2017.11.13 ~INTERVIEW~ 経営共創基盤の10年【第2回】IGPIが投資ファンドとは異なる投資主体である理由
経営共創基盤(IGPI)は設立以来、経営のプロフェッショナルを輩出することを目的に、コンサルティングだけではなく企業投資も積極的に行い、成果を上げることで世の中から注目される機会も増えている。ただIGPIは投資ファンドなのかというとそうでもない。
IGPIは既存のコンサルファーム、プライベートエクイティファンド(PEファンド)、事業会社のどれにもあてはまらない独自のポジションに位置する。そこはIGPI独自の組織論や投資スタンスを解き明かしてみないとわかりにくいのではないだろうか。過去に投資銀行でM&Aや投資アドバイザリーを行い、戦略コンサルティングファームで企業へのアドバイスを行ってきた後、経営共創基盤に参画した取締役マネージングディレクターを務める塩野誠氏に話を聞いた。
IGPIは普通のコンサルファームでもプライベートエクイティでもない会社
聞き手(コンサル業界ニュース):IGPIは既存のコンサルファーム、プライベートエクイティファンド(PEファンド)、事業会社のどれにもあてはまらない独自のポジションに位置すると思います。それだけユニークな存在ですが、これまでのコンサル業界の枠組みの中で、どのように捉えればいいのでしょうか。
IGPI塩野誠氏(以下塩野氏):経営共創基盤(IGPI)の目的は「経営人材を輩出すること」。この考え方がコアにありますが、その話をする前に、IGPIの活動や事業投資の考え方について、コンサル業界の成り立ちなども話しながら説明したいと思います。
IGPIは100億円を越える資本を集めて、自己資金で企業投資をしています。投資業務でいえばPEファンドではない株式会社の形をとったPEやVCファンドのような会社です。
経営コンサルティングのビジネスモデルは元々、マッキンゼーのマービン・バウアーが法律事務所の組織や概念をマネジメントの分野に持ち込んだことが始まりです。法律事務所と同じように経営に関するコンサルティング業務においても顧客第一といった行動規範や職業倫理を確立し、それを忠実に守ることで、コンサルタントを弁護士と同じように人々から敬意を払われるような専門的な職業に変えました。
歴史を経るごとにコンサルファームは巨大化し、米国発からグローバルに展開していくようになります。そして「もっと儲けたい」という誘惑もあり、巨大化しコンサルタントの機能や業界を分け始めたり、また、ITシステムを売る「物売り」にたどり着く会社も現れ始めました。特に会計に強いコンサルタント、ITに強いコンサルタントなど機能を特化させ、より効率的に企業の経営課題に対処できるようにしたのです。
しかし、いずれにしてもコンサルタントは弁護士同様に「頭がいい人がやる、最も頭が悪い商売」と言われるように、自分の保有する時間が報酬を規定する仕事です。
それでもコンサルティングというビジネスを大きくする方法として、スタッフを増やす方法はあります。そのため、上場して資金調達し、大量採用によって高級人材派遣業のようにビジネスを大きくする方向に動いているコンサルファームもあります。
また、マネジメントのノウハウにレバレッジをかける方法もあります。どういうことかというと、資本を集めてリスクを取って事業に投資してリターンを得る方法です。それが、コンサルタントが次のキャリアとしてPEファンドに行きたがる理由の一つです。
PEファンドは投資先企業にお金を張って、経営ノウハウや人材を投入。負債のレバレッジ等によって企業価値を上げて、キャッシュフローによる配当や株式売却によって投資リターンをつくり出します。
プロフィール:塩野誠氏 慶應義塾大学法学部卒、ワシントン大学ロースクール法学修士。シティバンク銀行、ゴールドマン・サックス証券、ベイン&カンパニー、ライブドアを経てIGPI参画。国内外において企業や政府機関に対し戦略立案・実行のコンサルティング、M&Aアドバイザリー業務を行い、企業投資も10年以上の経験を持つ。近年ではAI/IoT領域において大企業の全社戦略や事業開発のプロジェクトを多く手掛け、政府関連委員も務める。IGPIビジネスアナリティクス&インテリジェンス代表取締役、JBIC IG Partners代表取締役CIO、人工知能学会倫理委員会委員。