上場コンサル会社の決算を見る | 2016年12月期 | コンサル業界ニュース

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2017.02.16 上場コンサル会社の決算を見る | 2016年12月期

上場しているコンサルティング会社は4半期に一度、売上利益が公表される。

大手企業を中心にコンサルティングサービスを提供する上場コンサルティング会社5社の最近発表された2016年12期の決算書を元に、コンサルティング業界の状況を見てみよう。

コンサルグ業界ニュースでは、主要各社の売上、営業利益、純利益とそれらを前年同時期と比較した増減を一覧化(一部はコンサル部門のセグメント業績をピックアップした)。それが以下の表となっている。

※社名部分が決算短信とリンクしています。
※カッコ内は前年同期との比較。赤字は去年を下回る。青字は去年を上回ることを示す。
※売上・利益の単位は百万円。発表日順。

 

社名
売上 営業利益 純利益
 
ベイカレント・コンサルティング
(平成29年2月期(第3四半期) 1/13発表)
13,068
(+12.1%)
1,865
NA
963
NA
 
野村総合研究所
※コンサルティング事業

(平成29年3月期(第3四半期) 1/27発表)
21,174
(+2.8%)
3,689
(+7.7%)
NA
 
ドリームインキュベーター
※コンサルティング事業

(平成29年3月期(第3四半期) 1/27発表)
2,433
(+28.2%)
1,414
(+42.5%)
NA
 
三菱総合研究所
※シンクタンク・コンサルティングサ-ビス

(平成29年9月(第1四半期) 2/3発表)
2,188
(+5.0%)
-1,025
(前年同期-893)
NA
 
シグマクシス
(平成29年3月期(第3四半期) 2/6発表)
7,834
(+12.4%)
528
(+46.8%)
407
(+141%)

  


※ベイカレントは前年同期は未上場企業だったため営業利益、純利益は確認できず
※野村総合研究所、ドリームインキュベータ、三菱総合研究所はコンサルティングに関する事業の利益を記載


  
表全体を見ると分かるが一言で言うと、コンサルティング業界の景気は良い。好調だ。

売上・利益とも、前年比プラスとなっている会社が多いことがみてとれる。ここ数年ほど同じようにこのような状況が続いているが、政府による経済対策や日本銀行の金融緩和政策や円安を背景にした大企業の好業績に引っ張られ、大企業をメインクライアントにビジネスをする上記各社のビジネスは順調に推移していることが推測される。

より詳しく、決算短信にかかれた事業の概況(定性的な部分)を見てみよう。

▼ベイカレント・コンサルティング
2016年10月より営業部門を含む内部体制の変更を行い、高付加価値案件を担当できるコンサルタント数を確保するため、継続的に安定した収益を維持していた案件の受注を制限。しかし期待した高付加価値案件の急激な受注ができず、その結果2017年2月期の売上収益を18,282百万円(前期比15.5%増)から16,653百万円(前期比5.2%増)と下方修正している。

この修正理由について、決算短信の中で以下のような要因を挙げている。

所属コンサルタント数について、期末時点において前期比約20%の増加を見込んでいたが、コンサルティング業界における人材の争奪が想定以上に加熱しており、期末時点における所属コンサルタント数は前期比約8.2%程度の増加にとどまる見込み

また、平均単価については、過年度の実績を勘案したうえで、年間を通じて上昇し、前期比5%程度上昇すると見込んでいたが、当期において高付加価値案件獲得を積極的に推進した結果、当期末における平均単価は前期比16%程度上昇する見込み。しかし、一方、稼働率が年間を通じて平均90%超での推移を見込んでいたが、上記単価に見合った高付加価値案件の受注を急激に獲得することができなかったため、既存得意先との取引が縮小し、年間を通じた稼働率は80%程度となる見込みとのこと。

▼野村総合研究所 ※コンサルティング事業 

コンサルティング事業に関しては、グローバル関連のコンサルティング案件が減少したが、顧客の大型開発プロジェクトを支援するシステムコンサルティングが増加したとしている。

第3四半期決算プレゼン資料によると、海外買収先企業とのシナジーの創出や、新規事業の創出に取り組んでいるようだ。新事業創造の分野においては、ビジネス構想からシステム構築に至るプロセスを顧客と共創し開発した例として、日本航空との「どこかにマイル」等が取り上げられえ取り、デジタルマーケティング、FintechやAIへの取り組みにおいて、実績作りを継続しているとのことだ。

▼ドリームインキュベータ ※コンサルティング事業

コンサルティング事業(セグメント)においては、前連結会計年度に引き続き、既存顧客である大企業からの継続的な受注に加え、長期的支援を実施する実行支援型プロジェクトの増加、海外企業からの新規受注により、当第3四半期連結累計期間の売上高は2,433百万円(前年同四半期は1,898百万円)、セグメント利益(営業利益)は1,414百万円(年同四半期はセグメント利益(営業利益)992百万円)となり、過去最高を更新。

コンサルティング事業は、既存顧客への戦略コンサルティングやプロデュース支援に引き続き注力しつつ、海外事業展開を加速することで、前連結会計年度に対して15%程度の売上高成長率を見込んでいるということだ。

▼三菱総合研究所 ※シンクタンク・コンサルティングサ-ビス

シンクタンク・コンサルティングサ-ビスにおいて、官公庁向けでは、システム開発工程管理案件や衛星地上設備関連の調査案件、民間向けでは、金融機関向けのリスク管理・規制対応支援コンサルティング案件や顧客データ分析案件などが売上に貢献し、売上高(外部売上高)は2,150百万円(前年同期比4.2%増)、経常損失は1,025百万円(前年同期は893百万円の損失)となったとのことだ。

▼シグマクシス

人工知能(AI)および各種ソフトウェアを積極的に採用し、顧客企業へのサービス提供に生かすと共に、リサーチ業務などのコンサルタントの業務にも活用することで、人財をより付加価値の高い活動に集中させるため、実証実験を開始しているとのこと。

クラウドサービスやソフトウェア提供会社とのパートナーシップ強化も推進。9月にはグーグル社とグーグル・クラウド・プラットフォーム(GCP)のサービスパートナー契約を締結。かねてよりパートナーシップを結んでいるIBM WatsonやGCPの活用を通じて、製造業、流通業、保険業や建設業といった幅広い業界の顧客企業に対する、AIを活用した業務改善や新たなビジネスモデル構築の可能性を検証するプロジェクトも活発化している。

M&Aアドバイザリーサービスを提供する子会社、株式会社SXAの事業は順調に成長。

4月には戦略的な協業関係の構築や、事業投資のさらなる拡大のためアライアンス専任組織を新設したとのこと。9月に株式会社S&Sインベストメントへの資金提供を実施し、同社の100%子会社で、ITサービス領域のベンチャー企業を投資対象とするベンチャーキャピタル「SXキャピタル」との資本・業務提携。ソフトウェアビジネスおよびプラットフォームビジネスの確立、顧客を含む各種企業および社員とのジョイント・ベンチャー設立、SXキャピタルを通じたインキュベーションに焦点を当て、投資を拡大するとのことだ。

採用についても触れており、受注増に対応し、第3四半期も中途採用を積極的に行い、当第3四半期連結累計期間において経験者36名を採用。4月入社の新卒社員24名が、集合研修およびOJT(オンザジョブトレーニング)を完了し、第3四半期から稼働を開始しているという。

各社決算短信については上記表における社名をクリックしてください。

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