょう。 

  

2つの基本思想、「ジャストインタイム」・「自働化」

ムダを排除して生産を合理化するための基本思想に「ジャストインタイム」と「自働化」の2つが挙げられます。以下でそれぞれご紹介します。 

■ジャストインタイム 

ジャストインタイムとは、「必要なものを必要な分だけ」生産する方式です。生産に必要なものが不足すれば作業が停滞しかねません。しかし、将来的に必要とはいえ、ものが多すぎると過剰在庫に陥る可能性があり、管理コストなどのムダが発生しかねません。 

トヨタ生産方式では、顧客の注文に応じて必要な量のみを必要なタイミングで生産します。そのため在庫を最小限に抑えることができ、生産や管理のムダを抑えることができます。 

ジャストインタイムを実現するために採用されているのが「かんばん方式」です。「かんばん」とは、部品の数量や納入時間を記載した指示書のことで、部品の箱に「かんばん」が使われることから「かんばん方式」と呼ばれています。 

■自働化 

もう一つの基本思想が「自働化」です。「自動化」ではなく、「ニンベン」の「働」を使用しているのは、「人の手が加えられている」ことを意味します。 

トヨタ生産方式では機械の異常でミス(不良品)が発生したときに、生産をストップして人が原因を究明します。速やかに原因を突き止めて再発防止を図ることで、不良品を最小限に抑える工夫といえます。 

  

4つの仕組み、「カイゼン」・「見える化」・「なぜを繰り返す」・「ムダ取り」

続いて、トヨタ生産方式の4つの仕組みをご紹介します。 

■カイゼン 

カイゼンとは、現状の生産体制に満足せずにより生産効率のよい方法や安全性の高い方法に変えていくことを指します。漢字の「改善」は悪いところを修正する意味がありますが、トヨタ生産方式のカイゼンとは、「作業効率を良くする」意味で使われます。そのため「カイゼン」とカタカナ表記で区別しています。 

■問題の見える化 

「問題の見える化」は、トラブルが発生した場合、その内容を全員で共有して見えるようにする考え方です。不良品が出ても、取り除くだけでは問題が見えません。そのため、トヨタ生産方式では、皆で改善に取り組めるように問題を見える化し、共有すること自体が仕組みに盛り込まれています。 

見える化には「問題の見える化」だけでなく、「思いの見える化」、「原価の見える化」、「進捗状況の見える化」などがあります。どれも問題解決に向けて全員でカイゼンを進めるための仕組みです。 

■「なぜなぜ」分析 

問題を解決するためには、問題の原因を見つける必要があります。そして、本質的な解決を目指すうえでは表面的な原因ではなく本当の原因(真因)を突き止め、対処する必要があります。そこで、トヨタ生産方式では、1つの問題に対して「なぜ」を5回繰り返して問題の本当の原因を探り、根本的な解決を図ります。 

■7つのムダどり 

トヨタ生産方式では、「ムダ」には以下の7つがあるとされています。 

  • つくりすぎのムダ 
  • 手待ちのムダ 
  • 運搬のムダ 
  • 加工のムダ 
  • 在庫のムダ 
  • 動作のムダ 
  • 不良をつくるムダ 

これらのムダの排除を「ムダどり」と呼びます。生産現場では「付加価値を生まない作業」をムダと定義し、間接部門やサービス部門では「顧客の役に立たない」ことはムダな作業としています。 

  

   

トヨタ生産方式と一般的な生産方式の捉え方の違い 

ここまではトヨタ生産方式の基本思想と4つの仕組みについて解説してきました。ここからは、トヨタ生産方式と一般的な生産方式の違いについて見ていきたいと思います。 

一般的な生産方式では、「大量生産でコストを抑える」、「在庫を持って販売機会に備える」というのが常識かもしれません。しかし、このようなやり方では過剰在庫になりやすく、生産・管理のコストなどにムダが発生しかねません。 

これに対して、トヨタ生産方式では顧客の要望に応じて必要なものだけを必要なタイミングで生産するため、在庫は最小限に抑えられ、ムダを抑えることができます。また、「見える化」や「カイゼン」を浸透させれば、現場で働く人の生産性に対する意識も向上させることができます。 

  

  

トヨタ生産方式のメリットとデメリット 

トヨタ生産方式のメリットについてはここまでの解説でも触れてきましたが、ここではメリットに加えてデメリットも解説します。 

  

メリット

トヨタ生産方式のメリットとしては、「在庫を最小限にできる」ことを前述しました。「かんばん方式」で在庫管理のコストや手間を削減できるだけでなく、在庫の不足分を前工程にオーダーするような仕組みのため、注文すべき量が分かりやすいといった特徴もあります。また、前行程では「かんばん」が回ってきた段階で製造を行うため、在庫の数量を確認する手間も不要です。在庫管理の手間がなくなれば、人件費の削減も可能になるでしょう。また、前述の4つの仕組みでも触れましたが、「見える化」や「カイゼン」を浸透させることで、働く人の生産性に対する意識向上も期待できます。 

  

デメリット

続いてデメリットについて見ていきましょう。トヨタ生産方式は、平準化されたものを大量生産するときには有効な手法ですが、多種類の製品を少しずつ生産する場合にはあまり向きません。安定した受注があることが条件になるため、需要に波のある業種にも不向きな傾向があります。 

一般的には大量に部品を購入してコストダウンを図りますが、トヨタ生産方式では、必要なときに必要なだけを発注するため、大量購入によるコストダウンは困難です。在庫が欠品した場合、その後のラインが全て止まってしまうリスクもあります。リスクを回避するにはカイゼンを推し進めて、不良品発生のリスクを最小にする必要があります。 

  

  

トヨタ生産方式の導入事例 

ここからは、トヨタ生産方式を導入して成果をあげた企業の事例を紹介します。製造業だけでなく、さまざまな業界で活用されています。 

  

株式会社ロックフィールド

高級惣菜店、「RF1(アールエフワン)」や「神戸コロッケ」などのブランドを展開する、株式会社ロックフィールドは、2001年にトヨタ生産方式を導入しています。全国300以上の店舗で販売する惣菜を原材料の調達から生産、店舗への物流、販売まで一貫して行ってきたロックフィールド。全国展開する店舗の需要にあわせて「ジャストインタイム」で商品を製造・運搬することで生産性を向上させ、ムダ(廃棄ロス)の削減にも成功しました。 

  

  

トヨタ生産方式の成功と失敗の分かれ目 

トヨタ生産方式の導入を成功させるためには、ものづくりの現場で「常識」とされてきたセオリーを見直すことが大切です。例えば、「欠品を避けるため、在庫を多くもつ」といった常識を覆すことも必要かもしれません。 

また、新たな取り組みには失敗はつきものですし、無駄の排除のためには目の前の問題を解決し続ける必要もあるでしょう。これには、「なぜなぜ分析」が有効です。 

  

  

まとめ 

トヨタが生み出したムダを徹底的に排除して利益を確保するトヨタ生産方式。今回は、その基本思想や4つの仕組みの他、一般的な生産方式との違いやメリット・デメリットをご紹介しました。在庫管理の手間や人件費の削減など、企業経営における大きな問題において、効果が期待できるトヨタ生産方式ですが、導入には従来の固定概念を覆すことや現場への浸透度を高める工夫も必要となるでしょう。

  

  

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