2022.03.10 【21年11月最新版】軽減税率の対象や時期などを分かりやすく解説
商品を買うと自動的に徴収される消費税。今では当たり前となりましたが、日本では1989年に導入され、最初の税率は3%でした。段階的に増加し、2019年10月には10%になったことは記憶に新しいでしょう。しかしこの時、一部の品目が条件付きで8%になるという緩和措置がとられました。これが軽減税率です。
少し複雑な制度でもありますが、家計に直結する問題でもあるため、無駄のない買い物をするのに正しく把握しておきたいところ。本コラムではそんな軽減税率について、仕組みや対象品目についてお知らせします。
軽減税率の基本
品目や条件によって異なる消費税率が混在するという事態になった軽減税率。その仕組み・目的・時期について以下にまとめました。
軽減税率の仕組み
先述したとおり2019年10月から10%に引き上げられた消費税ですが、商品やサービスによっては一部の品目だけ低い税率で売り買いできることが決められました。これは単純な品目だけに限らず、同じものでも分類される品目によって税率が変動します。身近な例だとファーストフードで食べ物を買った場合、イートインなら10%の消費税がかかりますが、テイクアウトなら8%になることなどが挙げられるでしょう。軽減税率適用の対象となる品目については後述します。
軽減税率の目的
軽減税率の本質的な目的は消費税アップに伴う消費者の日常生活にかかる負担を軽減することです。端的にいうと日々必要な食料品を中心として、品目によっては消費税率を8%のままにする措置を指しています。対象品目は後述しますが、これによって家計等における負担増を抑えることを企図しました。
日本における軽減税率の実施時期
軽減税率が導入されたのは2019年10月の消費税10%への引き上げと同じタイミングでしたが、この適用期限については法令では明記されていません。現状では無期限で8%と10%の消費税率が混在することになりますが、法改正で期限が設定されない限りは適用が続くといえます。
※出典:国税庁.「軽減税率制度の概要」(2022-1-23).
軽減税率の対象品目
次に軽減税率が適用される対象品目について見てみましょう。現物だけではなく、提供される場や買い方などによっても異なるため、そのパターンの把握が必要です。
酒類・外食を除く飲食料品
日常生活に必要とされる食料品・飲料品等への適用を意味しています。ファーストフードなどでもテイクアウトであれば消費税率は8%となり、学校給食や有料老人ホームなどでの飲食料品にも適用。逆に10%の消費税率が課されるのは、酒類・出前や出張での料理・医薬品と医薬部外品などが相当します。
また、軽減税率が適用される品目として一体資産というものがありますが、分かりやすい例としては玩具付きの菓子類、いわゆる食玩が挙げられるでしょう。ただし税抜き価格が1万円以下であり、食品部分が全体の3分の2以上の割合を占めるものに限られています。この要件を超過したものは一体資産としては認められず、軽減税率適用外となる点に注意が必要です。
週2回以上発行される新聞
また週2回以上発行される新聞も軽減税率の適用対象となります。ただし政治や経済、文化や社会関連など一般的であると考えられる社会的事実を掲載するもので、なおかつ定期購読契約がなされたものが対象です。ほとんどの一般新聞各紙は日刊ですが、コンビニエンスストアや売店での一部買いでは8%ではなく10%の消費税が課されることを意味しています。
※出典:Money Forwardクラウド会計.「軽減税率の対象品目には何がある?事業者や経理が知っておくべき知識」(2022-1-23).
世界の消費税
消費税に相当する制度は、日本だけではなく世界各国で導入されています。
諸外国の多くはVAT(Value Add Tax)という付加価値税を設定しており、一律の課税率ではなく品目ごとに細かい規定のある場合も多いです。例えば高級嗜好品や高額サービスは高い税率とし、日常生活に必要な一般飲食料品は低い税率とするなど、日本と同じ軽減税率制度が適用されている国は多くあります。中でもイギリス・オーストラリア・カナダ・メキシコなどでは、軽減税率が0%となっており、日常の食料品などには税率がかかりません。
海外での消費に関わる標準税率(消費税率)は、国によってそれぞれ大きく異なります(2021年1月時点)
最も消費税率の低い国は台湾とカナダの2カ国。両国とも税率は5%で、次点は7%のシンガポール・タイ。7.7%のスイスに続き、日本、インドネシア・オーストラリア・韓国・カンボジア・ベトナム・ラオスが10%の税率となっています。
アメリカは消費税がない代わりに小売売上税という税制度があり、しかも各州によって税率が異なるため、一律の数値は出せません。
その他の主要国をピックアップすると、中国13%・ドイツ19%・イギリスとフランス20%・スペイン21%・イタリア22%・スウェーデン25%となっています。最も消費税率が高いのはハンガリーの27%で、日本の3倍近くもの数値となっています。
日本は先進諸国の中でも比較的低い消費税率の国であると言えます。
※出典:外務省.「付加価値税率(標準税率及び食料品に対する適用税率)の国際比較 」(2022-1-28).
日本の軽減税率の今後
日本では今後、軽減税率の制度はどうなるのでしょうか。2022年1月現在、適用期限について改めて法で定めるような動きは見られず、見通しとしては現時点で廃止される可能性は低いとみるのが一般的です。
元来この制度の趣旨は所得が上がらない世帯への支出抑制措置としての性格が強いため、すべての品目やサービスに対して一律で課税率を上げることは現実的ではないためです。
ただし2023年10月1日より、仕入れ業者における仕入れ税額の控除についての新たな経理方式が導入されます。これは従来それぞれの品目を仕訳して請求する区分記載請求書等保存形式であったものを、上記年月日以降は適格請求書等保存方式へと変更するものです。課税事業者が適格請求書という専用書類の発行によってのみ仕入れ税額の控除を行えるというもので、一般にインボイス制度の名称で知られています。これらは適格請求書を発行できない事業者からの仕入れでは仕入税額控除が適用できないことを意味しています。
また年収が1,000万円以下の事業者は免税事業者であり、適格請求書を発行するためにはそれを超える年収の課税事業者である必要が生じます。個人事業主やフリーランスの場合は免税事業者であるパターンも多いと考えられ、仕入れ業者や発注側が適格請求書を発行できる課税事業者へと取引相手をシフトしていく可能性も想定できるでしょう。したがってこれまで免税事業者であったものがインボイス制度の実施によって課税事業者へと変更する必要が生じるケースも考えられ、新たな負担を想定した対策が必要です。
仮に免税事業者が2023年10月1日から課税事業者となるためには、同年3月31日までに適格請求書発行事業者としての登録申請を行う必要があります。これに間に合わなければ次の事業年度からの発行となり、また同年4月1日以降の登録申請の場合には、この登録に加えて消費税課税事業者選択届出書の提出も義務付けられます。
いずれにせよ該当する可能性のある事業者は早い段階で、制度の詳細を確認しておく必要があるでしょう。
まとめ
一見複雑なため、やや漠然としたイメージで捉えられがちな軽減税率。イートインとテイクアウトで税率が違うことなどはよく浸透しているようですが、細かい点を確認しておくと少なくない額の節税に直結します。この制度を賢く利用して、無駄な出費の削減に役立てましょう。