2021.12.07 医療/製薬DX事例【2021年版】|売上高トップ5社の最新DX事例・取組みまとめ
今回のコラムでは、医療業界におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みについてご紹介します。近年では、あらゆる業種でDXへの取り組みが推進されており、製薬業界も例外ではありません。特に、逼迫する医療財政、高齢化対策など喫緊のテーマを抱えております。しかしながら、行政によるICT化投資支援、規制緩和が進み、デジタル活用の機運が高まっています。そこで今回は、DXの必要性がますます高まる中、各製薬のIR資料を参照しながら、「製薬業界の最新DX事情」についてシェアしていきたいと思います。
※売上高:2021年3月時点
目次
・医療/製薬業界の最新DX事例・取組み|売上トップ5社
- 1位:武田薬品工業
- 2位:住友化学
- 3位:大塚ホールディングス
- 4位:アステラス製薬
- 5位:第一三共
・まとめ
医療/製薬業界の最新DX事例・取組み|売上トップ5社
製薬売上高トップ5社のDX事例や取組みをまとめました。各社の戦略とあわせて、参考ページもまとめているので、ご一読ください。
1位:武田薬品工業
最初に、製薬売上高1位の武田薬品工業(3兆1,978億円)のDX事例です。
武田薬品工業のプレスリリースには以下のような記載があり、戦略上、DXに力を入れていることが伺い知れます。
“武田薬品工業の代表取締役社長CEOであるクリストフ・ウェバーは、「3社の力を結集することにより、当社は、人々の健康、テクノロジー、ビジネスの成長の融合を目指して果敢に行動します。私のビジョンは、今後10年以内に、当社の従業員全員が人工知能をより良い判断の手助けとなるように活用し、革新的な治療薬や体験をこれまで以上に迅速に患者さんや医師、医療費を支払う人たちに提供できるようになることです。アクセンチュアおよびAWSとの提携により、当社がこれまで単独で進めてきたことをさらに前進させ、このビジョンを実現します」と述べています。“
※出典:「プレスリリース:武田薬品工業、アクセンチュアおよびAWSと提携し、デジタル変革を加速」
武田薬品工業のDXの取組みについて、詳細が知りたい方には、以下のページが参考になります。
武田薬品、アクセンチュアおよびAWSと提携し、デジタル変革を加速
2位:住友化学
製薬売上高2位の住友化学(2兆2,869億円)のDX事例です。
住友化学は、デジタル化をより加速させることで、業務プロセスの生産性向上や新しい価値の提供を目指しています。
DX戦略マイルストーン
以下、住友化学が掲げるDX戦略マイルストーンの概要です。
・DX戦略1.0
- デジタル4領域の生産性向上
- プロセス効率化による余力創出・オペレーションコスト削減
- 機能・業務の高度化/効率化、ベストプラクティスの横展開
・DX戦略2.0
- 既存事業の競争力確保
- 顧客接点強化・顧客満足度向上のよる付加価値創出、シェア・売上拡大
- 機能を跨ぐサプライチェーン全体の最適化
・DX戦略3.0
- 新たなビジネスモデルの実現
- コア技術・サービス・データを活かした新規ビジネスモデル創出
- DX先進企業としての企業価値向上
※出典:「住友化学レポート2021」P32-36
住友化学株式会社のDX取組みについて、詳細が知りたい方には以下のページが参考になります。
「住友化学化学レポート2021」P32-36
3位:大塚ホールディングス
製薬売上高3位の大塚ホールディングス(1兆4,228億円)のDX事例です。
大塚ホールディングスは、「デジタルヘルスソーシャル」「治療用アプリ」「デジタルメディスン」により、医療の最適化の実現に向けて動き出しています。
医療関連事業
“精神・神経領域の専門知識・経験と先端デジタル技術との組み合わせにより、医療を取り巻く課題に対する包括的なソリューションの提供を目指し、さまざまな革新的な取り組みを進めています。世界初のデジタルメディスン「Abilify MyCite®」は、服薬や活動の状況を把握することで、患者さんと介護者および医療従事者のコミュニケーションを促進し、より適した治療の選択に貢献します。大塚製薬が日本IBMと共同開発した「MENTAT®」は、精神科カルテの9割を占める文字情報をテキストマイニング技術*1で分析し、患者さんへの最適なアプローチを支援する電子カルテ分析ソリューションです”
※出典:「IR資料:TAISEI VISION 2030 中期経営計画(2021-2023)」
大塚ホールディングス株式会社のDXの取組みについて、詳細が知りたい方には以下のページが参考になります。
「第3次中期経営計画」P19
「統合報告書2020」P41
世界初のデジタルメディスン「エビリファイ マイサイト(Abilify MyCite®)」 米国承認
4位:アステラス製薬
製薬売上高4位のアステラス製薬(1兆2,495億円)のDX事例です。
アステラス製薬は、「変化する医療の最先端に立ち、科学の進歩を患者さんの価値
に変える」をVisionとし、創薬化学で培われた技術とデジタルの活用で、新たなヘルスケアソリューションを生み出しています。ここではアステラス製薬が推進するヘルスケアソリューションについて、いくつかご紹介します。
・バイオエレクトロニクス(極小埋め込み型医療機器」
・デジタルヘルス・デジタルセラピューティクス
- 疾患マネジメントデジタルプラットフォーム
- ゲーミフィケーションと3D 加速度センサー技術を連携した運動支援スマートフォンアプリ
・自社技術と新たな医療技術融合(自社技術(抗体など)と新たな医療技術(光学、放射線、ナノマテリアルなど)の融合により創出)
※出典:「IR資料:中期経営計画(2019-2023)」
アステラス製薬のDXの取組みについて、詳細が知りたい方には以下のページが参考になります。
「デジタルヘルス領域における投資会社DigiTx PartnersをMPM Capitalと共同で設立」
「アステラス製薬のデータ駆動型創薬とデジタルトランスフォーメーションの推進」
「Astellas Rx+® DAY~治療薬ビジネスのその先~」
5位:第一三共
製薬売上高5位の第一三共(9,625億円)のDX事例です。
第一三共は、中期経営計画の戦略の柱を支えるため、DXにも力を入れています。データ駆動型の経営の実践や、先進デジタル技術を活用した全社変革だけではなく、これらを推進していくための必要な基盤整備も拡充させています。
中期経営計画の戦略の柱を支えるDXの取組み
第一三共のDXの取組みをいくつかご紹介いたします。
・データ駆動型経営
- データ活用で新たな提供価値を創出(人工知能、統合データ)
・先進デジタル技術による全社変革
- “人”前提から人×デジタル技術の創薬/開発/生産/営業プロセスを変革し、迅速により高い価値を提供(人工知能、ビッグデータ、ロボティクス、ブロックチェーン)
・DXによる全社変革推進のための基盤整備
- IT基盤
- 組織基盤
- 人材基盤の拡充
※出典:「バリューレポート2021」P3-8、P45-46
第一三共のDXの取組みについて、詳細が知りたい方には以下のページが参考になります。
まとめ
今回は医療業界の中でも特に、製薬売上高トップ5社にスポットをあてた形で、各社のDX事例/取組みをまとめてみました。医療業界では急速にDXが広がっており、各社の戦略においてもDXの重要性が伺えます。デジタル技術の変化は早く、業界に携わる方にとって日々の情報収集は大変だと思いますが、今後も製薬企業とIT企業などの協業によって創造される、新たな医療の形に注目していきましょう。少しでも皆さんのお役に立つような記事を発信していきたいと思います。