2022.11.11 SAPジャパンの事業内容や特徴、導入事例について解説
SAPジャパンはドイツに本社を置くSAPの日本法人です。経営資源を包括的に管理・分析できるERP(基幹業務統合システム)で業界トップクラスのシェアを誇り、幅広い業種・規模の企業を支援しています。今回は、SAPジャパンの事業内容や企業概要・特徴、事例などを解説します。
目次
・SAPジャパンの事業内容
‐ クラウドERP
‐ SCM
‐ 人事・人材管理(HCM)
‐ 経費管理
‐ RISE with SAP
・SAPジャパンの特徴
‐ 幅広い業種・規模の企業を支援
‐ インテリジェントで持続可能な企業の構築を支援
‐ 継続的なイノベーション
・まとめ
SAPジャパンの会社概要
ここでは、SAPジャパンの会社概要を紹介します。
- ●代表者:鈴木 洋史
- ●会社公式URL:https://www.sap.com/japan/index.html
- ●設立年:1992年
- ●資本金:36億円
- ●売上高:13億8000万ユーロ(2021年時点)
- ●従業員数:約1,650名(2021年時点)
- ●企業理念:「日本の未来を実現する」
- ●沿革:2019年「働きがいのある会社」ランキングにランクイン
- ●2020年「PRIDE指標2020」でゴールドを獲得
SAPジャパンは、ドイツに本社を構えるIT企業SAPの日本法人です。2012年に設立20周年を迎え、次の中長期ビジョン「SAPジャパンビジョン」を策定しました。
同法人はこの中長期ビジョンの中で、自社の強みを「世界の叡智の資産継承」と表現しており、さまざまな業界・企業の課題解決ノウハウをパッケージとして提供し、グローバルで展開していくことを標榜しています。
親会社のSAPは1972年に前身の会社が設立されて以来、事業の拡大を続けてきました。2019年11月時点で世界130ヵ国以上に拠点を構えるほどのグローバル企業に成長しています。
SAPジャパンの事業内容
企業向けのソフトウェア販売および導入サポートをメインに事業展開しており、ERP領域ではグローバルで高いシェアを誇っています。現在はパッケージ製品からの脱却を図り、SaaSやPaaSなどのクラウドサービスに軸足を移しました。
主力のクラウドERPをはじめ、経理・財務管理、人事・人材管理、CRM、SRM、ビジネステクノロジープラットフォーム、支出管理など、幅広い製品があります。ここでは、クラウドERP、人事・人材管理、経費管理、RISE with SAPをご紹介します。
クラウドERP
主力製品である「SAP S/4HANA Cloud」は、AIとアナリティクスを搭載したクラウドERPで、どこからでもリアルタイムで使用でき、多くの企業で活用されています。
2022年に、IT分野におけるグローバルな調査企業であるGartner®(ガートナー) 社が、2022 Magic Quadrant™ レポートのサービスセントリックエンタープライズ向けクラウド ERP 部門で、SAP S/4HANA Cloud を「リーダー」に認定したことも話題となりました。
SCM
「SAP Digital Supply Chain ソリューション」は、サプライチェーンの設計から運用までを管理するソリューションで、導入によって高いレジリエンス(回復力)、収益性、サステナビリティを獲得することが期待できます。
サプライチェーン計画では、サプライチェーンの可視性をはじめコラボレーションなどを通じて計画策定を行うことができ、ロジスティクスについては、スピードや効率・持続性を備えた管理プロセスを行うことができます。その他にも、人工知能やIoTによる製造業務の合理化、製品ライフサイクル管理、エンタープライズ設備資産管理など、サステナビリティを獲得するために必要なソリューションが備わっています。
人事・人材管理(HCM)
クラウド型のHCM ソフトウェアアプリケーションの「SAP SuccessFactorsソリューション」は、企業内の人材に関わる情報を一元管理できる製品です。給与計算やタレントマネジメントをはじめ、ビジネス戦略に則った要員計画の策定や、従業員エクスペリエンス管理を通じた人材育成も可能です。
SAP SuccessFactorsは国内の導入企業数が400を超え、日本におけるユーザー数も180万に達しています。
経費管理
経費精算クラウド「SAP Concur」は、大企業から中小・ベンチャーまで導入されており、経費精算のさまざまな業務を自動化することで、無駄な業務を削減可能です。
経理担当者の生産性が大きく向上するだけでなく、ペーパーレス化にも寄与し、環境負荷の低減にも役立ちます。また蓄積された経費データを活用すれば、より精度が高い経営判断も可能になるでしょう。
支払い管理で言えば、経費管理以外にも直接材/間接材支出管理の SAP Aribaや外部人材管理の SAP Fieldglassなどの製品もあります。
RISE with SAP
環境変化を背景に、新しいビジネスモデルの開発に迫られている企業は多くあります。
「RISE with SAP」は、ビジネスイノベーションの経済的効果を定量的にシミュレーションすることができ、リスクを避けながらイノベーションに取り組むことができます。
RISE with SAPソリューションには、クラウドERPをはじめ、ビジネスプロセス・トランスフォーメーション、アナリティクス、ビジネスネットワーク、成果主導型サービス/ツールなどが含まれており、ニーズに応じて構築することが可能です。
SAPジャパンの特徴
ここでは、SAPジャパンの特徴や強みについて解説します。
幅広い業種・規模の企業を支援
親会社のSAPはERPパッケージでトップクラスのシェアを誇り、80ヵ国以上、437,000社を超える企業をクライアントに抱えています。
SAPジャパンは当初、大手企業をメインターゲットに据えていましたが、2017年頃から中堅・中小企業にまでターゲットを拡大しています。
この方向転換は功を奏し、前年度と比較して売上を大きく伸ばすことに成功しました。中堅・中小企業への導入に成功した背景には、注力製品の軸足をパッケージからクラウドへ移行したことも影響していると思われます。
インテリジェントで持続可能な企業の構築を支援
SAPジャパンでは、「高度なテクノロジーとベストプラクティスを組み込んだ俊敏な統合ビジネスプロセスを最大限に活用する企業」を「インテリジェントで持続可能な企業」と呼んでおり、これを実現するための支援に力を入れています。
多くの企業において、ビジネス上の大きな課題として部門間連携の問題があります。SAPジャパンは、部門横断型のビジネスプロセスを実現するための基盤を提供することで、「インテリジェントで持続可能な企業」へつなげる支援を行なっています。
継続的なイノベーション
SAPジャパンはさまざまな業種・規模のクライアントに対し、自社ソフトウェアの導入やイノベーションに向けたサポートを行なっています。
SAPジャパンは継続的にイノベーションを起こし、クライアントのより良い未来を構築することを目指しています。ブロックチェーンや量子テクノロジーなどの最新技術はもちろん、その先まで見据えて、新たなアイデアやビジネスモデルの構築に励んでいます。
SAPジャパンがイノベーション戦略において重視しているのは次の4つです。
- ●ビジネスネットワーク全体のリソース管理
- ●ビジネスプロセスの変革
- ●データ主導型意思決定
- ●信頼できる基盤による人材支援
リソースの最適配置を実現するには、ビジネスプロセスの変革から携わる必要があります。SAPジャパンはB2Bソフトウェアプレーヤーが広範に利用できるエコシステムを採用することで、ビジネスプロセスの変革を促進しています。
また、企業内のデータにとどまらず、ネットワークを超える情報を得ることで、よりインテリジェントな意思決定を実現できる取り組みも行なっています。
人間とコンピュータの双方が協力し、データに基づく意思決定を行うためには、個人・組織・利用するシステム間の信頼が必要です。そのために重要なのが、利益の保護を第一に考える、信頼性・正確性が高いビジネスプラットフォームです。
SAPジャパンでは、上記のようなプラットフォームの実現に向け、ブロックチェーンや耐量子暗号、サイバーセキュリティなど、多様な領域で研究を続けています。
さらに、イノベーションの実現にはテクノロジーだけでは不十分です。新たなテクノロジーを独創的・創造的な方法で活用できる、優れた人材の存在が不可欠です。SAPとイノベーションを進めれば、研究者や開発者、学者、業界リーダーなど、多様なバックグラウンドを持つ人材とのネットワークを活用することもできます。
導入事例
SAPジャパンの製品を導入して、ビジネスの効率化や自動化が実現した成功事例を紹介します。
事例①
ある通信大手の企業はビジネスの発展を目指して、グローバルな一貫性を追求していました。買収を通じた成長は、傘下の企業間で業務の一貫性を失われる可能性が高いことから、消極的でした。
一つのグローバル組織としてイノベーションを推進するために、デジタルファーストビジネスの展開へと舵を切りました。複雑で異種混在していた既存のERP環境をSAPの製品で代替。
これにより、イノベーションのスピードを上げることに成功しました。20ヵ国以上を対象とする大規模なビジネスプロセスの変革でしたが、SAPのサポートもあり、成功を収めています。
事例②
コネクターやエレクトロニクス機構部品事業を展開するある会社は、製造実行システム(MES)をSAP製品に刷新するプロジェクトを進めました。
基幹システムの導入や運用時の技術継承、最新機能の活用などが主な理由です。SAPを選んだ背景には、クラウドサービスの利便性やグローバル企業による迅速な拠点展開などが挙げられます。
ERPとMESのクラウドシフトおよび垂直統合によって、品質・コスト・納期(QCD)の向上が実現しました。またサプライチェーンや業務プロセスの効率化によるリードタイムの短縮や在庫削減などの効果も確認されています。
まとめ
今回は、SAPジャパンの事業内容や特徴、導入事例などについて紹介しました。SAPジャパンは主力製品のクラウドERPをはじめ、幅広い分野のソリューションを有し、大企業から中堅・中小企業まで、多様な業種を支援しています。また、高い技術力や豊富な人材を武器に、イノベーションに向けた取り組みを継続的に推進しており、今後も目が離せません。