2022.08.25 最短で終わらせる|フリーランスの確定申告
フリーランスや個人事業主として収入を得ている方にとって、確定申告は重要な責務です。そもそも確定申告とは、「1年間の収入や支出や儲けに対し、払うべき税金を書類にまとめ、税務署に申告することで、納税額を確定する」といった作業のことをいいます。
この記事では、フリーランスや個人事業主にとって、なぜ確定申告が必要なのかなどを解説します。あわせて、確定申告の種類や流れ、よくある疑問への回答なども解説します。ぜひ参考にしてみてください。
目次
・なぜフリーランスは確定申告が必要なのか
・確定申告の種類
- 青色申告(単式簿記)
- 青色申告(複式簿記)
- 白色申告
・確定申告が必要なのはいくらから?
・所得が48万円以下でも確定申告をした方が良いケース
- 所得がマイナスなっている
- 源泉徴収されている
・【初めてでもできる】確定申告の流れ
- 必要なものを準備する
- 確定申告書を作成する
- 税務署に提出する
・フリーランスの確定申告の気になる疑問
- Q.確定申告書を提出した後に間違いに気付いたら?
- Q.所得が48万円以下なら本当に何もしなくていい?
- Q.どのようなものが経費にできるの?
・まとめ
なぜフリーランスは確定申告が必要なのか
フリーランスに確定申告が必要な理由は、「1年間の収入と支出、納税額を確定する」目的にあります。そして、「所得税や住民税を納めるために払いすぎた税金の還付」を受けるためにも重要な作業です。そのためには、収入のうち必要経費や各種控除など課税対象とならないものを税務署に申告し、正しい所得税を確定させなければなりません。
会社に勤めている人は、原則として会社が年末調整で行います。しかし年末調整がなく、組織に所属していないフリーランスの場合は、自分で行わなければなりません。
確定申告の種類
確定申告には「青色申告(単式簿記)」「青色申告(複式簿記)」「白色申告」の3種類があり、それぞれ異なる複数の書類が必要です。ここでは確定申告の種類を解説します。
青色申告(単式簿記)
青色申告(単式簿記)は、簡易簿記により帳簿をつけるやり方で、取引内容を1つずつ扱い、金額の増減と要因を記帳します。
青色申告(単式簿記)には、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、固定資産台帳があります。青色申告特別控除は10万円で、電子帳簿保存やe-Tax申請による、控除額のアップはありません。
また青色申告(単式簿記)をするには、開業届と青色申告承認申請書を提出している必要があります。
※出典: No.2070 青色申告制度|国税庁
青色申告(複式簿記)
青色申告(複式簿記)は、正規の簿記により帳簿をつけるやり方で、取引ごとに、1つの取引に対して「費用の計上」と「資産の減少」を記帳します。
主要簿には、総勘定帳、仕訳帳があり、補助簿には現金出納帳、売掛帳、買掛帳、固定資産台帳があります。青色申告特別控除は55万円で、電子帳簿保存またはe-Taxで電子申請を行った場合の青色申告特別控除は65万円です。
また青色申告(複式簿記)をするには、開業届と青色申告承認申請書を提出している必要があります。
※出典: No.2070 青色申告制度|国税庁
白色申告
白色申告は、事前の申請が要らず、青色申告よりも簡易な方法で帳簿をつけるやり方です。取引ごとではなく1日の合計金額で記帳します。簡易といっても、所得金額が正確に計算できるように、整然で明瞭な書き方にするのが大切なので気をつけましょう。
また、控除額が大きい青色申告特別控除のような控除はなく、青色申告と比べると税制面のメリットは少なめです。白色申告をする必要があるのは、青色申告承認申請書が未提出で、承認を受けていない人になります。
※出典: No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度|国税庁
確定申告が必要なのはいくらから?
確定申告は、個人事業主として所得(収入の合計-必要経費)が年間48万円を超えると手続きが必要になります。
ただし収入の合計が100万円で、経費の合計が60万円、所得額が40万円の場合、ここからすべての人に認められている基礎控除48万円を引くと-8万円になるため、「課税対象所得がない」ということになり、申告は不要です。
所得控除には基礎控除の他に、医療費控除や社会保険料控除などもあります。所得から所得控除を差し引いてゼロやマイナスになった場合には、確定申告は必要ありません。
※出典: No.1199 基礎控除|国税庁
所得が48万円以下でも確定申告をした方が良いケース
所得が48万円以下でも確定申告をした方が良いケースは、所得がマイナスなっているケースと、源泉徴収されているケースです。次からそれらケースの内容を、それぞれ詳しく解説します。
所得がマイナスなっている
所得が48万円以下でマイナス(赤字)になっている場合に、確定申告は必要ないのでは?と考える方も多いかもしれません。しかし、赤字になった場合でも、損失を繰り越すための「損失申告」という確定申告をした方が、節税につながるのはご存知でしょうか。
これは青色申告だけの特典であり、この申告をすることで、他の所得から赤字分を差し引く「損益通算」ができます。また損益通算をしても赤字が残った場合は、今年の損失を翌年以降に繰り越すことができる「繰越控除」を受けることも可能です。
「損失申告」をする際は、通常の確定申告書の他に、第四表「確定損失申告用」の作成も行うのが必須となります。
源泉徴収されている
所得が48万円以下でマイナス(赤字)になっている場合でも、確定申告をした方が良いケースの二つ目に「源泉徴収されている」ケースが挙げられます。
報酬等から所得税や予定納税が源泉徴収されている場合に、実は税金を払いすぎている可能性があるためです。その時は、「還付申告」をすることで、納めすぎた所得税が戻ってくることがあります。還付申告書は、確定申告期間とは異なり、その年の翌年1月1日から5年間の間に提出することが可能です。
※出典: No.2030 還付申告|国税庁
【初めてでもできる】確定申告の流れ
ここからは、確定申告をするときの流れを解説します。確定申告には事前に準備するものや、いくつかのステップがあるので、一つ一つ確認していきましょう。確定申告が初めての場合でもわかるように解説するため、ぜひ参考にしてみてください。
必要なものを準備する
確定申告をするにあたっては、申告書の作成が必要です。そのために必要なものをあらかじめ準備しておくことで、作業がスムーズになります。
確定申告書
まず必要となるのは「確定申告書」です。確定申告には、A様式、B様式がありますが、フリーランスの場合はB様式の確定申告書を使用しましょう。
確定申告書は、国税庁のWebサイトからダウンロードするか、税務署、市区町村の窓口などでももらえます。ただし、国税庁の確定申告作成コーナーや、e-Taxでの申請、会計ソフトから出力する場合は不要です。
<h4>収支内訳書または青色申告決算書</h4>
白色申告の場合は収支内訳書、青色申告の場合は青色申告決算書が必要になります。用紙の入手場所は、確定申告書と同様ですので、国税庁のWebサイトや国税庁の確定申告作成コーナーで確定申告書を入手する際に、一緒にもらっておくと良いでしょう。
マイナンバーがわかるもの
マイナンバーカードやマイナンバー通知カード、マイナンバーが記載された住民票など、「マイナンバー」がわかるものも用意します。マイナンバーは確定申告書に記入する重要事項ですので、正確な番号をきちんと把握しておきましょう。
提出の際に提示、郵送提出の場合はコピーを添付する必要があります。また、扶養控除や配偶者控除がある場合は、対象者全員分用意してください。
会計帳簿、領収書等
会計帳簿や領収書も、確定申告書や収支内訳書/青色申告決算書を作成するために必要です。具体的には、経費の領収書やレシート、クレジットカードの明細書などを用意します。
これらは作成資料として必要なもので、提出する必要はありません。しかし、青色申告は7年間、白色申告は5年間の保存が義務付けられているので、お金が発生する際には普段からしっかり管理しておきましょう。
医療費控除の明細書
もし通院している場合は、医療費控除の明細書も必要になります。年間の医療費が10万円を超える場合、控除が受けられる可能性もあるためです。用紙は国税庁のWebサイトからダウンロードできます。領収書は提出不要ですが、5年間保存する必要があるので注意しましょう。
社会保険料控除証明書
国民健康保険や国民年金等の保険料を支払った場合に、控除が受けられることがあります。これは加入している家族分も対象です。
国民健康保険料の証明書は自治体から手に入れられますが、国民年金の証明書は日本年金機構から郵送で届きます。
※出典: No.1130 社会保険料控除|国税庁
生命保険料控除証明書
生命保険料控除証明書も準備しておきましょう。生命保険料や介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合に、一定額が控除されます。加入している保険会社等から郵送で届くため、失くさずに保管しておきましょう。
※出典: No.1140 生命保険料控除|国税庁
金融機関の口座情報
金融機関の口座情報も、還付金の振込先として用意しておきましょう。ただし、ネット銀行は対応していない銀行もあるため、確認が必要になります。また、郵便局の窓口でも還付金が受け取れるので、こちらの場合でも問題ありません。
確定申告書を作成する
いよいよ確定申告書を作成していきます。確定申告書を作成するには、自分で手書きもしくは確定申告ソフトで作成する方法や、税理士に依頼する方法があるので、自分のやりやすいいずれかの方法で行いましょう。
自分で作成(手書き)
自分で手書きで確定申告書を作成する方法では、帳簿を見ながら各項目を集計し、計算した数字を書き込んでいきます。わざわざ確定申告ソフトを準備しなくても、電卓や表計算ソフトを使って集計・作成するので、デジタルなやり方が苦手な人が選ぶことが多いでしょう。
しかし数字の転記ミスが起こりやすかったり、複雑な計算もあるため時間がかかったり、というデメリットもあります。間違いやすい方法でもあるため、この方法を選んだときはミスがないよう気をつけましょう。
自分で作成(確定申告ソフト)
確定申告ソフトの誘導に沿った簡単な操作で、確定申告用の書類を作る方法もあります。手書きの方法とは違って、転記のミスや項目がずれるなどのミスもせずに済みますし、普段からの帳簿の記録があれば時間をかけずに作成可能です。
また、確定申告書作成コーナーを利用して作成するのもおすすめの方法です。
税理士に依頼
税理士に依頼して、確定申告に関わる作業をすべて任せてしまう方法もあります。自分で作成する場合ではミスが起こりやすいですが、プロの税理士に依頼すればミスもなく、しっかりと確定申告書を作成してくれるので心強いです。
ただし依頼料が発生するので、あまりお金をかけられない場合はネックです。
税務署に提出する
確定申告書が作成できたら、税務署に提出しましょう。提出方法は、直接持参する方法と、郵送する方法、e-Taxで電子申告する方法の3つがあります。以下、それぞれ見ていきましょう。
直接持参する
確定申告書を税務署に直接持参する方法を選んだ場合は、必要書類がそろっているかチェックしてもらえるメリットがあります。ただ、確定申告書の提出期間中は混雑するのも予想されるので、その場合は税務署の時間外収集箱へ投函も検討しましょう。
郵送する
自宅などで作成した確定申告書を郵送で送る方法もあります。受領印を押した控えが必要な際は、切手を貼った返信用封筒を同封しましょう。
ただし確定申告書を郵送で送る場合、レターパックなど信書が送れる方法を選ぶ必要があります。ゆうパックや宅配便は信書を送れないという落とし穴もあるため、対応可能な郵送方法を選んで利用してください。
e-Taxで電子申告する
確定申告書をe-Taxで電子申告する方法も利用可能です。この方法の場合、24時間申告ができるメリットがあります。また、青色申告特別控除の上限金額が通常は55万円 のところ65万円になる点もその他の方法とは違うポイントです。
ただしe-Taxでの電子申告には、マイナンバーカードとカードリーダーライター(または利用者識別番号、パスワード)が必要です。また、利用するためには事前に開始届出書を提出しておかなければなりません。
※出典: e-Taxの開始(変更等)届出書作成・提出コーナーについて | 【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)
フリーランスの確定申告の気になる疑問
ここではフリーランスの確定申告に関して、多くの人が気になる疑問点をご紹介します。確定申告書を作成する際には、事前にチェックしておきましょう。
Q.確定申告書を提出した後に間違いに気付いたら?
確定申告の提出期限内なら、最新で届いたものが受領されるため、修正した申告書を再度提出します。もし確定申告の提出期限後に間違いに気付いた場合は、必要な申告をしましょう。
税額を少なく申告していた場合は、「修正申告」をして、その日に不足分を納税します。逆に税額を多く申告していたら、「更正の請求」を行いましょう。
いずれも確定申告書作成コーナーで作成できるので、そこで「修正申告」や「更正の請求」を行うとスムーズです。
※出典: 確定申告が間違っていたとき|国税庁
Q.所得が48万円以下なら本当に何もしなくていい?
住民税のための申告は必要となります。その理由として、住民税は所得から計算されるため、確定申告が必要ない場合でも、住民税申告は必要となるからです。また住民税の申告は税務署では行えず、各自治体の窓口で行います。
Q.どのようなものが経費にできるの?
事業で使用した費用は経費にできると決められています。
(例)
●家賃
●水道光熱費
●修繕費
●通信費
●交通費
●書籍代
●10万円以下の消耗品
●接待交際費
●セミナー参加費
●外注費
●販売手数料
●振込手数料など
自宅兼事務所として使っている場合は、プライベートと仕事の割合で按分して計算します。例えば家賃なら、プライベートスペースと仕事スペースの割合を計算し、仕事スペース分のみ経費に充てることが可能です。
まとめ
フリーランスとして収入を得ている方にとっての確定申告は、1年間の収入と支出、納税額を確定し、払いすぎた税金の還付を受けるためにも重要な作業です。
確定申告を通し、フリーランスとして働いた際に生じる、払うべき税金の金額をしっかりと確認し、その時に起きやすい不必要な支払いもできるだけ減らせるようにしましょう。
確定申告の期間は毎年ほぼ同じ日付です。直前になって慌てないよう、日ごろからお金まわりの整理や必要な準備をしておきましょう。