2022.07.21 コンサルからの起業|失敗を防ぐためにファーム在籍時に準備しておくべきこと
コンサルタントは起業に強いという人もいますが、失敗のリスクはゼロではありません。本記事では、起業を志すコンサルタントの方に向けて、失敗を防ぐためにファーム在籍時に準備しておくべきことについて解説します。 事業会社にお勤めの方にとっても参考になると思いますので、興味のある方はご一読ください。
目次
専門性や問題解決力の向上
事業アイディア探し・事業構想
週末起業で実践してみる
– 個人と法人、起業するならどちらにすべきか
起業資金を得る
人脈形成
– ブログ・Webサイトを開設する
- SNSで情報を発信する
- 自治体や商工会議所のイベントに参加する
- コワーキングスペースやレンタルオフィスを利用する
まとめ
専門性や問題解決力の向上
起業を目指すコンサルタントがファーム在籍時に取り組むべきものとして、真っ先にあげられるのが専門性や問題解決力の向上です。
コンサルティング事業で起業する場合は、コンサルタントとしての専門性や問題解決力がダイレクトに成功確率に関わってくるため、ファーム在籍時から意識的に得意分野を伸ばし、問題解決力を磨いておく必要があります。
コンサルティング以外の事業で起業する場合においても、突き詰めれば市場における問題をいかに解決するかがカギとなるため、問題解決力は最重要なスキルの一つといえます。また、事業の成功確率を高めるためには、できるだけ土地勘のある領域に取り組むべきであり、ファーム在籍時に興味領域に携わるチャンスがあれば、積極的に知見を増やしておきましょう。
事業アイディア探し・事業構想
続いて、コンサルから起業を目指すうえで大きな問題となるのが「何をやるか」です。つまり、どんな事業をやるかということです。コンサルティング事業であれば特に困らないと思いますが、もしコンサルティング以外の事業をやりたいという場合は、ファームに在籍しながら起業の事業アイディアを探り、できれば実際にビジネスモデルをまとめてみることをおすすめします。
事業アイディアを探る方法はさまざまですが、一例を以下に記載します。
・自身の強み(専門性やスキル)から探る
・社会課題から探る
・周囲の人の不満から探る
・自身の原体験から探る
・人にとっての普遍的な価値から探る
・技術革新に着目する
・規制に着目する
アイディア探しに役立つ視点は上記以外にも色々とありますし、コンサルタントの方はPESTや3C、PPMなど、さまざまなフレームワークを日常的に用いていると思います。
ここで重要なことは具体的に絵を描いてみることです。具体的に絵を描くメリットは、そこからさまざまな制約や検討すべきことが見えてくる点です。例えば、ファームに在籍しながら業務で市場分析などを行うケースはあると思いますが、有名なコンサルティングファームに在籍する方の場合、そのほとんどは大手企業をクライアントとしているケースが多いと思います。しかし、自分自身がゼロから立ち上げる会社には当然ながらファームで向き合っているクライアントのようなリソースはありません。ないものだらけのなかで、いかに事業を立ち上げるのか、そう考えると検討しなければならないことや早めに準備しなければならないことが意外と多いことに気が付くでしょう。
週末起業で実践してみる
会社の規定にもよりますが、いきなり起業せずにファームに在籍しながら週末起業で実践してみるのも手です。
この時、すでに事業アイディアがあれば、週末起業として事業の検証をしてみると良いでしょう。まだ事業アイディアがない場合でも、起業に必要な知見獲得につながるはずです。
ただし、週末起業には「プライベートの時間が減る」「本業に支障が出る可能性がある」などのデメリットもあります。何よりも体調管理に気を配る必要があるでしょう。
週末起業は、下記の流れで行います。
(1)在籍するファームの就業規則を確認する
(2)週末起業の目的や目標を設定する
(3)事業アイデアをもとに事業構想を練る
(4)必要に応じて仲間を集める
(5)サービスを作る
(6)開業届を提出して事業を始める
個人と法人、起業するならどちらにすべきか
コンサルから起業する場合、個人事業主と法人のどちらかを選びます。個人事業主として開業する場合と会社を設立して法人としてスタートする場合では、それぞれメリット・デメリットが異なります。
事業形態によっては事業がうまくいかないことも考えられるため、個人事業主・法人のどちらにするかは慎重に決めましょう。事業形態をどうするか悩む場合は、想定している事業規模を目安に決めることがポイントです。
ここでは、個人事業主として起業する場合と法人として起業する場合のメリット・デメリット、事業形態選びのポイントについて解説します。
個人事業主として起業する場合
個人事業主として起業するメリット・デメリットは、下記のとおりです。
個人事業主として起業する場合は、資金面や働き方の負担が少ないことが特徴です。一方、社会的信用が低くなるため、不動産やクレジットカードの契約で不利になりやすいなどのデメリットもあります。
小さな企業や個人をターゲットとした事業を行う場合や、「初期費用を抑えたい」「当面は事業拡大を考えていない」という方は、個人事業主としての起業の方が負担なく始められるでしょう。また、起業のための資金が十分ではない場合にもおすすめです。
個人事業主から始めて、事業が軌道に乗ってきたら法人成りを目指すこともできます。その場合は、所得が800万円を超えたタイミングが、法人成りを目指す目安の一つです。
法人として起業する場合
法人として起業するメリット・デメリットは、下記のとおりです。
法人として起業する場合は、金融機関からの信用やクライアントからの信頼を得やすくなります。法人化している方が、金融機関からの融資や取引先の拡大を有利に進められるでしょう。
一方、法人化には定款の認証や印紙代、司法書士への手数料などの費用が掛かります。合同会社の場合16万円前後、株式会社の場合24万円前後が必要です。個人事業主としての起業と比べると、費用面の負担が大きくなる点はデメリットと言えます。
中規模の企業や大企業をターゲットとする場合は、法人としての起業がおすすめです。ただし、勢いや過去の成功体験だけで決断すると失敗しやすいため注意しましょう。法人として起業する場合は、ターゲット層や事業規模をしっかりイメージしておくことが重要です。
起業資金を得る
起業するうえでの大きな課題の一つが起業資金です。個人事業主として起業する場合、まとまった起業資金は必要ないものの、事業を行う最低限の資金が必要です。法人として起業するとなれば、個人で起業する以上の資金を用意しておかなければなりません。
コンサルティングファームに在籍しながら起業資金を貯める方法は、主に下記のとおりです。
・自身で出資する
・家族や知人に出資してもらう
・初期投資の少ない事業で週末起業し、収益を得る
週末起業がある程度軌道にのっていれば、ファームを退職しても収入がある状態をつくることができますが、ファーム在籍時に週末起業ができない方もいると思います。そのような場合はフリーランスのコンサルタントとしてエージェントから案件を紹介してもらうのも一つの手です。週に2〜3日はフリーコンサルタントとして稼働し、そちらで一定の収益を得ながら残りの時間を使って他の事業を伸ばしていくといったやり方です。
起業の方法としてのフリーコンサルタントのメリットとしては以下のようなことがあげられます。
・コンサルティングであれば、ファームで培った経験をそのまま活かせる
・ファーム出身者向けのハイクラス案件は報酬単価が高い
・事業に投資するための資金を確保できる
・他の事業を推進する時間を作りやすい
ただし、フリーコンサルタントには以下のようなデメリットもあります。
・稼働しなければ報酬を得られない
・成果を出せなければ契約を更新できない可能性がある
・情報のキャッチアップやスキルアップは自身で継続的に行う必要がある
人脈形成
起業を成功させるうえで、人のつながりはとても重要です。しかし、人脈というのは1日や2日で築けるものではありません。また、単につながるだけでなく、信頼を構築してはじめて有用なものとなります。その意味では、ファームに在籍しているうちから人とのつながりを大切にしておく必要があります。
ここでは、人脈形成の手段として代表的なものを4つご紹介します。
先に補足すると、見出しだけみれば、いずれもごく普通の手法で目新しさはありません。ここでお伝えしたいことは、よく知られた手段ですら、実行・継続することはなかなか難しいということです。また、自分に合う手法とそうでない手法があるのも事実ですので、色々と試してみることも大切です。
ブログ・Webサイトを開設する
ブログやWebサイトを開設するメリットは、下記のとおりです。
・自分の考えや事業について知ってもらえる
・事業の信頼性が高まる
・専門性をアピールできる
・集客につながる
Webサイトは、事業の内容や得意なジャンルを知ってもらうきっかけとなります。信頼性や専門性を認めてもらうために、ブログで事業に関するテーマの記事を更新し続けることもおすすめです。
ブログやWebサイトの記事は、SEOの強化を意識するとより効果が高くなります。SEOが強化された記事は、検索結果からWebサイトへ流入する人が増えやすくなるため、新規ユーザーの獲得に有利です。既存の人脈に加えて新たなユーザー獲得にも力を入れ、売上アップを目指しましょう。
コンサルからの起業で成功するには、これまでの人脈だけでなく今後の人脈作りも重要です。起業資金が十分にあったとしても、人脈が不十分だと事業の成功は難しくなります。
コンサルティングファームを退職すると、同業他社への転職や業務で知り得た情報の開示が禁止されるケースがほとんどです。しかし、これまで作り上げてきた上司・同僚・不動産会社などの人脈が豊富であれば、起業後のビジネスチャンスにつなげやすくなります。
起業後は、事業の幅を広げるためにも、新しい人脈を作り上げるために積極的に行動しましょう。
ここからは、実践的かつ効果的な人脈形成の方法を4つ紹介します。
SNSで情報を発信する
SNSで情報発信をするメリットは、下記のとおりです。
・宣伝ツールとして利用できる
・フォロー、フォロワーという関係が人脈となる
・情報収集に役立つ
SNSを活用した情報発信は、Webサイトの開設より手軽に始められます。情報発信を継続しやすく、フォロワーがいれば確実に内容を見てもらえることが魅力です。また、プロフィールを充実させたり実績を発信し続けると、SNS上のダイレクトメール(DM)でオファーが届くこともあります。ブログやWebサイトで情報発信をしている場合は、SNSで更新情報を発信するだけでサイトへの誘導もできます。
さらに、事業に興味がある人や同じジャンルで起業した人ともつながれます。情報収集・交換の場として利用すれば、ビジネスチャンスをつかみやすくなるでしょう。
自治体や商工会議所のイベントに参加する
自治体や商工会議所は、異業種交流会・ビジネス交流会・人材情報交換会などさまざまなイベントを主催しています。自治体や商工会議所のイベントに参加するメリットは、下記のとおりです。
・普段出会えない人と出会える
・人脈を広げたい参加者が多く集まっている
・異業種のトレンドや情報収集に役立つ
自治体や商工会議所が開催するイベントには、参加費無料のイベントも数多くあります。初めてでも気軽に参加できるため、起業を目指している方や起業して間もない方にもおすすめです。
交流イベントは、WebサイトやSNSとは違い、実際に顔を合わせてコミュニケーションを図ります。直接人脈を広げたり異業種の情報に触れたりしたい場合は、自治体や商工会議所のイベント情報をチェックしてみましょう。
コワーキングスペースやレンタルオフィスを利用する
コワーキングスペースやレンタルオフィスは作業スペースとしてだけでなく、人脈作りにも効果的です。コワーキングスペースやレンタルオフィスの利用には、下記のメリットがあります。
・業種を問わず多くの起業家が利用している
・横のつながりを作りやすい
・仕事の依頼につながることもある
コワーキングスペースやレンタルオフィスには、フリーランスや小規模な企業が集まりやすいことが特徴です。すでに起業している人と人脈が作れれば、アドバイスや相談などができる可能性もあります。
起業経験者や成功している人のアドバイスを参考に、抱えている問題の解決や今後の事業拡大を目指しましょう。
まとめ
今回は、起業を志すコンサルタントの方に向けて、ファーム在籍時に意識しておくべきことや準備しておくべきことについて解説しました。起業の成功確率は決して高くありません。これは経営のプロと言われるコンサルタントも例外ではありません。起業の失敗を避けるためには入念な準備が必要であり、ファームに在籍しながらもできることはたくさんあります。できるところから起業へ向けた準備を始めてみてはいかがでしょうか。