2021.12.22 米国企業の金融動向 |コロナの影響や今後の動向について解説
シリコンバレーにある有名IT企業をはじめ、有力な企業が集まり、世界における経済の中心国であるアメリカ。 アメリカのGDPは、戦後から2019年まで順調に成長していましたが、新型コロナウイルスの影響により、米国の株式市場・経済は大きな打撃を受けました。
ポストコロナと言われる2022年、アメリカ経済の動向は、どのようになるのでしょうか? この記事では、過去と2022年以降における米国企業の金融動向を考察します。
1)米企業の金融動向:コロナによる影響は?
2020 年における米国経済の実質GDPの成長率は、-3.5%を記録しました。これは、戦後直後以来の74年間で、初となるマイナス成長となっています。なお、日本のGDP成長率も、前年度比-4.6%となっており、やはり新型コロナが世界の経済界へ与えた影響は甚大と言えるでしょう。
項目別に見て大きな下げ幅を記録しているのは、個人消費、投資、輸出といった3つの項目です。これは、ロックダウンの影響により人々の外出が減ったことや、情勢不安による投資意欲衰退が原因だと考えられます。また、失業率が戦後最悪の水準に達したことも大きく影響しています。
加えて、新型コロナウイルスの影響には、2つの特性が見られます。人々が消費や外出を控える需要型ショックの特性とともに、工場などの製造現場において人々が労働できずに経済活動を抑制する供給型ショックの特性を持ち合わせています。
2020年以降、アメリカの消費者が非接触型の消費に順応し、ネットショッピングでの売上とともに、小売り全体の売上も増加していることは、経済回復において注目されるポイントです。しかし、依然として、宿泊業や飲食業をはじめとした接触や対面で行われるサービス業は、新型コロナウイルス感染拡大前の水準を下回っており、回復の遅れが示唆されています。
参照:https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2021/pdf/01-02-01.pdf
2)コロナ終息後の動向は?
2021年には、2019年と比べてGDPが99%まで急速に回復を見せています。これは、ワクチン接種が進んだことにより、行動制限が緩和されたことが原因として考えられます。さらに、経済対策による追い風も加わり、2021年の実質GDP成長率は6.3%と躍進する見通しです。
また、2022年は、経済の立て直しや、家計貯蓄を取り崩す動きが停滞するものの、雇用状況の改善やインフラ投資が拡大されることにより、高いペースで成長が持続する見込みです。加えて、コロナが終息し不安が解消されれば、行動制限の緩和後にリベンジ消費や外国人観光客によるインバウンド消費の増加が予想されていたため、2022年のGDP成長率は4.2%になると予測されていました。
しかし、最近発見されたオミクロン株の影響により、大手投資銀行の「Goldman Sachs」はGDPの予測を3.8%に下方修正しています。その背景には、アメリカの中央銀行であるFRBが行った新型コロナの経済刺激を目的とした緩和策の維持による、インフレの加速があります。
事実、FRBのジェローム・パウエル議長も、11月末の議会で「インフレ上昇のリスクは高まっていると思う」と証言しました。
参照:
https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=38991
https://www.businessinsider.jp/post-241975
https://toyokeizai.net/articles/-/475478
3)米企業の今後
GAFAMをはじめとするシリコンバレーの企業は、経済再開とともにオフィス勤務を再開しました。「リモートワークは企業文化に合わない」とする会社がある一方で、「柔軟な働き方」を打ち出す企業へ転職するなど、在宅ワークを求める労働者が増加傾向です。それに伴い、短編動画アプリの「TikTok(ティックトック)」では、「#仕事辞めました」がトレンド入りしています。
同時に、在宅ワークを希望する社員の声を聞きいれ、一部在宅にする企業や、完全在宅を続ける企業も多数あります。とりわけ、テクノロジー業界は在宅ワークに前向きで、マイクロソフト、フェイスブック、ツイッターは、今後も永続的に在宅ワークを選択できるようにすると言っています。
さらに、コロナ禍において、アメリカではデジタルのスタートアップ企業が出現し、投資家から多くの注目を集めています。ポストコロナでは、旅行やライヴエンターテインメントといった個人消費が急激に拡大していく見込みで、若いスタートアップ企業はこのような動きに合わせて事業を立ち上げています。
「優秀な企業には適応させる力がある、適応できないものは消えていく」とは投資家が良く使う表現ですが、市場が盛り上がりを見せている現在、かつてないほど楽観論が高まっています。IT企業で海外進出を目指すなら、今が良いタイミングかもしれません。
参照:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN110FQ0R10C21A6000000/