2017.11.17 ~INTERVIEW~ 経営共創基盤の10年【第3回】IGPIはなぜ「AIブーム」到来前から取り組むことができたのか
将来的に大量発生するデータを経営活用しなくてはならないと2010年から研究開始
聞き手:なぜIGPIはAIの会社「IGPIビジネスアナリティクス&インテリジェンス」(BAI)を立ち上げたのですか。
川上氏:BAIは最初から戦略的に準備して立ち上げたものではありませんでした。
AIブームがまだ来る前の2010年頃、海外企業ではすでに将来的に大量発生するデータにどう対応するか、という点が大きな関心事になっていました。しかし、日本企業はまだデータの活用ができてない会社が多く、この課題に対して経営の目線を持ってどうデータを活用していくのか、また、今後の進化や競争優位のためにどんなデータを取って企業を進化させるか、と考えていたのです。
当時の日本には「データ分析屋さん」と言われる人はいました。ただし、分析するのとビジネス上必要なデータを活用するのはまったく別問題。日本で探せば統計学の大家はいても、ビジネスのコンサルティングはできない。ビジネスの観点からデータを分析することをビジネスアナリティクス領域と呼んでいますが、日本ではそれができていませんでした。
だから、ビジネスの目線を持って経営の目線を持ってデータをどう活用していくのか、もしくは今後の進化のための競争優位を保つために、どういうデータを取得して、企業経営を進化させるか考えなければならないと考え2010年くらいから取り組みを始め、BAIはその延長線上にあります。当時は、今のようなAIのブームが来るとは思ってもいませんでした。
それからはデータやAIを案件の中で活用していきながら知見や実力を蓄積。徐々に内部体制も強化されてIGPIの社内でも大きな枠組みとなりました。そのままIGPIでの一つの事業部でも良かったかもしれません。でも、多くの企業へのAI領域の支援が必要と考え、AI領域の取り組みを強化すべく、2015年に新会社として設立に至りました。
AIが絶対に必要な時代が来ると予感して松尾氏を誘う
聞き手:川上さんはIGPI時代からのビジネスアナリティクスに関するコンサルティングや、BAIの設立、運営において、どのように関わってこられたのでしょうか。
川上氏:私はIGPI参画前、前職のGEコンシューマー・ファイナンス時代にデータサイエンスを駆使していました。金融事業だったこともあり、デフォルト率の判断などに当然使っていましたが、それだけではなくマーケティングなどにも活用していました。
例えば、顧客にダイレクトメールを送付するプロセスにおいても、属性なども含んだ大量のデータを読み取り、ダイレクトメールの返信率を上げ投下資本対効率を上げるにはどうすればよいかと、データに基づき改善するようなプロジェクトを行っていたわけです。
そういったGE時代の経験から、日本企業はビッグデータや、今でいうAIを活用することで、企業の経営はもっと進化するはずだ、データが活用するようになると考えていました。つまり、ビッグデータの解析や、AIの活用が必要な時代は来ると予感はしていました。
そこにちょうど2010年当時はまだ無名だった東京大学の松尾豊氏との出会いがあったのです。
AIの共同研究をすれば、ビジネスデータをもっとうまく処理し、経営に活用できるようになると考えたのです。だから、松尾さんと研究室の優秀な学生たちと共同研究をしようと誘いました。そこからは、松尾研究室との共同研究や実際のビジネスアナリティクス関連のコンサル案件を扱いながらBAI内部で実力を蓄積させていきました。
ヒトがいて、機会があれば、枠にとらわれず、アクセルを踏むのがIGPI
聞き手:川上さんから見てIGPIとはどんな会社でしょうか。
川上氏:IGPIは自身の事業領域を特に決めていません。IGPIの経営理念に合致し、それが事業として成立すると思えば、進めて行きます。
BAIを始めたのも、最初から戦略的にどこを攻めるのかを決めていたわけではなく、必ず必要になるという市場のニーズ、そこに興味と能力を持つ人材がいたから、その領域にビジネスを広げていっただけです。パートナー陣も、それぞれ、自らがどんな素養や興味があって、それがどうすれば花開くのかということを考え、経営やビジネスにアンテナを張り巡らせて常に動いています。
機会があって、人がいれば、迷わずにアクセルを踏む。だからIGPIはチャンスが来た時にそれを形にできるのではないでしょうか。
10年後、IGPIがどのような事業をやっているかは分かりません。(笑)
コンサル業界ニュース
編集部による取材
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