2018.01.10 ~INTERVIEW~A.T.カーニー石田真康が歩む戦略コンサルタントと宇宙ビジネス活動という2つの世界
A.T. カーニーで戦略コンサルタントとして10年以上在籍している石田真康氏。内閣府宇宙政策委員会特別委員、一般社団法人「スペースタイド」共同創業者兼代表理事、宇宙開発チーム「HAKUTO」(ハクト)プロボノメンバーという肩書も持ち、WEBメディアで月1回「宇宙ビジネスの新潮流」という連載も持つ、稀有なコンサルタントだ。
宇宙ビジネスに取り組むきっかけ。それは、30歳を手前に病に倒れた時、少年時代に抱いた宇宙への憧れを思い返したことだった。石田氏は戦略コンサルタントとして活動しながらどのように宇宙ビジネスに取り組んでいるのか語ってもらった。
2012年から週末ボランティアを始め5年目。宇宙産業を拡大させたい
聞き手(コンサル業界ニュース):石田さんは、宇宙ビジネスに関する活動はどのような事をされてきたのでしょうか。
A.T. カーニー石田真康氏(以下石田氏):2012年から週末を使い、本業のコンサルとは別の活動として、最初は、民間による月面無人探査を目指す宇宙開発チーム「HAKUTO(ハクト)」での活動にプロボノメンバーとして混ぜてもらう所から始まりました。2014年からはWEBメディアで連載を持たせてもらうようにもなりました。
内閣府の方がWEBメディアでの連載を読んでくれていたことがきっかけで声が掛かり、2015年からは政府の宇宙政策委員会の宇宙民生利用部会で委員をさせていただいています。
また2015年には、日本に宇宙ビジネスに関わるプレイヤーが一堂に会するプラットフォームを創りたいと考え、同じ想いを持つ仲間たちで「スペースタイド」を立ち上げました。日本初の民間による宇宙ビジネスカンファレンス「スペースタイド2015」は内閣府も協力していただき官民共催で行うことができました。国内外の宇宙ベンチャー、投資家、政府関係者、大手企業の方々など約500人が出席、またWEBの同時中継でも2000人くらいが閲覧してくれて盛況でした。TVの報道番組も取材も入り、各方面の反応は予想以上でしたね。その後2017年には第二回目となる「スペースタイド2017」を主催しました。
日本の宇宙ベンチャーは、現在は20-30社程ですが、色々な方と連携してこのまま宇宙産業を盛り上げていけば、どんどんプレイヤーの数も増えて、産業として大きくなる可能性があるのではないかと感じています。だから今後も可能性を追求していこうとしているのが、今までの活動の流れです。
プロフィール:石田真康氏 ハイテク・IT業界、自動車業界などを中心に、15年のコンサルティング経験。東京大学工学部卒。内閣府 宇宙政策委員会 宇宙民生利用部会 委員。一般社団法人SPACETIDE共同創業者 兼 代表理事。日本発の民間月面無人探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」のプロボノメンバー。著書に「宇宙ビジネス入門 Newspace革命の全貌」(日経BP社)。
病床から少年時代に憧れていた宇宙への想いを再び思い出す
聞き手:そもそも始めるきっかけは何だったのか、また、なぜそこまで宇宙ビジネス産業の振興に力を入れているのですか。
石田氏:29歳の時に病気をしてその後数年リハビリをする中、人生を見つめ返したことがきっかけです。
更に、その時期にちょうど東日本大震災が発生。「いつ死ぬのかわからないのが人生だ」と思い至るようになり、「いつか死ぬのであれば悔いなく生きたい」と考えるようになりました。これまでの人生を思い返してみて、やり残していることはないかと問い直したところ、幼少期に憧れた宇宙を思い出しました。
小学生の時、星座に興味を持ち天文部に入り、宇宙飛行士になることを夢見ました。大学生の頃の就職活動でも宇宙関係機関などを回りましたが、最終的には、A.T. カーニーに就職。それから10年は、仕事は多忙ながらも充実していたこともあって宇宙のことは忘れていました。
でも、入院中にたまたま読んだ雑誌にハクトが特集されていました。「これだ!」と思って退院後すぐに連絡。ハクトの活動に混ぜてもらったことがきっかけで、宇宙に関わるようになりました。そして週末ボランティアはその後も続いています。
宇宙産業はイノベーションのど真ん中にある世界だと感じ取った
聞き手:実際に活動してみて、宇宙ビジネスについてどのように感じていますか。
石田氏:世界の宇宙産業はまさにイノベーションのど真ん中にあるといえます。私は経営コンサルタントとして自動車産業をメインの担当にしていますが、状況がすごくよく似ているのです。
ご存知かもしれませんが、今の自動車業界は、コネクティッド化、自動運転化、電動化、サービス化といったメガトレンドが起きており、例えばグーグルや他の産業からも色々なプレイヤーが参入して産業構造に大きな変化が起きようとしていますが、宇宙もまさにそんな感じです。歴史的には政府主導の宇宙開発プロジェクトが中心でしたが、ここ20年の間に大きく変わり、ベンチャー企業やIT企業などの新しい民間のプレイヤーが参加して、新しい生態系が出来つつあります。もし私が従来の宇宙産業の世界の中にいたら、その世界の慣習に囚われて、イノベーションの匂いを感じなかったかもしれません。私が外の世界にいたからこそ強く感じるものがあると思います。
また、2013年にはハクトが参加するレース「Google Lunar XPRIZE」(賞金総額3000万ドルの民間による月面無人探査レース)に参戦する全チームが出席したチリの会合にも行きました。Googleがスポンサーをしている事自体も驚きでしたし、何より世界から参加している宇宙ベンチャーの方々がとても尖っていたのが印象的でした。世界にはこんな人たちがこれほどにもいるのだと肌身で感じました。
他にも米国の宇宙カンファレンスに行きましたが、そこでは宇宙関連ベンチャー、NASA、大手企業、ベンチャーキャピタルなどが一堂に会して宇宙ビジネスについて数日間議論したりネットワーキングをします。ニュースでしか見る機会がない有名な人たちもたくさん出席していて、すごい熱気でした。
そういったリアリティある体験を通じ、コンサルタント云々というよりも、一人の個人として、宇宙産業に対し非常に強い可能性を感じています。
様々な活動を含めてA.T. カーニーはファームとして活動を支援
聞き手:宇宙活動について、A.T. カーニーには活動支援をしていただいているのでしょうか。
石田氏:ファームは宇宙ビジネス活動を意義ある活動として認めています。だから、私はこれまで話ししたような様々な活動をしています。また、そうした社外活動を行ってきた結果として、A.T. カーニーのコンサルタントとしての私に相談をいただく機会も増えてきています。時間はかかりますが、産業全体が大きくなれば、様々なビジネスチャンスが生まれると思います。
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