2022.11.11 PMOの役割とは?PMとの違いや必要なスキルを解説
PMOとは、プロジェクトマネジメントを行う組織を指します。SIerをはじめ、IT業界では広まりつつあるPMOですが、IT以外の業界ではまだまだ一般的とは言えません。
そこで今回は、これから他業種からIT業界への転職を検討されている方、事業会社でPMOの設置を検討されている方などを対象に、PMOについて解説します。
PMOの役割や業務内容、PMとの違い等を説明したうえで、PMOに必要なスキルについても触れていきますので参考にしてください。
目次
・PMOの役割
‐ PMOとPMの違い
‐ PMOが必要な理由
・PMO業務の3つの階層
‐ ポートフォリオマネジメント
‐ プログラムマネジメント
‐ プロジェクトマネジメント
・PMOの3つのタイプ
‐ 支援型PMO
‐ 管理型PMO
‐ 指揮型PMO
・まとめ
PMOとは
PMOは「プロジェクトマネジメントオフィス(Project Management Office)」の略語です。
一般社団法人 日本PMO協会の定義では、「PMOは、組織内における個々のプロジェクトマネジメントの支援を横断的に行う部門や構造システム」とされています。
また、プロジェクトマネジメントの標準とされているPMBOKによれば、「PMOの役割は、プロジェクトマネジメントにおいてリソース、ツール、方法論、および手法の共有を円滑にするよう管理すること」とされています。
PMOは組織によって役割や責任範囲が大きく異なりますが、導入パターンは大きく2つに分けられます。ひとつはPMOが複数プロジェクトを統括するもの。もうひとつは、PMOが各プロジェクトに属し、PM直下でPMをサポートするパターンです。
PMOの役割
ここではPMOの役割について解説します。日本PMO協会ではPMOの役割について以下の6つを挙げています。
- ●プロジェクトマネジメント方式の標準化
- ●プロジェクトマネジメントに関する研修など人材開発
- ●プロジェクトマネジメント業務の支援
- ●プロジェクト間のリソースやコストの各種調整
- ●個別企業に適応したプロジェクト環境の整備
- ●その他付随するプロジェクト関連管理業務
PMOに求められる役割は、経験やスキルによって、アドミニストレーター、エキスパート、マネージャーの3段階があります。
アドミニストレーターでは、プロジェクトの円滑化のための事務的な作業が多く、データ収集・共有、書類作成、コスト管理、メンバーの勤怠管理などの業務があります。上記の役割では「プロジェクトマネジメント業務の支援」に該当する部分がメインとなるでしょう。
エキスパートでは、業務の作業プロセスやルールの標準化をする業務が多く、プロセスやツールの分析・標準化、情報収集・分析・可視化、プロジェクト利害関係者との連携などがあります。またプロジェクトメンバーのスキル向上のための研修やサポートも重要な業務です。上記の役割では「プロジェクトマネジメント方式の標準化」「プロジェクトマネジメントに関する研修など人材開発」が該当するでしょう。
マネージャーでは、PMOの組織戦略、PMOメンバーの管理・教育、PMO組織の予算管理、個々のプロジェクトの投資や継続の判断などがあります。PMOの組織自体を管理しマネジメントを行います。上記の役割では「プロジェクト間のリソースやコストの各種調整」「個別企業に適応したプロジェクト環境の整備」「その他付随するプロジェクト関連管理業務」が該当するでしょう。
PMOとPMの違い
ここで、PMOとPMの違いを整理したいと思います。両者は混同されがちですが、役割や業務範囲が異なります。
PMは、特定プロジェクトのマネジメントが主な役割です。
プロジェクトの定義フェーズでは、最終目標やスコープ(対象範囲)設定、利害関係者の明確化、リスク要因などを整理します。また、プロジェクトに必要な資源見積や体制構築、作業設計も行います。さらに、状況は常に変化するため、変更が生じた場合に備えて変更管理や組織運営のルール、問題解決や意思決定の方法などもマネジメント対象となります。
一方、PMOは、より全体の最適化を目指す役割を担っています。先述したPMOの役割の定義からも読み取れる通り、PMOはプロジェクト単体の成功ではなく、全体としての成功(最適化)が重要な役割となります。そのために生じるプロジェクト間の利害調整も重要な役割ですし、全社的なパフォーマンス向上に向けた人材開発や手法の標準化なども担います。
PMOが必要な理由
ここまでは、PMOの役割やPMとの違いについて見てきました。ここでは、PMOが必要な理由について解説します。
PMOが必要な理由は、突き詰めれば経営上の重要課題を解決し、全社パフォーマンスを最大化させることにあると言えます。
多くの企業では経営上の重要課題を解決するために様々なプロジェクトを立ち上げ・運営しています。PMOはそうしたプロジェクトを個別あるいは統括的に支えることで、全社パフォーマンスの向上につなげます。
では、具体的にどういったケースでPMOが必要になるのでしょうか。
例えば、部門間を跨いだ複数プロジェクト連携に課題がある場合では、複数プロジェクトを統括するPMOの必要性が高まります。また、プロジェクトが大規模でPMの負担が大きいケースや扱うテーマが複雑な場合では、各プロジェクトの中に入ってPMを支える必要性が高いと言えます。
PMO業務の3つの階層
一口にPMOと言っても、業務内容は様々です。ここからは、PMOの業務について掘り下げて見ていきましょう。PMOの業務には大きく3つの階層があります。
- ●ポートフォリオマネジメント
- ●プログラムマネジメント
- ●プロジェクトマネジメント
概念的で少々とっつきにくいかもしれませんが、大枠を理解することでPMOへの理解もしやすくなります。それでは、それぞれ詳しく解説します。
ポートフォリオマネジメント
PMOには、「ポートフォリオマネジメント」という考え方があります。ここでの「ポートフォリオ」とは、戦略的なビジネス目標の達成のために、仕事を効果的にマネジメントできるよう、プロジェクトやプログラム、関連業務などをグループとして束ねたものを指します。
限られた経営資源を有効活用し、最大のパフォーマンスを発揮するためには、何に取り組むべきかを定めたうえで優先順位をつけて実施判断を行い、適切に管理、コントロールする必要があります。これらを効果的かつ行いやすくするためにグループ化して考えようということです。
PMOでよくあるケースで言えば、組織上にあるビジネス機能の要素(経営企画や事業開発など)を視野に、ビジネスケースの要求や経済指標の分析、プロジェクトスコープ、要件定義、ワークフローなどをグループ化して管理・監督します。
※このことからPMOを「Project Management Office」ではなく、「Portfolio/Program/Project Management Office」の略とする場合もあります。
企業では、日々様々なプロジェクトが立ち上がりますが、そもそもそのプロジェクトの必要性を評価する必要があります。また、評価するためには評価基準や要件・要求整理なども必要になります。ポートフォリオマネジメントを行うPMOの場合は、こうした取り組みをサポートすることが重要な役割となります。
プログラムマネジメント
プロジェクトマネジメントにおけるプログラムとは、複数のプロジェクトから構成される大規模プロジェクトのことです。それぞれが釣り合う方法でマネジメントが行われた相互に関係し合うプロジェクトのグループです。
プログラムマネジメントは、プログラムの戦略目標と成果価値の達成のために、各プロジェクトを総合的にマネジメントすることを指します。
PMOを導入している企業の問題として、プロジェクトとプログラムの定義があいまいなケースがよく見られます。ここでは、プロジェクトよりもプログラムの方が上位概念であり、プロジェクトが有期であるのに対してプログラムは継続するものと理解すると良いと思います。
プロジェクトマネジメント
プロジェクトマネジメントとは、プロジェクトを定められた日時までに達成するためプロジェクトの進行と管理を行うことです。
プロジェクトマネジメントはPMが行います。システム開発の規模が大きい場合、複数人で開発にあたるため、各メンバーの作業の進捗管理を行いスムーズに開発が進むように管理する必要があります。
Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)の達成を目指し、プロジェクト成功に向けてマネジメントを行います。
PMOの3つのタイプ
PMOにはプロジェクトへのアプローチ方法によって下記の3つのタイプに分けられます。
- ●支援型PMO
- ●管理型PMO
- ●指揮型PMO
それぞれ詳しく解説します。
支援型PMO
支援型PMOはプロジェクトに関する事務や記録、庶務的な作業、窓口対応などが主な役割です。また、資料やマニュアルの作成、業務プロセスの改善といった、リソースの整理や提供を行うこともあります。
PMからの支援を依頼されたとき、適切に助言したり必要な手助けをしたりと、サポート面のアプローチがメインになります。
支援型PMOはプロジェクトへの直接的に影響する業務はあまりなく、あくまでもPMの主体性を尊重して動くタイプです。
管理型PMO
管理型PMOは支援型PMOよりも権限が大きく、プロジェクトへ直接的に影響を与える部分への役割もあります。
具体的にはPMの進行管理やマネジメントのサポート業務です。プロジェクトの枠組みの決定や意思決定にもある程度権限があるため、プロジェクトの進行に問題が起きた時には改善することを求めて解決していきます。
またプロジェクトを進めるうえで、コンプライアンス遵守や社内で決められたプロセスに沿っているか確認することも重要な業務です。
指揮型PMO
3つのタイプの内、最も権限が付与されているのが指揮型PMOです。プロジェクトに直接関与し、PMやプロジェクトメンバーの指揮を取ります。データ分析や会議でのファシリテーションなどの面ではPMの意思決定をサポートし、プロジェクトにおいて重要な意思決定や、プロジェクト全体をまとめることに関与して影響力を発揮します。プロジェクトが円滑に進んでいるか確認したり、プロジェクト報告の裏付けを行ったりする業務もあります。
このようなことから指揮型PMOは、経験が浅いPMやスキルに不安があるPMのプロジェクトで採用されることが多い傾向です。
PMO導入時の注意点
PMOを導入する際は、コミュニケーション不足が生じないよう注意しなければなりません。なぜなら、PMOが進捗管理を重視しすぎた結果、コミュニケーション不足に陥るケースもあるからです。例えば、進捗管理にばかり重きを置いた場合、各部門が保身に走ってしまい、プロジェクト全体の課題やその他のトラブルを見落としやすくなる可能性もあります。そうなるとプロジェクトを成功させることが難しくなるでしょう。
PMOにはPMをサポートする役割があり、PMだけではなくメンバーにとっても頼りになる存在です。しかし、PMOに依存するのではなく、各部署と連携を図りメンバー間でのコミュニケーションを怠らないようにしなければなりません。
PMOに必要なスキル・資格
PMOには幅広いスキルが求められます。PMOの組織内、PM・プロジェクトメンバー、プロジェクトの利害関係者など多くの人との関わりがあるため、コミュニケーション能力や人間観察力、調整力などはもちろんのこと、業務を遂行するうえで該当領域に関する専門知識、財務・IT・経営管理に関する知識、プロジェクトマネジメントの知識や技術も必要です。
業務の中では、PMOが管理するすべてのプロジェクトに対する共有資源のマネジメント、方法論やベストプラクティスの決定、標準の特定や開発などのスキルと経験によってはプロジェクトの成功をも左右します。
PMOには必須の資格はありませんが、「PMP®(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)」はPMI 本部が認定している国際資格であるため取得しておく価値はあるでしょう。他にも日本PMO協会のPMO認定資格や、独立行政法人 情報処理推進機構が実施するプロジェクトマネージャ試験などもあります。
まとめ
今回は、PMOの役割や業務内容、PMとの違い、PMOに必要なスキルなどを解説しました。単体プロジェクトをマネジメントとするPMに対し、PMOは複数プロジェクトの統括やプロジェクトに属してPMをサポートする役割を担うといった違いがあります。
また、ポートフォリオマネジメントの役割を持つ場合には、プロジェクトの評価を行うための評価軸の選定や要件・要求定義などをPMOが主導する場合もあります。
組織によってPMOの役割や権限範囲は様々ですが、全社パフォーマンスの向上を支える重要な役割を担っており、近年ではIT業界以外からも注目を集めています。
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