2021.12.23 “経営者と対峙する覚悟”がコンサルタントとしての成長を加速させる|リブ・コンサルティング代表取締役 関 厳氏インタビュー
「“100年後の世界を良くする会社”を増やす」を経営理念に掲げ、2012年の創業以来、中堅・ベンチャー企業向けに経営コンサルティングを行っている株式会社リブ・コンサルティング。今回は、同社代表の関 厳氏をゲストに迎え、中堅・ベンチャー企業の支援に取り組む理由やコンサルティングのスタイル、同社ならではのコンサルタント育成術まで、株式会社ワークスタイルラボ代表の三浦 大治郎氏が話を伺います。
■目次
・なぜ中堅・ベンチャー企業なのか
- 潮目の変化
・コンサルティングのスタイル
- コミット
- 「戦略から実行まで」に対する誤解
- 誇れる仕事をする
- ロジカルの先へ
・リブ流、コンサルタント育成術
- 全員が教え合い高め合う
- マインドを鍛える
・採用について
なぜ中堅・ベンチャー企業なのか
三浦氏:リブ・コンサルティングさんは、2012年の創業以来、中堅企業やベンチャー企業を得意分野としていますが、なぜこの領域で創業されたのでしょうか?
関氏:中堅・ベンチャー企業の領域は、将来的に伸びるにも関わらず、ここをサポートするファームが少なかったことと、自分の経験を活かせる点からビジネスチャンスだったからです。
株式会社リブ・コンサルティング
代表取締役 関 厳氏
少しマクロな観点からいうと、途上国のようにインフラが整っていない国の場合、大企業が巨大資本でもって支援する必要性も大きいと思います。対して、日本はすでにある程度インフラが充実していて、サービス業が7割を超えていることから、今後はどちらかというと大掛かりなインフラよりもソフトウェアや人の心の問題を解決するようなサービスが増えてくると思ったんです。こういった領域は大企業よりもスタートアップやベンチャー、あるいはそれぞれの地域のオンリーワン企業の方が適合性が高いと思うんですが、実はそこをサポートするコンサルティングファームがないと感じています。
三浦氏:なるほど。中堅・ベンチャー企業に対しては創業当初からスムーズに受け入れられたのでしょうか?
株式会社ワークスタイルラボ
代表取締役 三浦 大治郎氏
関氏:正直、創業当初は企業開拓にかなり苦労しましたね…。この中堅・ベンチャー企業におけるコンサルティングの難しさは大きく2つあって、一つは大企業ほど大きな予算がないこと。もう一つはコンサルタントを使う文化がなかったことです。
潮目の変化
三浦氏:確かに、予算や企業文化の点では大企業と中堅・ベンチャー企業とではかなり違いがありますよね。そういった創業期の難しい状況から潮目が変わった背景ってなにかあったんでしょうか?
関氏:いくつか要因はあるんですが、クライアントであるオーナーやアントレプレナーに対して、結果を出すことでコンサルを使うメリットを感じてもらえるようになったことが大きいと思います。
創業当時は成果報酬型での支援を行うことも多く、その中で結果を出し続けてメリットを感じていただけたのは大きかったです。
あと、マーケット要因も大きいですね。この10年でベンチャーに流れてくる資金が約5倍に増えてるんです。結果的に、クライアント側が社内で人を雇うか、もっと上手にやれそうなコンサルタントを使うかっていう選択ができるようになったのは大きいですね。
もう一つは、特に中堅企業になりますけど、「働き方改革」の影響も大きいですね。これまでは、社長の下にいる番頭さんのような優秀な人たちが残業で会社を支えるのが当たり前でしたけど、安倍元首相が「働き方改革」を打ち出したことで、社員に無理はさせられなくなってきた。だけど、重要なタスクがなくなるわけではないから、それを外部に頼もうっていう流れになるわけですが、大手ファームさんは全然スタイルが違うし…ということで我々の仕事が増えたのはあります。
コンサルティングのスタイル
三浦氏:ここからは、御社のコンサルティングのスタイルに関してお聞きしたいと思います。
コミット
三浦氏:先ほど「結果を出す」というキーワードも出てきましたが、一般的にコンサルティングファームは結果にコミットしないイメージが強いなか、御社がコミットできる強さってどういうところからきてるんでしょうか?
関氏:創業時の苦労については先ほどお話ししましたが、まさにコミットせざるを得ない状況からスタートしたというのが実際のところです(笑)
創業初期はマーケティングやセールスのプロジェクトが多くて、クライアントの結果を出すというのは、つまり売上を上げるってことなんですよね。最近はDXプロジェクトなども増えてますけど、マーケティングやセールスのプロジェクトのコミットの方が断然きついので、かなり鍛えられたのはあります。
結果として、我々にとってコミットは間違いなく強みになってるので、他社との差別化の意味でも良かったと思っています。
三浦氏:他社との差別化でいえば、御社のHPで非常にユニークに感じたのが「コミットDX」というコンセプトです。これはどういったものでしょうか?
関氏:DXについては、IT化と新しい価値創出(トランスフォーメーション)の両方をやっていて、いずれも何かしらの数字に対してコミットメントをもって取り組んでいます。
そうした背景から、「コミットDX」というテーマを掲げたのですが、単なるデジタルツールの導入を行うのではなく、経営において、デジタルで課題解決を「実行」していく点が特徴です。
「戦略から実行まで」に対する誤解
三浦氏:「結果に対するコミット」に加えて、「実行」というキーワードも御社の特徴の一つですよね。「実行」について、もう少し教えていただけますか?
関氏:大手ファームさんが「戦略から実行まで」っていうときに、「実行」が何を指してるかっていうと、例えば経営企画室の代行やシステムを作ることを指してるんですよね。
つまり、コンサルタントが実務で手を動かすという意味の実行です。
これに対して、我々にとっての「実行」は、与えられたプロジェクトの中でクライアント企業が作戦通りやりきれるようにどう落とし込むか、という意味になるので、大手ファームさんとは「実行」の意味合いが違います。中堅・ベンチャー企業向けのコンサルの場合、コンサルタントが手を動かしても、クライアントにとってフィーが見合いませんし、そもそもコンサルタントって事業を変えるために雇われているので、コンサルタントが実務をやるとなると、それって本来コンサルタントに求められている実行ではない気がするんですよね…。
コンサルタントを志望する方の中には「実行までやりたい」という方も一定数いると思いますが、「実行」という言葉の解釈については、コンサルファーム毎に違いがあるわけです。なので、高級派遣的な意味合いでの実務の実行をしたいのか、我々のようにクライアントの事業に変化をもたらすための実行をしたいのか、ここは慎重に考えるべきポイントだと思います。
三浦氏:なるほど…。コンサル経験者には理解されやすいと思いますが、プロジェクトをやっているうちにクライアントと一緒に成果を出したくなるっていうのはよくありますよね。
関氏:そうですね。コンサル業界はプランニングだけだとつまらないから事業会社に転職しますっていうケースがよくあると思うんですけど、我々の場合、「実行」の意味合いが先ほどお話した通りクライアントと一緒にやるので、実行部分の物足りなさから転職する人はあまりいないですね。
誇れる仕事をする
三浦氏:御社のコンサルタントの方々にとって、リブ・コンサルティングで働くモチベーションになっているものってなんでしょうか?
関氏:そうですね…いろいろありますが、「誇れる仕事ができる」というのは大きいと思います。僕らのクライアントって、地方の社会課題解決だとか日本における不の解消に挑戦している会社が多いので、そういったクライアントをお手伝いすることで、自分自身にも周囲に対しても、「あの仕事をやった」と誇れるものが残ると思うんですよね。
また、刺激的で面白い人と仕事ができるというのもありますね。我々の場合、やりとりする相手がアントレプレナーやオーナー経営者になるので、めちゃくちゃやる気あって、エネルギーもすごいし、会って話をするだけでも面白いし、とにかく刺激的なんです。そういった点でも社員のモチベーションになってると思います。
ロジカルの先へ
三浦氏:向き合う相手がアントレプレナーやオーナー経営者というのは大手ファームさんとの大きな違いですよね。そういった視点から、御社のコンサルタントには大手ファームさんとは何か違った能力が求められるのでしょうか?
関氏:よくいわれる論理的思考力という部分は、他のファームさんとあまり変わらないと思いますが、コミュニケーション能力については違いがあると思います。
大手ファームさんの場合、クライアントに意思決定を迫るときって、会社として軸が決まっているものに基づいてどう決定してもらうかっていう話なんですよね。
対して、我々の場合、やりとりする相手が経営者になるので、こちらの話の持っていき方次第では意思決定の軸自体を変えることができるんです。これは大手ファームさんとの大きな違いですね。
当然、経営者の意思決定のトリガーを把握することや、別の判断軸を提案して納得してもらうというのは、かなりレベルの高いコミュニケーション能力が必要で、共感する力、あるいは気づく力ともいえますが、そういったスキルが必要になります。
三浦氏:おっしゃる通り、経営者相手にロジックや目先の分析資料だけでは難しいですよね…。
関氏:はい、経営っていろんな問題があると思うんですけど、役職が上になるほど定量的な分析だけじゃ結果が出なくて、曖昧で時間軸が長いものの判断が必要になるんですよね。「数字を分析した結果、こうなりますよね」っていうコンサルタントは多いと思いますけど、ロジックだけで通用するのは相手が課長クラスまでで、経営者相手には通じません。
相手が求めてたらそこはちゃんと応えるべきで、もちろん材料が分からないという事実は伝えるべきですけど、「社長の考え方や御社のカルチャーでいえばこの案が良いと思います」と言えるスキルが必要なんです。
リブ流、コンサルタント育成術
三浦氏:経営者と対等な目線で話せるようになるってすごい高いスキルが求められると思いますが、社員の方へのトレーニングや教育に関する試みって何かありますか?
全員が教え合い高め合う
関氏:毎月1回、オンラインの全社集会があって、皆で学び合える場を用意しています。
三浦氏:そうなんですね。具体的にどういうことをされてるんですか?
関氏:ケーススタディの共有発表を行っています。マネージャー以上のメンバーが投票で選んだ2つのプロジェクトを担当メンバーが取り纏めて発表し、ディスカッションや質疑応答を行います。
発表する側にとってもトレーニングになるし、聞いてる側、特に会社に入りたてのコンサルタントにとっては経験したことのない部分が育成時のハードルになるので、毎月2つのリアルケーススタディをやるのは育成にもいいんですよね。
当然、プロジェクトの守秘義務もあるので、隠すべきところはしっかり隠して、情報が外部に漏らさないように徹底しています。
三浦氏:毎月2つのケーススタディをやり続けるのは、かなりトレーニングになりますね。他には何かやっていることってありますか?
関氏:ビジネススキルの観点でいうと、先ほどお話ししたようなケースの共有以外にLiBユニバーシティという社内大学があって、世界のトップビジネススクールのMBAホルダーである役員・社員が講師となって、理論と現場ノウハウを指導する場もあります。
マインドを鍛える
関氏:あと、マインド研修というものがあって、経営者と向き合う時の発想方法や考え方をトレーニングする研修をやっています。コンサルタントって3〜4年目くらいまではロジカルシンキングとかコミュニケーション能力とか、いわゆる汎用スキルを鍛えるのが一般的だと思うんですけど、4年目くらいになると「自分の強みをどう磨くか」といったことも重要になってくるんですよね。なので、我々の研修では、キャリアのフェーズに合わせて、その時に必要な考え方やインプットの仕方、自分なりの整理の仕方などを学べる機会を設けています。
採用について
三浦氏:最後のテーマとして、御社の採用についてお聞きしたいと思います。御社にフィットする方の特徴を教えていただけますか?
関氏:論理的思考力やコミュニケーション能力はもちろんですが、我々の場合、「結果を出す」というところにちゃんと向き合ったことがある人ですね。理屈で考えることと、結果を出すまで実行するっていう両面をしっかりやった人がすごく活躍している傾向があります。
三浦氏:ご入社される方のバックグラウンドとして共通する部分などありますか?
関氏:もっと経営の幅を広げてクライアントに貢献したいという方は多いですね。前職でBtoBビジネスをやっていた人たちでいえば、例えば金融系の人はお金関連、人材系だと人関連、広告代理店だとマーケティングやプロモーション関連における特定の課題のみしか解決できないような悩みを抱えている方は多いです。
あとは、全業種共通しますが、前職で周囲から優秀と言われているものの、本人としては成長の度合いが落ちてきている実感があって、もっと高いレベルで挑戦してみたいという方も多いです。こういった層は、最初は優秀な人が集まるという点でコンサルファームを目指すんですけど、結果を出してきた人からすると、自分の経験してきた領域のプロジェクトであれば、場合によっては元の会社より簡単そうに思えることも多いみたいです。対して、コンサルファームの中でも我々の場合は向き合う相手がアントレプレナーやオーナー経営者になるので、そういった部分で成長できそうだと思ってもらえてるのはありますね。
三浦氏:社員の方の満足度はどのような状況でしょうか?
関氏:リンクアンドモチベーション社の調査によると、社員のエンゲージメントスコアとしては、調査対象100〜300名規模の企業で上位3%くらいのポジションという評価をいただいてます。直近、コロナで対面でのコミュニケーションが減っている影響もあり、短期的に少し下がっているものの、全体としては年々上昇している状況です。コンサルタントって、労働時間や業務のプレッシャーっていう面では結構高い分野だと思うので、そういう意味ではよくやってる方だとは思います。
三浦氏:すごいですね!相当な努力をされていると思うんですが、どういうことを心がけてますか?
関氏:「働きやすさ」という点でいうと、我々もベンチャー企業なので大手に比べると劣る部分もあるかもしれませんが、「働きがい」についてはすごく考えてますね。
具体的には、経営理念に基づいた会社運営をしているのと、業務内容としてリーダーシップをとっている人たちと高いレベルで働けること、あと、社内的なつながりという意味で先ほどお話ししたような皆で学び合うことも大切にしています。これらは社員の「働きがい」につながっていると思います。
三浦氏:なるほど。そういった取り組みが、突出した従業員満足度につながっているのですね。御社はGreat Place to Work®︎ Intitute Japanの「働きがい認定企業」に8年連続で選出されていますし、非常に説得力があると感じました。
リブ・コンサルティング社のエントランスに置かれた「働きがい認定企業」トロフィー
三浦氏:最後に、御社にこれからご入社される方が、御社に期待できることを教えていただけますか?
関氏:社内外ともに、想いを持っている人たちと一緒に仕事ができるのと、自分自身にも、周囲に対しても誇れるプロジェクトをやれると思います。もちろん、アントレプレナーやオーナー経営者と向き合って結果を出すことは簡単ではありませんが、すごく刺激を受けると思いますし、覚悟をもって飛び込んでもらえれば、成長の点で後悔させることはないってことだけはいえますね。
三浦氏:ありがとうございます。本日はお話しお伺いできて良かったです。業界の中でかなりユニークな立場をとられているとは思っていたんですけど、お話しお聞きして御社への理解が深まりましたし、これからもクライアントのニーズに応えながら突き進んでいくだろうなっていうことをすごく実感しました。