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2022.05.11 ティール組織とは?その意味から次世代型組織の実現方法まで成功事例をもとに解説|フリーコンサルタントのPOD

ティール組織

ティール組織とは、世界的に注目されている「次世代の組織モデル」のことです。管理型の組織が当たり前となっている日本でも、組織のあり方を変えて企業の可能性を広げるモデルとして話題になりました。今回は、そもそもティール組織とはどのようなものなのか。どのようにしてティール組織を実現させるのか、実例を交えて解説します。 

【目次】 

・ティール組織とは 
・ティール組織に至るまでの5段階の組織概念
・ティール組織を実現させる3つのポイント 
・ティール組織の事例 
・まとめ 

  

   

ティール組織とは 

ティール組織の概念は、フレデリック・ラルー氏が2014年に出版した著書『Reinventing Organizations』(日本語版『ティール組織―マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』英治出版)で提唱したものといわれています。ラルー氏は「人々の可能性をより引き出せる組織とは何か?」の問いから、約2年半、世界中の組織を調査し、これまでの組織に当てはまらない次世代の組織としてティール組織を定義しました。 

ティール組織では、上司やリーダーが部下の行動を細かく管理・チェックしなくても、企業が目的のために進化を続けるとされています。特徴は、メンバー一人ひとりが自分たちのルールや仕組みを理解して独自に意思決定していくこと。また、組織内の階層的な上下関係はありません。 

既存の組織のような定期的なミーティング、売上目標、予算管理など慣例を撤廃。意思決定の権限を管理職から個々の従業員に移譲して、組織や人材に変化を起こします。ティール組織ではメンバーが主体的に行動でき、指示を待つ必要がありません。そのため「働く人のライフスタイルを尊重できる」「業務効率が向上する」「変化にも柔軟に対応できる」などのメリットがあるとされています。

  

  

ティール組織に至るまでの5段階の組織概念

ティール組織を提唱したラルー氏は、人類が5つのフェーズを経てティール組織にいたると考えました。その5段階を図に表すと次のようになります。 

ティール組織

引用:『ティール組織―マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』(英治出版)Amazonページ「出版社より」

  

「衝動型(レッド)組織」から「進化型(ティール)組織」までの5段階について、それぞれを解説していきます。 

衝動型(レッド)組織  

衝動型(レッド)組織は、自我を確立した人類の原始的な形態です。強力な力を持つリーダーが圧倒的な力(恐怖)で支配するのが特徴で、目先の利益を優先した短絡的な判断が行われる傾向にあります。マフィアやギャングの組織が代表的な例で、ボスに従うオオカミの群れにも例えられます。 

  

順応型(アンバー)組織

順応型(アンバー)組織は、文明を築いた人類が国家を形成した頃に登場した形態です。明確な階層があり、上意下達で指示・命令が下されるのが特徴です。厳格な上下関係により、多くの人数を束ねることが可能ですが、変化や競争よりもヒエラルキーが優先されるため、組織が硬直化しやすい欠点があります。順応型組織の典型例としては軍隊があげられます。 

  

達成型(オレンジ)組織  

達成型(オレンジ)組織は、科学技術が発展する中、権威や伝統への批判が起きたことで登場した組織形態です。ヒエラルキーはありますが、順応型組織ほど厳格ではなく、効率を重視した複雑な階層になる傾向があります。競争によって出世も可能であり、現在の会社組織の多くが達成型組織といえるでしょう。達成型組織では、常に競争が強いられ、数値でマネジメントされるためメンバーは機械のように働いて人間性を喪失しがちです。 

  

多元型(グリーン)組織

多元型(グリーン)組織は、達成型(オレンジ)組織のアンチテーゼとして生まれたものです。社長・社員などのヒエラルキーはあっても、平等で多様性が重視されるため、メンバーが主体性を発揮しやすい組織です。メンバーが多様な意見を出し合って得た結論のボトムアップも可能です。互いを尊重し合う「家族」のような組織です。風通しがよい一方で、合意形成に時間を要する課題もあります。 

  

進化型(ティール)組織

全体性を重視しながら、個々が意思決定する進化型(ティール)組織は、最も進化した組織とされており、複雑で変化の激しい時代にも適応できます。メンバーの自己実現を可能にしながら、組織自体も進化していくのが特徴です。 

  

ティール組織とホラクラシーの関係性

ティール組織と似た組織運営モデルに「ホラクラシー」があります。ホラクラシーとは、アメリカの起業家ブライアン・ロバートソンが提唱した非階層型の組織運営モデルのことです。ヒエラルキー組織がトップダウンで意識決定するのに対してホラクラシー組織での意思決定は分散型です。上下関係を撤廃した個々のフラットな関係が特徴で、情報はメンバー全員に共有されます。 

ホラクラシー

引用:創業手帳「ホラクラシー組織を知っていますか

  

ラルー氏は著書の中でティール組織の構造を「パラレル構造」「ウェブ構造」「入れ子構造」の3つに分類しています。ホラクラシー型組織は「入れ子構造」に分類されるとしています。関係性でいえば、ホラクラシーは「ティール組織の形態の一つ」といえます。 

   

  

ティール組織を実現させる3つのポイント

ラルー氏はティール組織には、次のいずれかあるいは全ての特徴が備わっているとしています。その特徴が「自主経営(セルフ・マネジメント)」、「全体性(ホールネス)」、「存在目的」の3つです。それぞれを説明しましょう。 

   

自主経営(セルフ・マネジメント)

自主経営(セルフ・マネジメント)とは、メンバー一人ひとりがリーダーや上司の指示を仰ぐことなく、主体的に設定した目標や動機で経営に関わっていくことです。自主経営を可能にするためにティール組織では、意思決定に関する権限と責任を全てのメンバーに与えています。 

  

全体性(ホールネス)

ホールネスとは、メンバーが「ありのままの自分」でいられる環境を構築して、個人の能力や個性を最大限に活かしていく考え方です。ティール組織には、個人の心理的な不安を取り除き、安全性を確保することが求められます。 

  

存在目的

存在目的とは組織が進化する目的のことです。ティール組織は、つねに新たな目的を求めながら進化していきます。組織が成し遂げたいことは何か、組織はどのような速度で成長したいのかを共有することで、メンバー全員が組織の存在目的の実現に向けて行動できます。 

  

  

ティール組織の事例

ティール組織の事例として、ラルー氏が著書で最初に紹介しているのが、オランダの看護師派遣会社「ビュートゾルフ」です。在宅看護サービスを行っているビュートゾルフは、達成型(オレンジ)型からティール組織へ進化した企業です。 

ビュートゾルフでは従来、エリアマネジャーが効率化されたケアプランを作成し、看護師が分刻みで患者から患者へと移動しながら治療にあたる「達成型(オレンジ)モデル」が主流でした。 

しかし、効率だけを重視した在宅ケアは顧客との信頼関係を壊すだけでなく、働く看護師たちのモチベーションを損ねるとして組織改革を実施。看護師が時間をかけて患者と対話して深い信頼関係を築けるようにしました。 

一見、非効率的なこの方法でビュートゾルフは、それまでより格段に短い治療時間で収益をあげることに成功したそうです。また、患者満足度が業界1位、スタッフ満足度は全ての産業で1位となりました。2006年にたった6人でスタートしたグループは、現在1万人以上の看護師を擁するオランダ最大のケア組織に成長しています。 

  

  

まとめ 

今回は、世界的に注目されているティール組織についてまとめました。日本企業の多くが、ピラミッド階層構造の「達成型(オレンジ)組織」といわれており、限界が指摘されています。組織のあり方について検討されている方は、ティール組織の導入を選択しにいれてみてはいかがでしょうか。 

  

  

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