M&A業界でコンサルタントとして独立するメリット・デメリットと注意点

更新日:11月8日


近年、経営者の高齢化や少子化による後継者不足事業承継の必要などからM&Aに至る企業が少なくありません。そのため、M&A市場は成長傾向にあり、M&Aコンサルタントの需要も増えています


本記事では、M&Aコンサルタントとして独立するメリット・デメリットや独立する方法を解説します。また、独立に必要なスキルや独立後の案件獲得方法、独立に失敗しないためのポイントも解説しますので、M&Aコンサルタントとして独立をお考えの方はぜひ参考にしてください。




目次




M&Aコンサルタントとして独立するメリット・デメリットとは?





M&Aコンサルタントは、企業がM&A(企業買収や企業合併)を円滑に進めるためのサポートを提供するコンサルタントです。M&A仲介会社からM&Aコンサルタントとして独立するケースが多く、営業力や財務・法務知識、経験が活かせます。


しかし、独立にはメリットだけでなくデメリットもあります。独立を後悔しないためにも、双方を理解しておきましょう。本章では、M&Aコンサルタントとして独立するメリットとデメリットを説明します。


M&Aコンサルタントとして独立するメリット


M&Aコンサルタントとして独立するメリットは、主に次の4つです。


  • 自由度の向上
  • 収入の上昇
  • 専門知識と経験を活かせる
  • クライアントとの直接的な関係構築

どのような利点があるのか、各メリットを具体的に解説します。


M&Aコンサルタントとして独立する最大のメリットは、自由度の向上です。なぜならM&A仲介会社から独立することで「会社」や「組織」に縛られずに、自分で稼働スケジュールを組んだりクライアントを選んだりできるためです。


一般に、M&A仲介会社での業務は高度な知見が求められます。また業務過多により、プライベートの時間が取れない、心身を病んでしまうなどのケースが少なくありません。


M&Aコンサルタントとして独立することで、自由度が向上され、ワークライフバランスを取りやすくなります。


収入が上昇することも、M&Aコンサルタントとして独立するメリットです。M&A仲介会社で勤務している場合は、M&A仲介会社にM&A成約手数料が入り、その多くが会社の取り分となります。


一方で、独立後は、自分のスキルや経験に応じて報酬を設定でき、成果に応じて収入を増やすことが可能です。


一般に、M&Aにおいては高度な知見が求められ、プロジェクト期間は半年から1年以上の長期に及びます。プロジェクトを通じた収入の内訳と相場は次の通りです。


収入の名称タイミングと相場
相談金相談を受ける際の収入。1回あたり数万円。相談料無料の大手M&A仲介会社もある
着手金コンサルティング契約の締結時の収入。100~200万円
コンサルティング料金契約から成約に至るまでのコンサルティングに対する定期的な収入。時間制、月額制など仲介会社、コンサルタントによって料金体系は異なる
デューデリジェンス費用買い手企業がデューデリジェンスを行う際の収入。200~300万円。一部では、着手金、コンサルティング料金などに含まれることもある
中間報酬買い手企業・売り手企業間で基本合意書が締結された際の収入。100万円程の固定報酬成約報酬の10~20%とする変動報酬などのパターンがある
成約時の成功報酬最終的にM&Aが締結された際の収入。買収額によりレーマン方式(取引額の金額帯によって手数料率が異なる計算式)で算出される

M&Aコンサルティングの収入の種類は、このように多岐にわたります。そのため、独立により収入の上昇が見込めます。


M&Aコンサルタントとして独立することで会計や税務、法務といった専門知識や経験を活かせます。なぜなら、M&Aコンサルタントの業務は、豊富な専門知識と経験を基に、対象企業のニーズに合わせた最適な戦略を策定して、戦略的なアドバイスを提供することだからです。


M&A仲介会社に所属している場合は、多様な業界・業種のクライアントを担当するのが一般的です。独立によって、これまで身につけた専門知識や幅広いスキルを最大限に活かすことができます。


クライアントに対して、的確なアドバイスを提供することでM&Aを成功に導けるため、やりがいも感じられます。


M&A仲介会社から独立することで、在籍時に比べてクライアントと直接的な関係を築ける機会が増えるのもメリットです。


個人でクライアントと直に接することで信頼関係を構築し、長期的なパートナーシップを築けます。良好な関係を構築できれば、紹介を受けるなど案件獲得の機会拡大も期待できます。


M&Aコンサルタントとして独立するデメリット


M&Aコンサルタントとして独立するデメリットは、主に次の2つです。


  • 費用がかかる
  • 競合他社による案件の取り合いの可能性

M&Aコンサルタントとして独立する際は、費用がかかります。在庫や設備が必要な職種ではないため、自宅で開業することも可能で、その場合には、初期費用を少額に抑えることができます。


ただし、開業届などの事務的な手数料は別途必要になります。会社設立をする際は、会社設立費用が約30万円かかります。また、案件獲得のためのWebサイトを作成する場合は、30~50万円ほどを見込みましょう。


また、すぐに案件を得られない可能性にも留意が必要です。3か月~半年ほどを目安に、当面の生活費を確保するなど費用面の準備をしてください。


M&Aコンサルタントとして独立する場合、ほかのコンサルタントやM&A仲介会社などの競合が存在します。独立後に案件を獲得し、ビジネスを進めるには自身のポジションを確立しましょう。


認知度を高めるためのブランディングや広告出稿など、クライアントに自分の専門性をアピールするためのマーケティング戦略を検討することも大切です。





M&Aコンサルタントとして独立する方法





M&Aコンサルタントとしての独立は、次の手順で進めます。順を追ってM&Aコンサルタントとして独立する準備を紹介します。


  1. 適性の確認
  2. 資金の準備
  3. 専門知識の確認
  4. 事業計画書の作成
  5. 独立に伴う行政手続き

1. 適性の確認


M&Aコンサルタントとして独立するにあたり、自分の適性を確認します。これまでの経験からM&Aを検討している企業に対して何を提供できるのか、得意な分野、スキルは何かを明確にしてください。後述するM&Aコンサルタントに必要なスキルがあるかを見極めましょう。


2. 資金の準備


独立に必要な資金と、仕事が軌道に乗るまでの生活費を確保します。先述の通り、独立後すぐに案件を獲得できるとは限りません。3か月~半年分など、独立後から収入が安定するまでの期間を考慮して準備しましょう。


3. 専門知識の確認


M&Aコンサルタントとして独立するには、M&Aにかかる専門知識が不可欠です。M&A仲介会社に在籍していなかった場合は、新たな知識習得が求められます。勉強会やセミナーに参加して情報収集を行い、同業者との交流を大切にしましょう。


また、M&Aに関わらず、コンサルタントとして業務を行うために必要な知識、スキルを習得することも重要です。これまでに営業経験がない場合にはコミュニケーションスキルを向上させるなど、自分の現況に応じたスキルアップも必要です。


4. 事業計画書の作成


M&Aコンサルタントとして活動するうえでの事業計画書を作成します。事業の方向性や目標、戦略を計画してください。


事業内容に限らず、収益モデルやマーケティング戦略を検討することも大切です。買い手企業や売り手企業といったクライアントのニーズや市場動向を分析し、自分の立ち位置を確定させてください。


5. 独立に伴う行政手続き


最後に、開業届や許認可、税金などの行政手続きなどを行います。開業の知識に欠ける場合は、弁護士や行政書士など専門家のアドバイスを受けることが望ましいです。





M&Aコンサルタントとして独立するために必要なスキル





M&Aコンサルタントとして独立するために必要なスキルは多岐にわたります。ここからは、M&Aコンサルタントとして独立する際に、特に重要なスキルとその習得方法を解説します。


  • 専門的な知識と経験
  • 業界理解
  • ヒアリング・ コミュニケーションスキル

専門的な知識と経験


M&Aコンサルタントには、M&Aを円滑に行うための財務や法務などの専門知識が必要です。


企業の財務状況を正確に評価し、適切なアドバイスを提供するスキルです。M&Aにおける企業価値を算出する際に欠かせません。


M&A契約やコンプライアンスについての法務知識も不可欠です。弁護士などの専門家までの深い知見を満たす必要はありませんが、M&Aに関連する法的要件を理解していることが求められます。


業界理解

M&A業界に対する市場理解や、競合他社の戦略などの把握も重要です。幅広い知識と相まって、クライアントからの信頼を得る基盤となります。多角的な視点からクライアントに最適な戦略を立て、効果的なアドバイスができるように業界理解を深めてください。


ヒアリング・ コミュニケーションスキル


M&Aを円満に成約するには戦略策定が欠かせません。そこで必要になるのが、クライアントのニーズや希望を把握するためのヒアリングスキルです。


また、売り手企業の価値を把握するためのデューデリジェンスや基本合意書の締結などでは、弁護士をはじめとする関係者との円滑なコミュニケーションが求められます。良好な関係を構築できるよう、コミュニケーションスキルを磨きましょう。





案件を獲得する方法





M&Aコンサルタントとしての独立後は、自分で新規案件を獲得する必要があります。ここからは、アウトバウンド型、インバウンド型の直接的な営業方法やエージェントなどを介在させる間接的な営業方法を解説します。


  • アウトバウンド型営業(プッシュ型)の案件獲得手法
  • インバウンド型営業(プル型)の案件獲得手法
  • 間接型の案件獲得手法

アウトバウンド型営業(プッシュ型)の案件獲得手法


アウトバウンド型営業とは、ターゲットに対して積極的にアプローチする手法です。具体的な方法に、飛び込み営業やテレアポがあります。自分で営業相手を選べる点がアウトバウンド型営業のメリットです。


飛び込み営業は、ターゲットのオフィスや店舗を訪問して、直接営業を行う方法です。ターゲットと対面して直接売り込める一方、時間や労力がかかります。


テレアポは、電話を通じてターゲットにアプローチする方法です。近年では、メールを活用してアプローチを行うメールマーケティングも実施されています。短時間で多くのターゲットにアプローチできる一方で、ターゲティングの精度が低いと契約に至る件数が低くなるデメリットもあります。


インバウンド型営業(プル型)の案件獲得手法


インバウンド型営業とは、ターゲットからのアクションを待つ営業手法で、Webサイトの運用や広告運用、SNSの活用などの方法があります。待ちの姿勢で効率的な案件獲得が可能です。


インバウンド型営業では、集客用のWebサイトを設置するのが主な手法です。M&Aに関するコンテンツを充実させ、SEO対策を行います。さらに、問合せフォームを設置しておくことで、Webサイトからの問い合わせにも対応できます。


インターネット上にWeb広告を出稿して案件を獲得するのも有用です。低予算からスタートでき、広告の効果を数値として測定できるため、費用対効果を考えながら計画的に運用できます。


FacebookやInstagram、Xなどのソーシャルメディアを活用してM&Aに関する情報を発信する営業方法です。ターゲットとのコミュニケーションを通じた関係構築や認知度の向上による問い合わせを促します。


間接型の案件獲得手法


人やサービスを介在させて案件を獲得する営業手法もあります。


以前の職場やこれまでの人脈を活用して、紹介・口コミによって新規案件を獲得する方法です。また、M&A成功実績を基に、クライアントである経営者のつながりや口コミから案件を紹介してもらえることもあります。


まずは現在のクライアントからの信頼を得られるよう、M&Aを成功につなげましょう。


M&A関連のセミナーや交流会などのイベントに参加して、M&Aを検討中の経営者との接点を作るのも方法です。M&A業界のトレンドや動向といった情報収集にも役立ちます。


M&Aコンサルタント向けのエージェントサービスの利用も、案件獲得に有用です。あらかじめコンサルタントとして登録しておけば、案件の紹介を受けることができます。


PODはフリーコンサルタントとプロフェッショナルな人材を求める企業とをつなぐエージェントサービスです。ご登録いただいたフリーコンサルタントの方向けに、M&A関連のコンサルティング案件や業界の最新情報をご提供しています。


契約内容の調整や事務作業などのサポートも行っていますので、M&Aコンサルタントとして継続的な案件獲得を目指されている方はぜひご登録ください。






案件獲得時に意識したい3つの注意点





M&Aコンサルタントとしての業務を安定させるには、定期的な案件獲得が求められます。しかし、やみくもに案件を獲得してもクライアントと良好な関係を構築できなければ、プロジェクト途中での契約解除や報酬の減額などの影響が生じます。


次の3つの注意点を意識して案件獲得を目指しましょう。


  • 相手目線でのアプローチ
  • 数字による訴求・差別化
  • 良い印象を残す

相手目線でのアプローチ


案件獲得時は、自分の利益だけを考えるのではなく、クライアントのニーズや課題を理解して、その解決策を提案することが重要です。特にM&Aは巨額かつ長期的な手続きとなるため、クライアントは判断に慎重になることもあります。


まずは、ヒアリングを通じてクライアントがM&Aを通じて実現したいことや課題を把握しましょう。さらに、どの程度の規模・期間でM&Aを検討しているのかなどを確認し、相手の目線に立ってアドバイスや戦略を検討する必要があります。


数字による訴求・差別化


M&Aの手続きは半年〜1年以上の長期に及びます。プロジェクト初期は、クライアントにとって目に見える成果や効果が得られない場合もあるでしょう。その際には、買い手企業・売り手企業のリストを作成し、企業売却の金額を示すなど、具体的な変化を顧客にアピールすることが大切です。


定量的な数字を用いてアドバイスや戦略立てを行うことで、説得力が増し、競合他社との差別化も図れます。


良い印象を残す


コンサルティング業務は、クライアントとの信頼関係の構築が重要です。丁寧な対応やコミュニケーションを通じて良い印象を残し、信頼性を高めましょう。





M&Aコンサルタントとしての独立に失敗しないためのポイント





ここからは、M&Aコンサルタントとしての独立に失敗しないための3つのポイントを解説します。


  • 専門性の向上
  • マーケティング戦略の強化
  • 人脈形成

専門性の向上


M&Aコンサルタントとしての独立に失敗しないためには、専門性を向上させておきましょう。クライアントからの相談は一様ではありません。さまざまなニーズや課題に対応できるように、独立前からM&Aに関連する専門知識やスキルを磨いておくことが重要です。


また、クライアントとなる経営者の意思決定に寄り添うために、経営戦略やIT戦略への知見を深めることも大切です。体系的な知識と、課題を把握、解決するための論理的思考力も養うことをおすすめします。


マーケティング戦略の強化


M&Aコンサルタント市場において自身のポジションを確立するために、マーケティング戦略を強化することも重要です。クライアント候補への認知を広め、自身の専門性を伝えるための戦略を練りましょう。


市場調査では、需要調査や競合調査を行います。その上で、自身がどのように事業展開していくべきなのか、ポジションを設定し、クライアントへの提案力を高めるための戦略を構築してください。


人脈形成


M&Aコンサルタントとして案件を請け、プロジェクトを遂行するには人脈が欠かせません。エージェントとの連携やイベントなどへの参加によりネットワークを広げ、案件を獲得するための人脈を築くことが大切です。


コンサルタント事業を軌道に乗せるには、独立当初は、エージェントサービス経由で案件を紹介してもらう方法がおすすめです。徐々に人脈を広げて案件を紹介してもらえるチャネルを作りましょう。





M&Aコンサルタントとしての独立は計画的に進めよう



M&A業界でコンサルタントとして独立するメリットは自由度や収入の向上です。一方で、コンサルタント業務を行うにはM&A専門知識とスキルが不可欠です。クライアントから信頼してもらえるM&Aコンサルタントになるためにも、M&Aに関する知見を深めて課題解決能力を高めましょう。


M&Aコンサルタントとしてのポジションを確立し、クライアントに自分の専門性をアピールするためのマーケティング戦略を検討することも大切です。また、独立後に継続的に案件を獲得するために、エージェントと連携したり、ネットワークを広げて人脈を築くことも意識しましょう。