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2022.02.18 基礎控除の仕組み|控除の種類や、20年の改正内容まで分かりやすく解説

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年末調整や確定申告の時期になるとよく見聞きする、控除という言葉。個人事業主の方はともかくとして、その実態を正確に把握している人は少ないのではないでしょうか。

各種控除の中でも基礎控除は一見複雑なため、苦手意識を持たれることがあるかもしれませんが、実は節税に関わるとても重要な事項です。本コラムではそんな基礎控除の仕組みや制度について、わかりやすく解説します。

  

  

基礎控除の仕組み

給与を得ている方の例で考えると、総支給額から税金や社会保険料などを引いた差し引き支給額を手取りと呼んでいます。しかし、この手取り額すべてに対して税を課してしまうと大きな額となるため、あらかじめ生活その他に必要と考える経費分をそこから差し引いて課税額を計算する措置がとられています。これを総称して控除といい、基礎控除はそのうちの一つです。

基礎控除は年間の所得額合計によって控除額が決まっており、申請すれば一定の条件下で決まった金額を差し引いて所得税の計算が行われます。各段階の金額は後述します。

  

  

そもそも、所得控除とは?基礎控除以外にも控除が受けられる内容

そもそも、所得控除が何のために行われるのかというと、正確で公平な所得税額を算出することを目的としたものです。先述した基礎控除以外の計14種類を以下に列記し、仕組みの概略と控除額について見てみましょう。

  

扶養控除

16歳以上の子・兄弟・親などの親族扶養に関わる控除です。申告する年の12月31日時点の被扶養者年齢によって控除額が変わります。通常は38万円、19歳~23歳は63万円、70歳以上は58万円です。ただし70歳以上の扶養親族が同居していない場合は48万円となります。これらは扶養者と生計を共にしていること、また被扶養者の年間所得が合計48万円以下であることなども条件です。

  

配偶者控除

生計を共にしている配偶者にかかる控除で、その年間所得合計が48万円以下である場合に適用されます。ただし白色あるいは青色申告の事業専従者である場合や、扶養者の年間所得が1,000万円を超える場合は対象となりません。扶養者年間所得が900万円以下であれば通常38万円、申告年末時点で配偶者の年齢が満70歳以上であるときには48万円の控除が適用されます。扶養者年間所得が900万円~1,000万円の間で、その控除額は段階的に少なくなっていきます。

  

配偶者特別控除

上記配偶者控除の適用条件を超過したパターンに対する措置として設けられている控除です。扶養者の年間所得合計が1,000万円以下であることは同様ですが、被扶養者の所得が48~133万円の間であれば段階的に1万円~38万円までの所得控除を受けられます。

  

社会保険料控除

一年間に支払った社会保険料の全額を控除できるものです。内訳としては健康保険料・厚生年金保険料・国民年金保険料・介護保険料・国民年金基金の掛金などが挙げられます。

  

生命保険料控除

生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料などの負担に対して一定額を控除するものです。2011年12月31日以前の旧契約については生命保険料・個人年金保険料で各最高5万円を控除。それ以降の新契約については生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料で各最高4万円が控除されます。

  

医療費控除

納税者または生計を共にする配偶者や親族の、医療費に関わる控除です。年間の医療費から保険などによる補填額を除いた額から、10万円を差し引いたものが控除額となり、最大200万円が設定されています。

  

地震保険料控除

地震保険料または長期損害保険料の負担に対する控除です。注意が必要なのは長期損害保険の契約締結時期で、2006年12月31日までに10年以上の契約があり、それ以降に契約内容を変更していないことが条件となります。長期損害保険料のみであれば1万5,000円、地震保険料を含めると最大5万円が控除額となります。

  

寄附金控除

国・地方自治体・公益社団法人などへの寄付に対する控除です。寄附金の合計額または所得の40%のいずれか低い方から、2,000円を差し引いた額が控除額となります。ふるさと納税はこの制度を利用していることが知られています。

  

小規模企業共済等掛金控除

小規模共済掛金・企業あるいは個人型の各手拠出年金の掛金・心身障害者扶養共済制度の掛金のいずれかに対する控除です。それぞれ拠出した掛金の全額が控除額となります。

  

障害者控除

納税者自身あるいは扶養する配偶者や親族が障害者にあたる場合に適用される控除です。納税者自身であれば27万円、特別障害者であれば40万円が控除されます。また生計を共にする親族などが特別障害者に該当すれば、75万円となります。

  

勤労学生控除

働きながら特定の学校に通う学生に対する控除です。年間の合計所得が75万円以下で、勤労に基づく所得を除いた額が10万円以下であれば27万円が控除されます。

  

寡婦控除

民法で定める夫と離婚あるいは死別した後に婚姻していない女性で、なおかつひとり親ではない人への控除です。年間所得の合計が500万円以下で、適用後は27万円が控除されます。ただし夫と離婚してその後婚姻していない人は、扶養親族の存在が適用条件となります。

  

ひとり親控除

2020年に新設された制度で、ひとり親に対する控除です。年間所得合計が500万円以下かつ申告年末時点で婚姻しておらず、生計を共にする子供がいてその子の所得が48万円以下であることなどが条件となります。適用された場合は35万円が控除されます。

  

雑損控除

災害・盗難などの被害を受けた場合の控除です。上記のような不可抗力の出費から保険等による補填を差し引いた額に対して、一定額の控除を受けられます。災害被害では所得税の減免といずれかを選ぶこともできます。

  

  

令和2年(20年)に改正された基礎控除の内容

上記基礎控除は、2020年にその内容が改正されています。2019年までは年間の合計所得にかかわらず一律38万円が控除されていました。

しかし、2020年1月以降、所得が2,500万円を超える人への控除は廃止。2,400万円以下ではそれまでより10万円引き上げた48万円とし、2400万円~2,450万円は32万円、2,450万円~2,500万円は16万円と所得の高さに応じて段階的に控除額を引き下げています。これらは働き方の多様化を受け、より公平性を担保する目的で設定されたといえるでしょう。

  

  

基礎控除を受けるために、確定申告で用意すべきこと

給与所得者であれば年末調整の書類記入で済む所得税控除ですが、確定申告をする場合にはどうすればよいのでしょうか。以下に基礎控除を受けるために必要なものにフォーカスしてみましょう。

まず確定申告書が必要ですが、基礎控除については簡易版のAと詳細版のBとも共通です。これらを紙で提出する場合には、本人確認書類・所得の証明書類が必要となります。かつては印鑑を用意しなくてはなりませんでしたが2021年4月1日以降、その必要はなくなりました。

確定申告における基礎控除については所得さえわかれば金額が決まるため、最低でも上記2点をそろえればよいでしょう。ただし実際には他にも多くの控除があるため、それらを証明する書類は整理して準備しておきたいものです。また電子申告の場合は本人確認書類の提出は行われず、マイナンバーカードまたは税務署で事前取得のIDとパスワードで認証する形となります。

  

  

まとめ

年末調整や確定申告の手続きは煩雑で、それぞれがどういった数値であるのか把握しきれない部分も多いでしょう。しかし控除は自身の経済に直接関わってくる重要事項。払わなくてもよい税を払うことを避け、適正な税計算を行うためにも確実な控除を申請しましょう。

基礎控除は申請が複雑なほうではありませんが、自身の所得がいくらなのかを正確に把握して無駄な支出を避けるのが賢明です。

※出典:国税庁|所得金額から差し引かれる金額(所得控除)

  

  

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