2017.11.13 ~INTERVIEW~ 経営共創基盤の10年【第2回】IGPIが投資ファンドとは異なる投資主体である理由
企業に対し経営アドバイスも資金も提供できるのがIGPI
聞き手:なるほど。とはいえ、IGPIはコンサルの色も強く感じ、PEファンドを作った・・・ということでもないようですが、そこはどういう整理をすればよろしいでしょうか?
塩野氏:IGPIは分かりにくい形態だと外部から言われます。コンサルティングも自己投資もする。しかも、非上場なので情報を開示する義務もないため分かりにくい
実態としてはマービン・バウアーの時代同様に、本物のパートナーシップ形態のファームです。その形態をもう少し説明すると、株式会社の形をとったファンドのような会社がIGPIだと言えます。
どういう事かというと、資本金の出し手は26社の大企業が中心なので株式会社です。ただし、資本金の出し手の大企業の保有する優先株には議決権はなく経営の意思決定は私のような19人のIGPIのパートナー(共同経営者)で行っています。また通常は、PEファンドは機関投資家から償還期限のあるファンド形式で投資資金を集めますがIGPIはその形をとっていないので、PEファンドではありません。
そのためにPEファンドのように短期的な償還期限がなく、長期投資ができるのです。例えばバス会社などの公共交通インフラ、地方の再生案件などは一般的なPEファンドのように「5年で売却」などの制約があると、株式を譲渡してもらうのは困難です。しかし、IGPIは売却でEXITすることなく長期保有できるのでPEファンドなどが買いにくいような案件への投資も可能となります。
そして株式会社の形で集めた資金と、コンサルティング、M&Aアドバイザリーで蓄えた知見、それに加えて経営人材をIGPIの企業ポリシーに合う会社に国内外で投資し利益を出せるようにしているファームがIGPIなのです。ですので、一部総合商社の投資業務に似ている部分もあるかも知れません。
普通のVCやPEが大挙して追いかけるような投資案件はIGPIはやらない
聞き手:投資も行っているということであれば、「投資スタンス」みたいなものがあると思いますが、基本的な事業投資スタンスを教えてください。
塩野氏:まず投資対象は経営改善によって安定的なキャッシュフロー(利益)が取れるようになるビジネスか、世界を変えるかもしれない技術やイノベーションのある面白いサービスです。
前者のビジネスでIGPIが投資している代表的な会社には、みちのりホールディングスがあります。これは北関東・東北地方のバス会社ですが、地元の方々が利用する公共交通インフラビジネスなのでキャッシュフローが安定しています。
後者のハイテク技術で言えば「ユニフィニティー」という会社。ここのアプリ開発プラットフォーム「Unifinity」(ユニフィニティ)を使うことで、プログラミング知識がなくてもコードを書かずに様々なOSのアプリを作ることができるようになります。元IBMの稲垣社長が考案したのですが、現在はNTTドコモの社内システムを構築してきたドコモ・システムズ社にも採用されています。
上場等で儲かるかも知れなくてもイノベーションのエッジの無い案件には投資しません。また、多くのPEがオークションで入札したがるような有名企業も、価格が上がり過ぎて企業価値を正当化できない場合が多く、投資対象ではありません。