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2022.05.09 商標権の今に関して徹底解説。実際に商標権侵害など事例を用いて解説

商標権

  

商標権は設定を受けた商品やサービスの商標を自分だけが独占的に使用できる権利です。特許庁に対して申請を行い、設定が認められたら効力が発生します。 

ビジネスを行っている人は、他社や他人の商標権を侵害しないことにも注意が必要です。今回は商標権の仕組みや商標権の侵害に該当する行為、罰則などを解説します。 

本記事を読めば、商標権の内容や申請方法が分かり、侵害した際にどのようなペナルティを受けるか理解できます。 

  

  

商標権とは 

商標権は商品やサービスの商標に対して与えられる独占排他的な使用権です。弁理士会に加入している弁理士を通じて、もしくは自ら、特許庁に対して申請を行います。 

著作権には期限が存在しており、10年が経過すると効力が切れてしまうことに注意が必要です。ここでは商標権の取得の流れや効力について解説します。 

  

商標権の取得の流れ

商標権を申請してから取得するまでは、次の流れで進みます。 

1.  商標登録の出願 
2.  方式審査
3.  実体審査 
4.  拒絶理由通知 
5.  意見書・補正書提出 
6.  拒絶査定 
7.  拒絶査定の不服審判 
8.  登録査定 
9.  設定登録 
10. 商標広報発行 

まず登録を求める商標および指定商品などを記載した「商標登録願」を、勅許庁の長官に対して提出しなくてはなりません。書式や記載内容に漏れがないか確認する方式審査、所定の要件を満たしているか確認する実態審査の順番で進みます。 

実態審査で不適合の判断が下されると「拒絶理由通知」が送付されてきます。拒絶の判断に対して納得がいかない場合、意見書や補正書の提出も可能です。それでも拒絶理由が解消せず、要件を満たさないと判断された場合は「拒絶査定謄本」発行されます。拒絶査定の結果にも納得できない時は、不服審判の請求が可能です。 

実態審査において要件を満たしたと判断を受けた場合、登録査定謄本の送付を受けます。登録料を収め、設定登録がなされると商標権が発生という仕組みです。

   

商標権の効力 

商標権の権利者は指定商品・サービスで商標の独占的な使用権を得られるだけでなく、類似範囲にも他人に利用されない権利を有します。 

保護される対象は、文字や図形、記号、音、立体的形状などが該当します。一度設定した商10年間にわたって維持され、別途申請を行えば存続期間を延長することが可能です。 

商標権は絶対的な権利ではなく、効力は日本国内のみを対象とし、外国にはおよびません。 

また自己の氏名・名称・芸名などを普通に用いられる方法で表示した商標にも、商標権の効力はおよびません。 

これは自分の氏名や名称が他人の商標として登録されている場合でも、自らの氏名や名称を使用するに当たり、商標権の効力は及ばないという意味です。 

たとえ登録済みの商標と同一のものでも、自己の氏名で商品を販売するなら商標権の侵害にはなりません。 

  

  

商標権の侵害とは

登録商標を使用する権利を有していない者が、事業の目的で登録商標を無断に使った場合、商標権の侵害に当たります。商標権を侵害してしまうと被害者から損害賠償の請求を受け、罰金や懲役といった刑事罰の対象にもなります。 

登録済みの商標はホームぺージでチェックできるため、事前の確認を怠らないようにしましょう。 

ここでは商標権の侵害に我当するパターンや裁判例、罰則、登録済み商標権の確認方法を紹介します。 

  

⑴登録商標の使用または類似範囲での使用 

権利者ではない人が勝手に登録商標を使い、指定の商品やサービスを販売した時は商標権の侵害に当たります。また登録商標そのものだけでなく、類似の商標も勝手に使用してはいけません。 

さらに指定の商品や役務と似通った分野で本商標を利用する行為もNGです。 

  

裁判例

洋菓子の製造販売を営むA社が同業界で事業を展開するB社に対して、自社の登録商標と類似した名称を用いて商品販売を行ったとして、商標権侵害による損害賠償を請求した事例です。 

裁判所は商品やサービスの販売・提供場所、需要者の範囲等を総合的に勘案すると、消費者は出所の混同を招く危険があるとして、商標権の侵害を認めています。本事例において裁判所はB社に対して、約5,000万円の損害賠償金を支払うよう命じています。 

※参照:裁判所. 「平成23年第2238号,平成24年第293号

  

⑵商標的使用に該当すること

商標的利用とは、自社の商品であると需要者に示すことを目的に、他社の登録商標や類似の商標を使用する行為です。自社の商品であることを需要者に示す目的ではない形で行われる使用ならば、商標権の侵害には当たりません。 

  

裁判例

食品会社が他社の商標を含むラベルが貼られた商品を販売していたところ、その商標権を有する企業から商標権の侵害を理由に損害賠償請求を受けた事案です。 

裁判所はラベルの表示は原材料を示しているに過ぎず、出所を表示して自他商品の識別を果たす目的での使用には当たらないと述べています。 

したがって商標的な利用には該当せず、商標権の侵害を認めませんでした。特定の会社の商品であるという認識を消費者に与えていないのであれば、商標権の問題は生じません。 

※参照:裁判所. 「平成13年(ネ)第1035号 商標権侵害差止等請求控訴事件

  

⑶間接侵害について

権利者の許諾を得ないで商標を使う行為にとどまらず、準備段階の行為でも商標権の侵害に当たる可能性があります。 

これを間接侵害と言い、侵害の一歩手前、もしくは実質的に侵害と同視できる行為に対しても、著作権の侵害を認めたものです。 

例えば商標があしらわれた包装紙を保持する行為や、商標が付された商品を輸出や譲渡のために保有する行為などが該当します。 

  

裁判例

製パン方法の特許において間接侵害が問題になった事例です。被告の製品「タイマー付き製パン器」において、タイマー機能を用いてパンを焼いた場合、特許の侵害に該当する可能性が高いです。 

しかし本製品はタイマー機能を使用せずにパンを焼くことも可能でした。タイマー機能を使う方法以外でパンの製造を行えば、商標権の問題は発生しないのではという部分が争点になったのです。 

裁判所はタイマー機能を使わずに製品を使用し続けることは実質的な使用方法とはいえないと判断し、間接侵害に該当すると判決を下しています。 

※参照:裁判所. 「平成八年(ワ)第一二一〇九号 特許権等侵害行為差止等請求事件

  

⑷罰則について

商標権を侵害してしまった人は法的な制裁を受けなければなりません。法的な制裁は民事的制裁と経時的制裁に分かれます。 

民事的制裁は自分の権利を侵害された商標権者が侵害者に対して行うものです。行為を止めることを求める差し止め請求と、侵害行為で受けた損害について金銭的な補償を求める損害賠償請求に分かれます。 

一方、刑事的制裁は法律違反を犯した者に対して国家が刑罰を科すものです。商標権の侵害に対する刑事罰は「10年以下の懲役、または1,000万円以下の罰金、もしくはその両方」です。法人の代表者や従業員が侵害行為をした場合、上記の処罰に加えて法人に対しても3億円以下の罰金が命じられます。 

刑事罰は、故意に行ったと判断される場合にのみ認められます。心理的な部分に関わるので、故意かどうか客観的に立証することは簡単ではありません。 

有名ブランドの商標を用いて販売した、複数回の警告を受けたのにも関わらず行為を継続した場合などは故意性が肯定される可能性が高いです。 

  

商標権の検索の仕方

工業所有権情報・研修館が畝にする特許情報プラットフォームを利用すれば、登録済みの商標を無料で閲覧可能です。検索方法の流れは次の通りです。 

(1)ホームぺージにアクセスし、メニューから「商標検索」をクリック 
(2)「出願・登録情報」を選択し、検索項目のプルダウンから「呼称(類似検索)を選択 
(3)キーワード入力欄に、全角カタカナで呼称(名称)を入力 

呼称(類似検索)を使うことで、呼び方が似通った商標まで幅広く検索可能です。同一の名称でも入力方法(ひらがな・カタカナ)によって別の文字としてカウントされます。 

例えば“ワークスタイルラボ”と検索をかけると、カタカナの商標のみヒットしますが「わーくすたいるらぼ」は認識されません。 

  

  

まとめ

商標権の侵害は登録した商標そのものだけでなく、類似の名称でも起きる可能性があるため、十分な注意が必要です。また実際に他人の商標を無断で使用しなくても、その準備行為の段階でも侵害行為に該当することがあります。 

商標権の侵害に対する刑事罰は10年以下の懲役、もしくは1,000万円以下の罰金という重い内容です。申請時は事前に特許情報プラットフォームで登録済みの商標を確認し、他人の商標権を侵害しないように細心の注意を払いましょう。 

  

  

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