2022.11.09 野村総合研究所|日系グローバルファームの企業特徴
野村総合研究所は、日本を代表するグローバルのコンサルティングファームです。外資系コンサルティングファームと並び、高い評価を得ている野村総合研究所の特徴とはどのようなものなのか。企業の概要や半世紀の歩み、外資系コンサルティングファームや他の日系コンサルティングファームとの違いをご紹介します。
野村総合研究所の事業内容
野村総合研究所は、日本のコンサルティングサービスの先駆けとして、社会や企業の発展に貢献してきた老舗コンサルティング企業です。野村総合研究所の多岐に渡る事業内容を紹介します。
コンサルティング(ナビゲーション)事業
野村総合研究所は、シンクタンク・コンサルティングファーム・システムインテグレーターとして、官公庁や大企業に幅広いコンサルティングサービスを提供しています。
野村総合研究所の特徴のひとつが、コンサルティングを「問題発見から解決を導くナビゲーション」と位置付けている点です。企業の進むべき方向性をナビゲーションした上で、課題の解決を提案する「戦略コンサルティング」、戦略の実行や改革を支援する「業務・実行支援コンサルティング」、産業政策・社会基盤などを調査・研究する「政策立案支援」を行っています。
民間企業に対しては「全社構造改革」、「コスト構造改革」、「人事制度改革」、「営業改革」など、大掛かりなシステム改革の実行をサポート。官公庁でも、経済産業省の医療国際化事業や総務省の事業管理支援、環境省の除染事業推進支援などを行ってきました。民間・官公庁ともに、そのコンサルティングは高い評価を得ています。
ITソリューション事業
ソリューション事業では、顧客の事業・業務改革のパートナーとして、情報システムの企画・設計(システム・インテグレーションサービス)から、保守・運用(アウトソーシングサービス)までを手がけています。
ソリューション事業の中でも、野村総合研究所が得意とする分野の一つが金融分野です。創業以来、金融業界の変化を先取りしながら金融ビジネスにかかわる多くの顧客にソリューションを提供しています。構築したシステムの多くは、今も金融業界のインフラとして欠かせないものとなっています。
野村総合研究所は、金融だけでなく流通、サービス、製造など産業界に幅広くITによるビジネス革新をもたらしてきました。セブン&アイホールディングスを支援して、ネットスーパー、セブン銀行、電子マネーサービス(nanaco)や、クレジットカード事業の構築を支えたのも野村総合研究所のITソリューション部門でした。
ナビゲーション×ソリューション事業
野村総合研究所の強みは、上記のコンサルティングと、ITソリューションを統合させた「トータルソリューション」を提供していることでしょう。
コンサルティングによって問題を発見して解決策を導く「ナビゲーション」から、システム開発・運用などで課題解決に導く「ソリューション」までを一気通貫して提供する。そのことでシナジー効果を生む「ナビゲーション×ソリューション」のビジネスモデルを展開しています。
野村総合研究所が「ナビゲーション×ソリューション」のビジネスモデルの集大成としているのが、クラウドサービスの先駆けである「共同利用型サービス」です。複数の顧客が共同で利用できる「共同利用型サービス」は「所有」するものだった情報システムを「利用」するものへと変えました。まだ「クラウド」という言葉さえなかった1974年から、野村総合研究所は共同利用型サービスを提供しています。
共同利用型サービスには、リテール証券会社向けの「THE STAR」、資産運用会社(投資信託・投資顧問)向けの「T-STER」など、金融機関向けに多彩な種類があり、多くの企業に利用されています。
野村総合研究所の会社概要
【代表者】
代表取締役会長兼社長 此本 臣吾氏
【会社公式URL】
【設立年】
1965年4月1日
【資本金】
22,414,933,500円
【売上高】
5,504 億円(2021年3月期・連結)
【従業員数】
6,507人(NRIグループ13,430人・2021年3月31日現在)
【企業理念】
使命:新しい社会のパラダイムを洞察し、その実現を担うお客様の信頼を得て、お客様とともに栄える。
事業ドメイン:未来社会創発企業 Knowledge Creation and Integration
経営目標:ナビゲーション&ソリューションにより、企業価値の最大化を目指す
行動指針:真のプロフェッショナルとしての誇りを胸に、あくなき挑戦を続ける
【沿革】
1965年 4月 (株)野村総合研究所(NRI)設立
1966年 1月 (株)野村電子計算センター(NCC)設立
※1972年に野村コンピュータシステム(株)に社名変更
1988年 1月 (株)野村総合研究所と野村コンピュータシステム(株)が合併
2001年 12月 東京証券取引所第一部に株式を上場
2015年 4月 創立50周年を迎える
野村総合研究所のファーム特徴
日系グローバルファームを代表する存在である野村総合研究所の特徴は、設立から半世紀に及ぶ歩みや一貫しているミッションにあります。その独自性を外資系コンサルティングファームとも比較しながらご紹介します。
野村総合研究所の半世紀以上の歩み
野村総合研究所は、1965年に野村證券の調査部から独立した「旧・野村総合研究所」と、1966年に電子計算部から独立した「野村電子計算センター(野村コンピュータシステム)」が合併して、日本初の本格的民間シンクタンクとしてスタートしました。金融ITソリューションを得意とするのは、野村コンピュータシステムの遺伝子でしょう。
1970年代から、大阪万博の調査、セブン-イレブン・ジャパンの新発注システムなどの開発支援で注目を集め、近年も年金制度改革への提言や金融庁のNISA制度導入など金融関連の大型プロジェクトを担当。日本郵政公社(現 日本郵政グループ)の郵政総合情報通信ネットワークの構築などの取り組みもあります。
現在に至るまで、一貫しているのが「顧客とともに栄える」というビジョンです。顧客のあるべき姿を考え、その志の実現のため尽力することが自社の成長につながるとのビジョンは、経営基盤が安定しているからこそ実現できるもの。それが野村総合研究所の安定した長期的成長を支えています。
日系+外資系の「いいとこ取り」
野村総合研究所と外資系コンサルティングファームの違いは、そのカルチャーです。外資系コンサルティングファームでは「Up or Out(昇進か退職か)」が常識ともいわれるなか、野村総合研究所には日系ファームらしく人材を中長期な目線で成長させるカルチャーがあります。
それでいて人間関係はフラット。「立場」より「正しさ」を尊重する文化が根付いています。社内の上司ではなく顧客を第一に考えて行動するビジョンがあるからこそ醸成できた文化でしょう。
その特徴から、野村総合研究所は「人材を大切にする日本企業らしさ」と「外資系コンサルのフラットな文化」の「いいとこ取りをした」様な会社ともいわれています。
野村総合研究所の未来戦略
野村総合研究所の未来戦略は長期経営ビジョン「Vision2022」に示されています。そこでは「活力ある未来社会の共創」でデジタルトランスフォーメーション(DX)のさらなる推進をすること。「最適社会の共創」で社会資源(人財・モノ・カネ・知的資産)の有効活用を進め「安全安心社会の共創」で、情報システムをはじめとする社会インフラの守りを固めることが明記されています。
課題としては、海外展開が発展途上であると指摘されてきました。しかし、「Vision2022」では海外進出を加速させ、アジアや欧米での顧客拡大などでグローバルな案件を増やしていく方針が明記されています。今後は海外を舞台とした更なる成長が期待されています。
まとめ
この記事では、日本を代表するグローバルのコンサルティングファームである野村総合研究所について解説しました。野村総合研究所は「顧客とともに栄える」というビジョンを掲げ、官公庁や大企業に幅広いコンサルティングサービスを提供してきました。今後は長期経営ビジョン「Vision2022」に示されているように、海外を舞台とした更なる成長が期待されています。