2017.11.07 ~INTERVIEW~ 経営共創基盤の10年【第1回 】新しい形態のファームを目指してきた10年
聞き手:社員は200名まで増えたと聞きますが、どんな人が集まっていますか?
村岡氏:当社に勤めるプロフェッショナルについて話しますと、先にも述べた通り、マネジメントのプロフェッショナルになりたい人の集団となっています。
戦略や組織設計だけではなく、法律、財務アドバイザー、労務や資金繰りまで設計し実行できるプロフェッショナルを目指しています。このような多岐にわたる業務の経験や知識がないと、将来、経営者になったときに、机上の空論の経営になりかねない。遅くとも30歳台半ばまでに経験しておかないと、日本でもグローバルでも通用しません。
そのためには数年間の基礎作りを経次第20歳台後半からは企業の経営に近い所で仕事をしてもらいたい。だから大企業ではなく、中堅企業やベンチャーで経営に近い所で色々な経験をする。大企業で必要とされる100枚の資料を作ることよりも、3枚の資料でいいから、お客さんの所へ行ってお客さんを動かす事の方が重要です。
さらに言うと、極端な話、自分で会社を潰してしまう修羅場経験とか、止む無く部下に退職を迫る経験とか、個人保証で銀行からお金を借りて銀行と揉める経験等が将来の財産になります。日本ではなかなかそんな経験ができないし、経営したときのコストも大きいので修羅場の疑似体験ができるプラットフォームを作りたいと考えています。
分析資料を作ることも重要ですが、人を動かすことや、経営のエグゼキューションの方がはるかに難しい。若いうちに経験を積ませないと、日本でプロ経営者は育ちません。
プロフィール:村岡隆史氏 三和銀行でM&A業務などに従事。モルガンスタンレー証券で投資銀行業務に従事した後、産業再生機構に参画。三井鉱山、ミサワホーム、ミヤノ、ダイエーなどの案件を統括。金融庁専門調査官などを経てIGPIを設立し現在に至る。IGPIでは事業再生のほか、アジアでのM&Aや成長戦略立案プロジェクトを多数統括。金融庁参与、新日本工機社外取締役、産業革新機構社外取締役。東京大学農学部卒、UCLA 経営学修士(MBA)
IGPIの今後は必ずしも代表が戦略を描いているわけではない
聞き手:今後の10年にも大いに期待が集まりますが、どのような戦略・方向性を考えていますでしょうか?
村岡氏:冨山和彦CEOも私もそうですが、代表が戦略を描くわけではありません。当社で働く社員が「何をやりたいか」です。
経営共創基盤は、文字通り「プラットフォーム(基盤)」だと考えています。今はパートナーが中心にやりたいテーマを考えていますが、パートナーに限らず自分がやりたいことを、経営共創基盤というプラットフォームを使って社内起業する感じ。
パートナーには新しいことをやらない人、際立っていない人はいない。今後パートナーを増やす時も、現在の19人にできないことをやる人、やりたい人を選びます。
パートナー会議で「私はこの事業やりたいからいくら出してくれ」と提案し、事業計画を議論し磨き上げ、OKが出れば事業としてヒトとカネ投資していきます。そうやって、IGPIの次の10年が作られていくのです。
例えば、先に話したみちのりホールディングスにしても、戦略的にやろうと始めたわけではなく、現在の代表取締役の松本順氏が自ら提案しここまで実行してきました。社内では「なぜ地方の公共交通に投資するのか」という議論はありましたが、みんなで侃々諤々(かんかんがくがく)やって、福島交通、茨城交通と支援していくうちに大きくなってきた経緯があります。