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2022.10.14 フリーランスの契約書の種類と締結時の5つの注意点を解説

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フリーランスとして働く場合、契約書に関する知識が欠かせません。正しい知識がないと思わぬトラブルに発展する可能性があるためです。今回は、フリーランスの方やフリーランスを目指している方に向け、契約書の種類や特徴、契約締結時の注意点について解説します。 

本記事を読めば、フリーランスが不利な契約を交わさないための必要な知識を入手できるでしょう。 

  

  

目次

フリーランスが締結できる契約書の種類
 ‐ 準委任契約(委任契約)
 ‐ 請負契約

契約内容の確認における5つのチェックポイント
 ‐ 契約形態 
 ‐ 業務内容や範囲
 ‐ 報酬
 ‐ 経費の扱い
 ‐ 契約期間

こんな場合は偽装請負として違法の可能性も

フリーランスが契約書を作るケースもある

電子契約の場合も原則は同じ  

契約の際は適切な内容となっているか十分に確認しましょう

まとめ

  

   

フリーランスが締結できる契約書の種類  

フリーランスが結ぶことが可能な契約書の種類は、準委任契約(委任契約)、もしくは請負契約です。それぞれの契約の概要や代表的な業務、契約書の記載内容などを解説します。 

  

準委任契約(委任契約)

準委任契約は法律行為以外を受託者に委託するのに対して、委任契約は法律行為を任せる契約形態です。 

準委任契約、委任契約ともに契約の対象となるのは、業務の遂行です。つまり契約で定められた業務を提供すれば、仮に成果が出なかったとしても報酬を受け取れます。 

例えばコンサルタントの場合、契約書に書かれた調査や分析、提案といったコンサルティング業務を行うことで、契約を履行したといえます。その提案によってクライアントに利益をもたらすことまでは求められません。 

準委任契約、委任契約を結ぶメリットとして、各当事者はいつでも契約を解除できることが挙げられます。法律上、受託者が引き受けた事務作業を行っている最中でも、双方自由に契約を解除できます。 

ただし、契約解除のタイミングには注意が必要です。民法651条では相手方に不利な時期に契約を解除した場合、損害賠償の義務が発生すると規定されています。 

フリーランスは、業務を遂行するに当たり、準委任契約書または委任契約を企業との間で締結します。 

  

準委任契約(委任契約)で契約できる業務

準委任契約で契約できる業務は、次のようなものです。 

・コンサルタント 
・事務 
・ITシステムの運用保守 
・講演会やセミナーの講師 
・工事現場やビルの警備 

また委任契約で契約できる法律行為には、次のようなものがあります。 

・弁護士への訴訟代理の依頼 
・不動産業者への所有する土地売却の依頼 

いずれも専門知識が必要な仕事であることがお分かりでしょうか。 

クライアントは専門知識が必要な作業を行うために、フリーランスの専門人材と準委任契約または委任契約を締結します。人を育てるには時間を要するので、社外の人材に委託した方が迅速に作業を進められるためです。 

準委任契約、委任契約は、仕事の遂行に要する時間制限が存在しないことも特長です。取り組み方やスケジュール裁量の余地があるため、タスク管理の自由度が高いという利点を有します。 

  

準委任契約書雛形の例

準委任(委任)型契約の場合、委託側は何らかの成果物を受領するわけではありません。このため、委託側は依頼した仕事がきちんと遂行されているかどうか、確認したいと考えるのが常です。 

したがって契約書の条文で、報告の頻度やタイミング、報告すべき内容について詳細な記載が必要となります。 

依頼された仕事に集中するためにも、報告作業に手間が掛かりすぎないように契約内容をチェックしましょう。心配な場合はできるだけ必要最小限の報告作業で済むよう、文言の調整をクライアントに依頼できると良いかもしれません。 

また、頼まれた仕事が「完了した」といえる基準を明確化する必要もあります。例えば報告をもって業務を完了したとみなす内容の契約であれば、以降に発生する修正作業に関しては追加料金を請求できるようになります。 

出典:テンプレートBANK.「「業務委託契約書」のテンプレート(書式)一覧」. (参照 2022-7-21) 

   

請負契約

請負契約は、受託者が契約の内容に応じて成果物を納品し、委託者がその対価として報酬を支払う契約形態です。準委任契約や委任契約は委託を受けた業務を遂行することが履行条件でしたが、請負契約は成果物の提出が求められるという違いがあります。 

完成させる成果物の内容が明確で、受託側がその成果物の完成に責任を負うことができ、合意に至れる場合は請負型の業務委託契約を締結します。 

請負契約では仕事の目的物に不具合や欠陥が見受けられた場合、契約不適合責任を負うことに注意が必要です。履行が不適合のとき、委託者は受託者に対して、次のいずれかの請求が可能です。 

1. 目的物の修補や代替物の引き渡し、または不足分の引き渡し請求 
2. 代金減額請求 
3. 損害賠償請求
4. 契約の解除

請負契約は仕事を完成させるまでが仕事なので、成果物に欠陥があれば、その修理や損害の補填等も義務に含まれます。 

  

請負契約で契約できる業務

請負契約で締結できる代表的な業務は次のようなものです。 

●営業(成果報酬) 
●ホームページ制作 
●ライティング 
●プログラムやアプリの開発 

ライターであれば記事を、プログラマーならシステムやアプリを、クライアントに納品することで初めて報酬を受け取れます。フリーランスは何らかの成果物を納める仕事が多いので、請負契約が主流になるでしょう。 

たとえ実際に仕事へ着手したとしても、最後まで完成させなければ報酬は発生しません。 

  

請負契約書雛形の例

何らかの仕事の完成が目的の請負契約の場合、契約書には、どのような成果の実現を目指すのか明確な記載が必要です。 

何をどのレベルで完成させるのか、いつまでに誰がどうやって納品するのかという部分まで具体的に定めましょう。 

また仕事の完成に主眼が置かれる請負型の業務委託契約の場合、引き渡し後の検査が、契約内容がきちんと履行されているか確認する重要な手段となります。 

業務委託契約書でも、検査がどのような形で行われるのか明確に示すのが通常です。検査開始から検査結果の連絡を行うまでに期間を記すことも重要なポイントです。 

出典:テンプレートBANK.「「業務委託契約書」のテンプレート(書式)一覧」. (参照 2022-7-21) 

  

   

契約内容の確認における5つのチェックポイント

   

フリーランスが締結する業務委託契約書では、非常に多くの項目について記載の必要があります。数多もの記載項目のうち、中でも重要な5つのポイントを紹介します。 

これらの確認が不十分だと、契約後に思わぬ不都合が生じかねません。それぞれのチェックポイントで想定されるリスクや、具体的な記載内容を解説します。 

  

契約形態 

業務内容や報酬体系が先述した条件と合致しているか、確認することを推奨します。準委任(委任)契約なら仕事の遂行に対して報酬が支払われるか、請負契約の場合は成果物の納品によって報酬が発生する形になっているかということです。 

契約形態は契約書に書かないケースもありますが、きちんと記載した方が安心だといえます。 

  

業務内容や範囲

契約形態と見比べて、期待されている成果物・サービスの内容、修正の範囲などを確認しておくことを推奨します。 

契約書で業務内容が明確化されていないと、後になって、想定外の作業を依頼される可能性があるためです。 

業務内容によっては明示が厳しい場合もありますが、できるだけ具体的に書くことが大切です。契約書に全ての業務内容をまとめられないときは、作業の追加や変更には別途合意が必要である旨を書き入れましょう。 

  

報酬 

契約形態と合わせて、報酬の発生条件や具体的な金額に関して確認することを推奨します。その後のやり取りを迅速に進めるため、支払い時期や方法、請求書のやり取りなどに関しても別途確認しておくと良いでしょう。 

報酬の取り決めは、業務委託契約書のなかでもとりわけ重要な項目です。金銭面の認識に齟齬があると、後々大きなトラブルに発展するリスクも生まれます。 

見落としが発生しやすいポイントが消費税です。フリーランスはクライアントから消費税も受け取ることが可能なので、契約書では「料金および消費税を支払う」というような記載が必要です。 

報酬はできる限り細かい箇所まで明示しておく必要があり、例えば報酬振り込み時の手数料の負担は契約当事者のどちらが担うかといったことまで定めておくとスムーズです。 

  

経費の扱い

経費が伴うタイプの業務の場合、その取扱いを確認しておくことを推奨します。経費の代表例が通信費や交通費です。仕事の内容によっては経費が高額にのぼり、手取りを圧迫してしまうケースも考えられます。円滑な業務遂行を図るためには、精算の方法や上限の範囲も確認しておく必要があるでしょう。 

民法632条によると請負契約の場合、契約の履行に伴う費用は原則、受託者が負担する必要があります。一方民法649条、650条では、準委任契約(委任契約)の場合、事務処理に必要な費用は委任者が負担しなくてはならないとされています。 

   

契約期間

契約期間も業務委託契約書できちんと明示しておくべき項目です。契約期間が明示されていないと、突然契約を打ち切られるリスクもゼロとはいえません。成果物の納品ごとに契約を区切るのか、開始年月日と終了年月日を指定して定めるのか、話し合いによって決める必要があります。 

同時に契約の更新に関する取り決めも必要です。契約期間が長期にわたる場合、自動更新なされるという条項を含めておくと、契約手続きの手間を減らすことが可能です。 

  

   

こんな場合は偽装請負として違法の可能性も 

   

フリーランスで請負契約を締結する場合は、偽装請負に該当しないかチェックしましょう。偽装請負とは、実態は雇用関係があるにもかかわらず、形式的に請負契約を偽装する行為です。 

労働契約を締結した場合、雇用主は労働者の社会保険料を負担したり、労働基準法の規制を守ったりする必要に迫られます。これらの負担から逃れるために、業務委託契約を結びながらも、実質的には労働者として従事させる偽装請負が問題になっています。 

偽装請負は労働者派遣法の許可・届出の手続き、派遣可能期間といった規制を逸脱する行為として違法です。 

前述の通り、業務委託契約の内容・目的は、業務を行う、もしくは成果物を納品することです。例えば、クライアントが業務時間や休日を指定してくる、業務のやり方に関して指示を出してくるといったケースでは、実質的には雇用関係が生じているとも考えられます。 

業務委託では、委託者が受託者を自身の指揮命令下に置き、直接指示を出すことは認められません。上司や部下の関係、会社と派遣スタッフのように雇用関係があるわけではないため、委託者は受託者に業務の進め方を一任する必要があります。 

偽装請負をはじめ、雇用形態や業務内容が不明瞭なまま、契約を結んでしまわぬよう十分な注意が必要です。 

  

  

フリーランスが契約書を作るケースもある

   

フリーランスと企業が業務委託契約を締結する際は、企業側が契約書を作成するのが一般的です。 

ただし企業や案件によっては、フリーランス側が契約書を作るケースもあります。急に作成することになっても戸惑わないように、基本的な記載事項を紹介します。 

●業務内容や範囲 
●報酬 
●契約期間 
●有効期限・更新 
●経費の扱い 
●契約・解除方法 
●修正について 
●著作権をはじめとする知的財産権 
●機密保持 
●損害賠償 
●管轄裁判所 

機密保持とは、当業務で知り得た情報を他人に漏らしてはいけないという意味です。契約書で機密保持の規定を置く際は、何をもって秘密とみなすか明確化する必要があります。 

成果物を提出する請負型の業務委託契約の場合、著作権に関しても明確にしましょう。著作権は成果物を作成した人が保有する権利ですが、業務委託契約では報酬を受け取ったときに、委託者へ著作権が移転する扱いを取っているケースが多いです。成果物の権利をめぐる争いを起こさないためにも、著作権者に関して明確に定めましょう。 

契約の履行を果たせずに相手方へ損害を与えてしまった場合や、故意または過失で相手方の法律上守られるべき利益を侵害した場合は損害賠償責任を負います。賠償額で多大な負担を負わないためには、損害賠償に上限額を設定することが重要です。契約書の損害賠償にかかる条文の中で「本契約の委託料を上限とする」というような記載を設けましょう。 

万一契約内容に関するトラブルが起き、話し合いでの解決も難しいときは訴訟に発展する場合もあります。第一審を行う裁判所はどこなのか、契約書で取り決めておくケースが一般的です。 

  

  

電子契約の場合も原則は同じ  

  

あくまでも双方の合意が前提ですが、企業とフリーランスの契約は、電子契約でも行える場合があります。電子契約とは電子的データに電子署名や電子サインを施すことで、契約を締結する手法です。 

従来の紙による契約と電子契約では、拘束力や契約の内容には差がありません。紙での契約の場合、収入印紙が必要ですが電子契約はなくても問題ないため、印紙の購入費用が浮きます。 

またタイムスタンプと呼ばれる時刻の照明が押されるため、署名後に改ざんの有無もすぐに確認可能です。インターネット経由で送付されるので、郵送の手間を省けることもメリットです。 

  

   

契約の際は適切な内容となっているか十分に確認しましょう

  

フリーランスが企業と業務委託契約を締結する際は、契約の内容が適切なものか十分な確認が必要です。契約形態や報酬の支払い、契約期間、業務の範囲など契約書にはさまざまな項目を入れこみます。いつの間にか不利な契約を強いられているといったことがないよう、条文を隅々まで読み込み、内容に問題ないか確認してください。 

業務委託契約書はクライアントとの関係で弱い立場に置かれがちなフリーランスを守る大切なものです。形式的なものだと簡単に考えず、本記事で紹介したチェックポイントを参考に、適切な契約書を交わしましょう。 

出典:民法632条、649条、650条、651条 ほか 

  

   

まとめ  

今回は、フリーランスが締結できる契約書の種類や特徴、また、契約締結時の5つの注意点について解説しました。不利な契約を交わしてしまったり、クライアントとの間でトラブルに発展しないよう、契約時には十分気をつけましょう。 

   

   

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