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2021.11.02 SDGsの取り組み事例(海外)|SDGsの定義からGAFA事例まで解説

SDGSの取り組み事例(海外)|SDGSの定義からGAFA事例まで解説

最近、メディアでSDGsに関する記事を目にする機会が多くなりました。今回は、シリコンバレーを拠点に活動する著者の視点から、SDGsの取り組み事例として海外、特にGAFAなどの巨大IT企業の動向をはじめ、日本企業がSDGsに取り組むメリットについて解説します。

 

目次

・SDGsの定義
 - 17の大目標項目
・SDGsには169のターゲット(具体目標)が存在
・SDGsの取り組み事例(海外)
 - SDGsとESGの違い
 - GAFAなど米国巨大IT企業の気候変動対策
 - 2020年の新計画・コミットメント
・日本企業がSDGsに取り組むべきメリット
 - 世界で売れる商品を作ることができる
 - 世界的企業とのパートナーシップ
 - 海外機関投資家からの評価
・まとめ

 

 

SDGsの定義

SDGsは「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」の略称で、2015年9月の国連サミットで採択され、国連加盟の 193カ国が2030年までの15年間で達成することを目標にしています。内訳としては、2030年までに達成すべき17の目標を大きく示し、更に具体的な169のターゲットを示しています。

主な目標は、貧困をなくし、環境を保護し、すべての人が教育を受けられるようにすることに重点を置いています。

  

17の大目標項目

17の目標は以下の通りであり、下図のピクトグラムもよく見かけます。

SDGs
提供元:Unicef

1 貧困をなくそう

あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ

2 飢餓をゼロに

飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する

3 すべての人に健康と福祉を

あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する

4 質の高い教育をみんなに

すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する

5 ジェンダー平等を実現しよう

ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る

6 安全な水とトイレを世界中に

すべての人に水の確保と、衛生的な生活が送れるよう持続可能な管理をする

7 エネルギーをみんなに。そしてクリーンに

すべての人々に手頃で信頼でき、持続可能かつ近代的なエネ ルギーを使えるよう確保する

8 働きがいも経済成長も

すべての人のために包摂的かつ経済成長を持続できる生産的な完全雇用、およびディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進する

9 産業と技術革新の基盤を作ろう

強靭なインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、技術革新の拡大を図る

10 人や国の不平等をなくそう

国内および国家間の格差を是正する

11 住み続けられるまちづくりを

都市と居住地を包摂的に安全かつ強靭にし、それを持続可能にする

12 つくる責任、つかう責任

持続可能な生産と消費のパターンを確保する

13 気候変動に具体的な対策を

気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る

14 海の豊かさを守ろう

海洋と海洋資源を持続可能な開発のために保全し、持続可能な形で利用する

15 陸の豊かさも守ろう

陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および回復、ならびに生物多様性損失の阻止を図る

16 平和と公正をすべての人に

持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人に司法を提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する

17 パートナーシップで目標を達成しよう

持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する

  

上記のように、SDGsは実に多岐の分野にわたるテーマで目標が定義されています。

これらの目標は、経済発展、社会発展、環境保護、地球平和の分野で達成されるべきものです。目標を達成するためには世界中の強力なリーダーシップ、財源、技術革新、パートナーシップなどが必要です。

    

  

SDGsには169のターゲット(具体目標)が存在

SDGsには前述の17項目の大目標の下に、さらに169項目にわたる具体目標(Targets)が指定されています。

この具体目標のおかげで、漠然としている17の目標を2030年までに達成するには、具体的にどうしなければいけないか、という道順を理解することができます。

例えば、大項目12の「つくる責任・使う責任」では、“持続可能な生産と消費のパターンを確保する”という目標が指定されていますが、これだけでは個人として、また一企業として、具体的にどういった行動を取れば良いのか分かりにくいですね。

そこで、この大項目12の下の具体目標の一つに、「2020年までに合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質や全ての廃棄物の管理を実現し、健康や環境への悪影響を最小限にするため、大気や水、土壌へ放出される化学物質や廃棄物を大幅に削減する。」があります。

厳密にいうと、これでも、「大幅に削減する」などの表現は「具体的にどこまで削減すればいいのか」、という具体目標としては計測が難しいところはあります。

しかし、後述する米国の巨大 IT企業、いわゆるGAFAなどは、これを受けて2019年から2020年までの環境対策の発表の中で、対応策を明記している例が多いです。

例えば、環境に悪影響を与える化学物質や製品の原料などに関して、特にAppleなどハードウェア製品が売上の多くを占める企業では、環境上問題のある化学物質の特定や、その取り扱い方法・処理方法などに関してだけでも数十ページにわたる規定文書を公開し、かつ、サプライヤーや孫請けの製造メーカーを含め、こういった規定を遵守しているかどうかのアセスメントを行っています。

  

  

SDGsの取り組み事例(海外)

SDGsの取り組みは海外でも行われていますが、上記のSDGsのターゲットや詳細を見て、少し気付いたことがあります。

日本ではこの「SDGs」が検索キーワードとしても話題としても圧倒的に多いのですが、米国に住んでいると「ESG(Environmental, Social and Governance、環境・社会・ガバナンス)」という用語の方が、圧倒的に目にする機会が多いのです。

  

SDGsとESGの違い

おそらくこの違いがどこから来るのかというと、SDGsは国連が制定した包括的な国際協力案であり、この中には個人として努力する目標、企業の努力目標、及び国家や社会が目指すべき目標がすべて入っています。

例えば、第10の目標である「国内および国家間の格差を是正する」などは、世界的に取り組むべき目標ですが、一方で個々の企業が取り組む具体例としては、少しスケールが大きすぎるのではないでしょうか。

それに比べて米国企業が主に取り組んでいるESGはかなり具体的で、企業が目標として取り組むのに落とし込みやすい標語です。

米国の企業や機関投資家はこの辺りが現実的であり、まずは現実的に取り組める目標に注力しようということだと思います。また企業のみならず、投資家からも近年「この目標に取り組んでいる企業へ優先的に投資する」ケースが増えており、特に上場企業にとっては建前だけでなく、実際の資金調達・株価にも大きく影響する要素となっています。

 

GAFAなど米国巨大IT企業の気候変動対策

さて、筆者は長年米国に住み、主にサンフランシスコ近郊、シリコンバレーのビジネスに関わってきた経緯から、特にシリコンバレーを中心とする米国 IT企業の環境への取り組みについて馴染み深いです。そのため、ここでは特に米国のテクノロジー企業によるSDGsの取り組みについて解説したいと思います。

その中でも、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)またはGAFAM(Microsoftを含む)と呼ばれる、米国を代表する巨大テクノロジー企業に焦点をあて、それぞれの環境・炭素排出量削減に向けてのイニシアチブや実態をまとめてみました。

こういった巨大IT企業のエネルギー需要と排出量は、ビジネスモデルによって大きく異なります。GoogleやFacebookのような事業の殆どがほぼデジタル化された企業では、データセンターの電力使用が主なGHG(グリーンハウス・ガス)排出源となります。逆にハードウェア製造サプライチェーンや、世界各地に広がる物流・配送システムを持つ企業の筆頭がApple、Microsoftです。

この大手5社は、ITの巨大企業として事業規模・成長率ともにエネルギー消費量も多く、また業界への影響力も大きいこともあり、業界を率先して排出量を削減し、地球温暖化や気候変動の問題への取り組みが期待されています。

これまでにもこういった巨大テクノロジー企業は、環境・エネルギー問題に取り組んできており、特に再エネへの取り組みが早かったGoogleでは、2007年にカーボンニュートラルを達成したと発表しています。

また、GAFAM全体としても再生可能エネルギーの購入量は多く、2020年この大手5社は、計7.2ギガワットの再生可能エネルギーを調達しましたが、これは企業の再エネPPA(Power Purchase Agreement、電力購入契約)調達全体の約30%を占めています。

  

再生可能エネルギー企業向けPPA購入のトップ企業(2010-2020)

再生可能エネルギー企業向けPPA購入のトップ企業(2010-2020)
提供元:IEA

最近では更に気候変動が火急の問題との認識が高まっており、2020年前後に各社が2030年または2040年へ向けての大規模な計画やコミットメントを発表しています。

今回特に注目されるのは、計画の大きさと共に自社によるエネルギー消費だけではなく、サプライチェーン全体を通じての排出を抑えるための方針や対策が視野に入ってきている点です。

これにより、こういった大企業のサプライヤーであるエコシステムの様々な部分に影響することが予想され、特にサプライヤーである日本企業は、目標の遵守が重要であることの他に、ESG目標の早期達成により他企業(アジア諸国の他サプライヤー含む)に対して競争上優位になることも考えられます。

  

2020年の新計画・コミットメント

2019年の半ばから2020年にかけて、GAFAM各社が発表した新計画の主なものは以下の通りです。

 

  • ・Microsoftは2020年1月、2030年までにカーボンネガティブ[1]にする計画を発表。
  • ・Appleは2020年7月、2030年までに同社の事業だけではなく、製造サプライチェーン全体でカーボンニュートラルにする目標、コミットメントを発表。
  • ・Googleは2020年9月、2030年までにすべてのデータセンターとオフィスを24時間、炭素排出ゼロのエネルギーで運営する目標を発表。
  • ・Amazonは前年の2019年6月、2040年までにカーボンニュートラルにする目標を発表。
  • ・Facebookは2020年9月、2030年までにサプライヤーを含めた「バリューチェーン全体」の排出量をカーボンニュートラルにする目標を発表。

上記の中でも特に、Appleは自社製品のサプライチェーンまで含めて再生可能エネルギーでの製造とする指針を出し、サプライヤーへのコミットメント要求、また指導する方針を打ち出しています。

  

Appleの炭素排出量削減の歴史と計画
Appleの炭素排出量削減の歴史と計画

[1] 「カーボンニュートラル」よりさらに進み、GHG排出量よりも吸収量が多い状態

[1] https://www.iea.org/commentaries/5-ways-big-tech-could-have-big-impacts-on-clean-energy-transitions

  

日本企業がSDGsに取り組むべきメリット

日本企業には、持続可能な開発やSDGsを支援してきた長い歴史があります。また、GDPが5兆米ドルに達する世界3位の経済大国としての立場から見ても、日本の政府及び企業が今後ますます積極的にSDGsへ取り込む必要があるのはいうまでもありません。

ここでは、今後日本企業がSDGsへ取り組むメリットについて考えてみたいと思います。

特に、企業の社会的責任としての取り組みの他にも、SDGsを取り組むことで企業としての収益に大きく貢献する理由をいくつか述べます。

世界で売れる商品を作ることができる

前述のように、米国のGAFAなど巨大IT企業をはじめ先進国の大企業は、機関投資家や消費者よりSDGsまたはESGへの取り組みを厳しく監視・評価されており、自社の取り組みの他に取引先にもより厳しい基準を適用するよう求めています。

そのため日本企業もSDGsを取り組むことによって、こういった大企業との取引を拡大し、海外でも売れる商品やサービスを作ることができます。

 

世界的企業とのパートナーシップ

SDGsを取り組むことで、日本企業は同じくSDGsに取り組んでいる他国とのパートナーシップやジョイントベンチャーを通じて、世界の新しい市場にアクセスすることができます。 すなわち、国境を越えたさまざまなビジネスチャンスを見出す可能性が高まります。

  

海外機関投資家からの評価

これも前述のように、機関投資家はますます投資先企業のSDGsへの取り組みを高く評価し、また監視する傾向を強めています。なので積極的な取り組みは、その企業への投資が日本国内からだけでなく、欧米の先端的な投資家からの評価も高まり、ひいては株価への高評価・資本政策への好影響も期待されます。

  

  

まとめ

SDGsは、2030年までに達成可能な17の目標からなる野心的なセットで、貧困と飢餓の終焉、水や安全保障の確保、エネルギーへの普遍的なアクセスの提供、気候変動との闘い、持続可能な経済成長の促進、万人のための雇用の創出、国内および国家間の不平等の是正などが含まれています。これらの目標は、日本企業にとって課題であると同時にチャンスでもあります。ビジネスリーダーとして、また地球市民として、時間・専門知識・資本をもってこれらの取り組みに貢献することが重要であるため、より多くの日本企業がこの活動に参加することを願っています。

  

著者紹介

安藤千春/ Chako Ando

米国ベンチャー・イノベーションコンサルタント。シリコンバレーを拠点とし、米国の先端事例を参考に新規事業・米国ベンチャー提携・イノベーション手法・調査、投資案件、日本企業との橋渡しを業務として活動。Cando Advisors LLC 代表。

(経歴)スタンフォード大学経営大学院修士(MBA): 東京外国語大学英米語学科卒業。旧日本興業銀行サンフランシスコ支店にてベンチャー・ファンド投資、住友銀行キャピタル・マーケッツ(NY)にてデリバティブ部門、大和証券ニューヨーク現地法人にてM&A、企業提携を担当。松井証券などのオンライン株式トレーディング・システム開発ベンチャー、ファイテック研究所の設立に参加。

  

  

 

 

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