2022.03.22 VUCAの意味や言葉が生まれた理由、企業がVUCA時代に対応するために必要なことを解説
昨今の急速なテクノロジー発達、地球規模での気候変動、相次ぐ国際情勢の緊迫、等々。予測不能な状況のことをビジネス用語などではVUCA(ブーカ)と呼んでいます。
現代に生きる私たちはVUCAに対し、事態を正しく把握・分析してよりよい未来を選択していくための道を探る取り組みが必要です。本コラムでは、そんなVUCAという言葉が生まれた背景や意味、そして企業活動ではどのように対応すべきかをお知らせします。
VUCAとは
VUCAとは、先の見通しが不透明で、未来予測が困難な状況を表現する言葉として使われています。以下にその意味を解説しましょう。
VUCAの意味
VUCAとは、次の4つの単語の頭文字を取ったものです。
・Volatility(変動性)
・Uncertainty(不確実性)
・Complexity(複雑性)
・Ambiguity(曖昧性)
Volatility(変動性)とは、テクノロジーや社会の仕組み、人間の価値観や顧客の需要などが激しく変化していくことを意味しています。
Uncertainty(不確実性)は、大規模な気候変動や災害、国際情勢の変化や疫病によるパンデミック等々、想定外の事態が起こりうる危険性に関することです。
Complexity(複雑性)は、経済の国際化がもたらすフィールドの伸展が、文化や思想のギャップから齟齬をきたすケースが少なくないことを表わしています。経済に限ったことではありませんが、ビジネスを行う上で時に大きなハードルとなる場合もあるでしょう。
Ambiguity(曖昧性)とは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)が絡み合うことによってはっきりした正解を導き出せなくなる事態を表わしています。必ずしも前例のある事ばかりではないため、因果関係を解明することが難しく、対策を打ち出すことが困難となるケースです。
このような事柄が重なって先行きが不透明となる状況をVUCAと呼んでいます。
VUCAの由来
VUCAという言葉は、元来アメリカで使われだした軍事用語で、1990年代の冷戦終結から核兵器に代わる戦略の不透明さを表現していました。2010年代からはビジネス用語としても使われるようになり、目まぐるしく変化する世界情勢に対する言葉としての意味も含んでいます。
VUCAにおいて企業が取り組むべきこと
先が見えず未来予測が困難であればあるほど、対策を立てにくくなるのは必然です。しかし、経済活動を絶えず行っている企業としては、そんな状況でもできる限りの対応をせねばなりません。そこでVUCAの状況下で取り組むべき3つの課題を以下に挙げます。
アジャイル経営
アジャイル(agile)とは素早い、俊敏な、といった意味の単語で、その場の状況に合わせて臨機応変な対応をとることを指しています。特にソフトウェア開発の現場で使われることが多く、未来予測が困難なVUCA状況下で望ましい、もっとも基本的な姿勢といっても過言ではありません。
DX(デジタルトランスフォーメーション)
IT技術の発達に即したデジタルテクノロジーの活用は、もはや国を挙げての必須の課題と捉えられています。単なる効率化だけではなく、場所という制約を受けなくなるテーマも多いため、企業にとっても働く人にとってもさらなる柔軟性をもたらす可能性に満ちています。
ダイバーシティの推進
企業を取り巻く環境が急速に変化し、先行き不透明な状況では、多様な価値観・バックグラウンドを持つ人材を活用するダイバーシティーが重要です。働く人の人種や国籍、あるいは宗教や考え方など異なるバックボーンを尊重し、それぞれが協力して課題に取り組んでいける環境づくりと意識改革が必要です。
VUCAにおいて個人が取り組むべきこと
VUCAの状況は企業だけではなく、もちろん企業で働く個人にとっても重要となります。では個人としてはどういったことに取り組むべきなのでしょうか。以下に3つを挙げました。
情報収集
未来予測が困難であるVUCAの状況下で、現在の状況や立ち位置を100%把握することは難しいですが、それでも判断するうえでの情報収集は重要です。
意思決定と迅速な対応
個人レベルでもしっかりとした意思決定と迅速な対応が必要となります。状況が目まぐるしく、しかも劇的に変化していく可能性があるなか、その場に即した柔軟な対応が求められます。
多様性の受容
社会や企業に求められるダイバーシティの実現とは、個々人が多様性を受容していくことでもあります。さまざまな立場や考え方、バックボーンの違いなどを乗り越えて協力していくためには、多様性を受容する姿勢が必要です。
VUCAに対応するための考え方
未来予測を難しくするVUCAに対応するための考え方について、一例を挙げましょう。OODA(ウーダ)ループと呼ばれるものを以下に解説します。
OODAループとは
OODAループとは、迅速に意思決定を行うためのプロセスを指す言葉です。それは以下4つのステップに分けられています。
・Observe(観察)
・Orient(仮説構築)
・Decide(意思決定)
・Act(実行)
第1段階のObserveは観察による情報収集を目的としています。そこで得られたさまざまな分析因子を基にして、第2段階のOrientで取るべき施策のための仮説を構築します。この時に重要なのは過去の経験、特に失敗した要因を織り込んで反映させることです。第3段階のDecideは意思決定で、この際に有効と思われる策を列挙して条件にかなうものに優先順位を設定します。そうして得られた結論を第4段階のActで実行に移します。
OODAがループと名付けられているのは、この一連の活動を繰り返すためです。つまり、1回目のOODAによる結果を踏まえてさらに2回・3回とアップデートしていくことが重要なのです。
OODAループの由来
OODAループは20世紀半ばの戦闘機パイロット、ジョン・ボイドが提唱した意志決定法です。彼は空戦において、どんなに不利な状況でも必ず40秒以内に形成を逆転したといいます。ボイドは退役後、自らの経験をふまえて意思決定法を研究し、OODAループと名付けました。
OODAループとPDCAの違い
OODAループとよく似たイメージで語られるフレームワークにPDCAがありますが、両者はそもそもの目的が異なります。
PDCAの本来の目的は工場等における生産性アップです。明確な数値目標のために設定するのがPDCAならば、OODAループは不明瞭で未来予測が困難な状況下において柔軟な対応を実現するためのものといえるでしょう。したがってPDCAは決まった工程がある状態での改善のため、OODAループは特定の工程がない大きな課題に向けてのものとも言い換えられます。
いずれにせよ、目的にかなったフレームワークを的確に選択することが肝要です。
まとめ
今回は、VUCAの意味や言葉が生まれた背景、企業がVUCA時代に対応するために必要なことを解説しました。変化が激しく不透明な時代にあわせた対応方法を知り、最適な判断を行えるようにしましょう。