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2022.05.06 独占禁止法を正しく把握する。過去の事例や、直近の改正内容を解説|フリーコンサルタントのPOD

  

独占禁止法とは、入札談合やカルテルなど事業者の禁止行為を定め、公平かつ自由な競争を実現するための法律です。企業は事業を営むに当たり、独占禁止法に対して深い理解が求められます。 

法律には規制対象となる行為が具体的に明記されており、規定に違反した事業者は罰金や排除措置命令(速やかに違反行為を止め、回復のために必要な措置を求めること)などの罰則を受けることにつながります。 

独占禁止法は2020年に法改正が行なわれたので、変更点についても理解が必要です。今回は、独占禁止法の仕組みや事例、法改正のポイントをご紹介します。 

  

独占禁止法の仕組み 

独占禁止法では、公平な競争の妨げとなる取引を禁止し、規制対象となる具体的な行為も示した法律です。ここでは独占禁止法の目的や規制内容について解説します。 

  

目的 

独占禁止法の目的は、事業者の手による自由かつ公正な競争の促進です。目的を実現するため、競争の妨げとなる不公平な取引や行為の禁止を規定しています。 

例えば、家具メーカーが徒党を組んで、ゲーミングチェアの価格を一律5万円に固定する取り決めを行ったとします。 

こうした価格協定は自由主義経済に伴い、当然発生する価格競争をなくしてしまうため、独占禁止法の禁止対象です。 

参加企業が事前に話し合って入札金額を決める入札談合も健全な競争を阻害する行為なので、独占禁止法で禁止されています。 

  

規制内容 

・独占禁止法の規制対象には次が挙げられます。 
・私的独占の禁止 
・不当な取引制限(カルテル)の禁止 
・不公平な取引方法の禁止 
・企業結合の規制 
・事業者団体の規制 
・独占的状態の規制 
・下請法に基づく規制 

私的独占とは事業者が他の事業者を排除し、特定の市場で支配的な立場に君臨することによって、その領域における競争を実質的に制限する行為です。 

不当な取引制限とは、事業者同士が結束して相互に事業活動を監視・遂行する行為です。不当な取引制限の具体例は、先程紹介した入札談合やカルテル、ボイコットなどが該当します。 

カルテルは事業者同士が連絡を取り合い、本来なら各事業者が個別に決めるべき製品の価格や生産数量などを共同で定めることです。ボイコットは事業者間で示し合わせ、特定の事業者との取引拒絶を促す行為を指します。 

企業結合とは、複数の企業が合併や株式の保有などによって結合することです。企業結合が行われると市場が独占状態を形成し、他の事業者が入り込む余地がなくなる恐れがあります。 

事業者団体の規制とは、複数事業者間で構成される事業者団体の活動を規制する行為です。事業者団体の定義は、2以上の事業者の結合体や連合体です。具体的には協会や組合、連合会などを指し、また事業者団体の構成員は構成事業者と呼ばれます。 

事業者団体に対する規制は入札談合やカルテル、私的独占など企業単体で禁止される内容と相違ありません。 

独占的状態の規制は、市場シェアの大半を有する事業者がいる場合をはじめ、独占的状態にあると判断される時に公正取引委員会の手で行われます。公正取引委員会は必要な措置(偉業の一部譲渡命令等)を事業者に対して命じることができます。 

不公平な取引方法とは取引時に他の事業者を優先・差別して取り扱ったり、不当な対価を獲得したりする行為です。例えば大手会社による子会社に対する優越的地位の乱用や、結託して特定の業者を市場から追い出したりする行為などが該当します。 

事業者の市場活動を規制する法律には、独占禁止法以外に下請法が存在します。下請法は経済の健全な発達や下請け事業者の利益保護を目的とした法律です。親事業者から下請け事業者に対する行為を規制するのです。 

下請法の規制対象となる行為は、下請け代金の支払い遅延・減額の禁止や、返品の禁止などです。 

  

  

独占禁止法の事例

独占禁止法が問題になった過去事例を知ることは、コンサルティング業務を適切に行う上で大切です。ここでは独占禁止法に抵触すると判断された事例を紹介します。 

  

旅行業者のカルテル

私立中学校の修学旅行において、旅行業者5社が話し合い、貸し切りバスの料金・宿泊費・企画料金の料率、添乗員費用の最低基準などの一律固定が定められました。 

市立中学校の立場からすると、どの会社に依頼しても基準以上の費用がかかるため、好ましい事態とは言えません。 

本行為は、市立中学校の修学旅行市場の競争を実質的に制限したと見なされました。具体的にはカルテルに該当するとして、公正取引委員会から旅行業者に対して、排除措置命令が下されました。 

※参照:私たちの暮らしと独占禁止法の関わり. 「これまでにどんな事件があったの?」

  

パソコン部品メーカーの私的独占

パソコン部品メーカー大手A社が国内のパソコンンメーカー5社に対して、A社製のCPUの購入を条件に、リベートや資金の提供を約束した事案です。実質的に他社のCPUが採用されない状態に陥ったため、CPU市場の公平な競争を阻害したといえます。 

公正取引委員会は本行為を私的独占に当たると判断し、A社に対して行為を取り下げるよう勧告を行っています。 

※参照:私たちの暮らしと独占禁止法の関わり. 「これまでにどんな事件があったの?」

  

電気設備工事の入札談合 

市役所発注の電気設備工事における競争入札で、入札参加業者10社が長年にわたり、受注価格の低下を避けるため共同で受注業者を決めていたという事案です。 

自由な競争が行われていれば、より安価で落札される可能性があったため、税金の無駄遣いに他なりません。本行為は電気設備工事の発注における競争を実質的に制限していると考えられます。 

公正取引委員会が調査を行った結果、本行為は入札談合と認められ、入札参加業者に対して課徴金納付命令と排除措置命令が下されています。 

※参照:私たちの暮らしと独占禁止法の関わり. 「これまでにどんな事件があったの?」

  

大手家電販売会社の優越的地位の乱用 

家電販売業者のB社は、パソコンや冷蔵庫などの納入業者に対して、必要な賃金を支払わずに従業員を派遣させ作業に従事させるという行為を繰り返していました。 

事前に派遣条件を納入業者と協議を交わしておらず、他のメーカーが納入した商品までも陳列・補充・接客などの行為を強いていました。 

公正取引委委員会は本行為を優越的地位の乱用に当たると判断し、B社に排除措置命令が下しています。 

※参照:私たちの暮らしと独占禁止法の関わり. 「これまでにどんな事件があったの?」

   

  

独占禁止法の改正内容

2020年12月より改正独占禁止法が施行され、新制度がスタートしました。ここでは改正独占禁止法のポイントである課徴金制度の見直しと判別手続きの導入について解説します。 

  

課徴金制度の見直し

課徴金制度の改正の目玉は、減免制度に新たに調査協力減算制度が導入されたことです。現行では公正取引委員会の調査に対する協力度に関わらず、申請順位に応じて固定の減免率が設定されています。 

改正後は事件の解明に役立つ資料の提出等を行った事業者に対して、上記の減免率に加えて協力度合いに応じた変動率が加算されます。本制度導入の狙いは調査の協力に応じるインセンティブを高めることです。 

本改正では課徴金の算定方法の見直しも行われ、算定基礎と算定率の双方においてルールが強化されています。算定基礎に関する主な改正点は、算定期間の延長・違反事業を承継した子会社に対する課徴金の賦課などです。 

算定率は基本的には一律10%が適用されますが、中小企業に限り、軽減算定率の4%が今後も継続して使われます。 

   

判別手続の導入 

判別手続きは調査対象の事業者が法的な助言を得るために弁護士と交わしたコミュニケーションの内容を記した文書等について、判別官が要件を満たしたと認める場合に限り、審査官に開示せずに事業者に対して還付できる制度です。 

判別手続きを活用すれば、弁護士に相談した内容を秘密にすることができます。ただし弁護士との間でのコミュニケーションを記録した文書が還付されるには、保管が適切に行なわれていたことを証明しなくてはなりません。 

  

  

まとめ 

独占禁止法の規制内容は「私的独占の禁止」「不当な取引制限(カルテル)の禁止」「企業結合の規制」「事業者団体の規制」「独占的状態の規制」「下請法に基づく規制」に分けられます。 

具体的な行為は入札参加者が事前に話し合い入札価格を取り決める入札談合や、各事業者が相互に連絡を取り合い価格や生産数量などを共同で取り決めるカルテルなどです。 

2020年に行われた法改正のポイントとなるのは、課徴金制度の見直しと判別手続きの導入です。課徴金では新たに公正取引委員会の調査に協力した事業者に対して、課徴金を減免する制度が導入されています。 

弁護士との相談内容を記録した文書を証拠資料から除外できる判別手続きと合わせて、覚えておきましょう。 

  

  

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