2022.04.01 心理的安全性とは?作り方のポイントと高めていく方法を紹介
職場の風土にはさまざまなタイプがありますが、自由で活発な発言や意見交換ができる現場ではよいアイディアも浮かびやすいでしょう。また、そうした土壌はメンバー同士の信頼関係にもつながり、プロジェクトにおいてはチームワークの発揮が期待できます。
このような職場内での環境づくりの要となるのが心理的安全性です。比較的新しい概念ですが、働く人にとってあらゆるシーンで重要となるファクターとして注目されています。本コラムではそんな心理的安全性について解説します。
心理的安全性とは
心理的安全性についての定義、そしてこの概念が広まった背景を以下に概観してみましょう。
心理的安全性の定義
心理的安全性とは1999年にハーバード大学の組織行動学者、エイミー・エドモンドソン教授が提唱した心理学用語です。組織や職場の中で自由に発言や意思表示、指摘などを行っても誰にも拒絶されたり罰せられたりする心配のない状態のことを指しています。いわゆる風通しのよさにつながる点もありますが、例えばメンバー同士が仲良く冗談を言い合いながら業務に取り組める職場環境という意味とはイコールではありません。
仕事をする上では言いにくいことや、その発言をすることによって自身の立場に不利益を被る恐れがあるといったシチュエーションも想定できます。その相手が上司や先輩など立場が上の人物であればなおさらで、そうしたバイアスが現実に存在しています。しかし、それが適正な指摘等であれば企業やプロジェクト全体にとって有益であり、ひいてはメンバー全員のメリットとなるはずです。
心理的安全性とは、このような局面で指摘や発言を職場の誰しもがきちんと受け止めてくれる、あるいは相互に認め合えて、しかも人間関係に不利益をもたらさないという確信が共有された状態のことです。メンバー同士の信頼感と言い換えられる部分もありますが、こうした環境には組織やチーム内での文化的風土の醸成も必要となってきます。
心理的安全性という言葉が広まった背景
心理的安全性という言葉が広まった背景には、2016年にGoogleが発表した研究成果によるところが大きいとされています。その報告では、高い生産性を誇るチームにおける一つの共通点として、心理的安全性の高さが指摘できるというものでした。これはGoogle社内で高い成果を出すチームの条件を探るプロジェクトによる分析結果の一つであり、心的安全性の高いチームでは収益性の高さやアイディアへの応用力、そして離職率の低さなどが特徴として挙げられました。
心理的安全性が高いことによってプロジェクト等の問題点を虚飾なく議論でき、問題の核心を捉えることで高収益性につながっているといえるでしょう。また、これらはメンバー間の信頼関係にも直結するため、人間関係を基礎とした職場環境への安心感も手伝って離職率も自然に低くなると考えられます。
心理的安全性がこうした好循環を生み出すという研究結果を踏まえ、この概念が広まりをみせています。
心理的安全性が高いことによるメリット
心理的安全性の高さは、具体的にどのようなメリットを生み出すのでしょうか。すでに述べた部分もありますが、以下に代表的な3点を例示してみましょう。
生産性の向上
上記のGoogle社の研究でも明らかになったとおり、心理的安全性の高さは生産性の向上につながります。これは特に業務改善の提案やそれへの対応が活発に行われやすい環境が影響しており、メンバー各自が十分なパフォーマンスを発揮するベースになるともいえるでしょう。
イノベーションの促進
イノベーションとは一般的に技術革新を指す言葉です。心理的安全性の高さは活発な意見交換を導く効果があり、遺憾なくアイディアを出し合えること、それらを十分に擦り合わせて検討できる土壌は、新たな技術の創出を促進します。
学習する組織レベルの向上
心理的安全性がもたらすメリットはチームの個々人はもとより、結果として組織全体のレベル向上にも影響します。その要点の一つとして、ミスやエラーに対しても適格で迅速な指摘と対応が可能となることが挙げられます。
失敗から学ぶことが多いことは自明の理ですが、組織が大きくなるほどその対応と周知にはタイムロスやさまざまなバイアスがかかりがちです。心理的安全性の高さはそうしたハードルを下げる効果もあり、組織のレベルアップに貢献します。
心理的安全性が低い組織で生まれる問題
では、逆に心理的安全性が低い組織では、どのような問題が生じるのでしょうか。
以下に3例を挙げてみましょう。
無知だと思われる不安
心理的安全性が低い組織だと、自身の発言内容を無知だと思われる不安を感じるという例があります。これは、周囲ででそうした前例があったり、上司や同僚が日ごろからそういったリアクションを行っていたりしていることが一因かもしれません。自身の学習意欲が必要なのは当然としても、知らないことや分からないことを遠慮なく聞ける風土の実現には心理的安全性の向上が不可欠です。
無能だと思われる不安
特に業務上のミスやマイナス要因への対処で顕著となるのが、無能だと思われる不安です。仕事のミスを例に挙げると、そのことで追及される恐れや咎められることへの懸念が先行して、チャレンジに二の足を踏む状態を想定できます。こうした現場からはイノベーションが起こりにくく、成功のためというよりも失敗しないことが目的となりがちです。
未達成に終わることを避けるために、本来設定すべき目標値よりも低い目標を立てる原因にもなります。
ネガティブだと思われる不安
プロジェクトや仕事では、時として厳しいことに言及する必要があります。しかし、心理的安全性の低い組織では、周囲からネガティブだと思われることに不安を抱くケースもあります。
不安材料や懸念といったリスクに対する正確な評価は、プロジェクト成功の鍵の一つといっても過言ではありません。ネガティブに感じる意見であっても、正当なデータとして客観視・分析するためにも、遠慮なくそうした意見を出せる環境が望まれます。
心理的安全性を作る・高めるために必要なこと
では、心理的安全性を作ったり高めたりするのには、どのようなことが必要なのでしょうか。
以下に2点の重要ポイントをお知らせします。
ポジティブなフィードバック
心理的安全性の向上には、組織内でのポジティブなフィードバックが不可欠です。これはすべての意見やアイディアを肯定して採用するという意味ではなく、あくまでもそれらの発言を安心してできるようにする土壌作りを指しています。提出された意見やアイディアを即座に否定するのではなく、よい部分を正しく評価して適切なアドバイスを与え合うなど、発言・発信をしやすい状態を作っていくことが肝要です。
価値観の共有
ここでいう価値観とは個人的な物事の捉え方という意味ではありません。組織やチームで取り組んでいる事柄について、メンバーが共通の認識を有する努力とも言い換えられるでしょう。
それは向かうべき方角を一つにすることにもつながり、プロジェクト等の指針を共にすることで基本的な意識共有がしやすくなります。そうした一体感は組織としての円滑な業務進行を補強するため、定期的に全体で価値観の共有を行うことが必要です。
まとめ
心理的安全性は働くすべての人にとって、快適でやりがいのある職場環境の実現に必要なものです。人間関係の風通しのよさという漠然としたものではなく、個々人の意識付けによって実現できるメソッドでもあるといえるでしょう。また、心理的安全性が高い組織は生産性向上やイノベーションの促進といった競争力強化にもつながります。