2022.10.11 コンサル転職ってどうなの?業界変化や今後のコンサルタント像をリブ・コンサルティング代表が解説
毎年のように就活ランキングの上位に入り、多くの起業家を輩出しているコンサルティング業界。今回は、長年業界に携わってきた株式会社リブ・コンサルティング代表の関 厳氏をゲストに迎え、2000年代以降のコンサルティング業界の変化をはじめ、今後のコンサルタント像などについて伺いました。コンサルティング業界への転職を検討されている方は、是非、参考にしてください。
株式会社リブ・コンサルティング
「“100年後の世界を良くする会社”を増やす」を経営理念に掲げ、2012年の創業以来、中堅・ベンチャー企業向けに経営コンサルティングを行っている。
目次
・2000年代以降のコンサルティング業界の変化
- リーマンショックとファームの二極化
- コロナとDXの加速
・コンサルティング業界がこれから取り組むべきテーマ
- ビジネスグロース領域とコンサルティング
・今後、コンサルタントに求められるもの
- ゼネラリストからより専門性が求められる時代に
- 未経験のコンサル志望者は古いコンサルタント像を捨てよう
・まとめ
2000年代以降のコンサルティング業界の変化
聞き手:
最初のテーマとして、2000年代以降の社会情勢とコンサルティング業界の変化について伺いたいと思います。
2000年代だけでも様々なトピックがありますが、ここでは2008年のリーマンショックと2019年のコロナの影響についてお聞きしたいと思います。
リーマンショックとファームの二極化
聞き手:
2008年9月に起きたリーマンショックですが、コンサルティング業界にとってどのような影響があったでしょうか。
関氏:
リーマンショックはコンサルティング業界にとって大きな影響がありました。
具体的には受注数の激減です。私が当時勤めていたコンサルティング会社でも4割ほど受注が減りましたし、他の多くのファームで仕事が減りました。また、仕事が減った結果、人員削減に迫られるファームも多くありました。
聞き手:
リストラが増えたのですね。その状況は長く続いたのでしょうか。
関氏:
いえ、リーマンショックの影響は1年ほどしかなく、その後、需要が回復したんです。
この時、受注を増やせた監査系ファームとその他のファームとで明暗が分かれた訳ですが、同時に規模の二極化が始まり、監査系ファームの大規模化が進んでいくことになります。
聞き手:
なぜ、監査系のファームだけが受注を伸ばせたのでしょうか。
関氏:
リーマンショックからの需要回復時、監査系ファームは案件を受けられるだけのコンサルタント、特にマネージャー層を確保していたのに対し、非監査系ファームは人材が枯渇していたことが挙げられます。
では、なぜ監査系ファームは人材が潤沢で、非監査系ファームは人材が枯渇していたのかという話になりますが、この背景にはリーマンショックによる「非監査系ファームから監査系ファームへの人の移動」があったことが考えられます。
どういうことかと言うと、監査系ファームは監査報酬という安定した収益基盤があるのに対し、非監査系ファームは仕事がなければ人員削減せざるを得えません。リーマンショックは監査系ファームよりも非監査系ファームに大きな影響を与え、非監査系ファームから放出されたコンサルタントが監査系ファームに大量に流れることになった訳です。
また、中堅のマネージャー層が移動してしまったことも両者の差を大きくした要因の一つになっていると思います。
コロナとDXの加速
聞き手:
社会情勢の大きな波として、直近ではコロナがありますが、コンサルティング業界に対してどのようなインパクトがあったでしょうか。
関氏:
一般的には、コロナによって大打撃を受けたと思われがちですが、影響は軽微だったと思います。実際、当社でも緊急事態宣言時から3ヶ月から半年ほどは受注が減ったものの、その後、回復しました。
聞き手:
リーマンショックの時の様な人員削減は行われなかったのでしょうか。
関氏:
はい、多くのコンサルティング会社では、リーマンショックの時に人員削減をして損したという感覚を持っていたので、コロナの時には需要が回復した後のことを考え、あまり人を削らなかったんです。その意味で、10年前のリーマンショックの教訓が活きたと思います。
聞き手:
コロナの影響について、その他、何か感じる変化はありますか。
関氏:
2015年頃から広がりつつあったDXについて、コロナによって普及の速度が増したと思います。これはコンサルティング業界にとって追い風になっていると感じています。
コンサルティング業界がこれから取り組むべきテーマ
聞き手:
ここまで、2000年代のコンサルティング業界の変化について、リーマンショックとコロナの影響についてお聞きしました。
続いて、コンサルティング業界の将来展望の観点から、これから取り組むべきテーマについて伺いたいと思います。
ビジネスグロース領域とコンサルティング
聞き手:
コロナの影響もあり、コンサルティング業界にとってDX案件が増えているとのことですが、今後の展望をどのように見ているか、もう少し教えていただけますか。
関氏:
先ほど申した通り、コンサルティング業界全体としてDXプロジェクトが増えていますが、少し違和感を感じています。
聞き手:
どういった点に違和感を感じているのでしょうか。
関氏:
DXの領域について、コンサルティング業界として、本当に必要な支援ができていないと思っているからです。
DXの本来の意味から言えば、DXには「新価値の創出」が伴わなければなりません。プロジェクトには様々なレイヤーやフェーズがありますが、新価値の創出を実現するためには、DXの観点から「企画設計」、「開発」、「ビジネスグロース」の3つに取り組む必要があります。
しかし、現状としては企画設計や開発領域のコンサルティングにばかり集中していて、ビジネスグロースの領域を支援するファームが圧倒的に少ないのが実情です。
聞き手:
ビジネスグロースは貴社が得意な領域ですね。貴社がビジネスグロースの支援に力を入れている一方で、業界としてはまだまだ企画や開発支援に寄っているのはどういった背景があると思いますか。
関氏:
ビジネスグロースの支援にコミットするファームが少ないことに加え、クライアント側にアメリカ的なアジャイル型の発想が不足していることもあると思います。
我々が取り組むプロジェクトにおいては、事業やサービスのローンチは本当に初期の話で、勝負はむしろリリース後と言っても過言ではありません。
いくらコストをかけて企画や開発を行なっても、不確実で変化の早い現代においては、リリースする頃に環境が変わっているというのは多々あります。従って、企画や開発に時間とお金をかけるよりも、いかに早くリリースし、市場からのフィードバックを得ながら高速にPDCAを回せるかの方が重要になります。
聞き手:
ビジネスグロースに予算をシフトしている貴社のクライアントと、他ファームのクライアントとでは何か違いがあるのでしょうか。
関氏:
大手ファームのクライアントの多くは大企業ですが、我々の顧客層はベンチャー企業や中堅企業が中心です。大手に比べると、そもそも予算の面から企画や開発に何年もかけられない事情があったり、経営の意思決定の早さや組織の規模が小さいからこその柔軟さを持っているといった違いがあると思います。そういった観点から、大手企業に比べてビジネスグロース領域でコンサルティングを受け入れやすい環境があると言えるかもしれません。
しかし、変化の早い現代において、価値の創出を実現していくためには、企業規模の大小に関わらず、ビジネスグロースに取り組むべきことには変わりないと思っているので、我々としても引き続き、ビジネスグロース領域の重要性を伝えていかなければならないと思っています。
今後、コンサルタントに求められるもの
聞き手:
続いて、これからのコンサルタント像についてどのように見ているか伺いたいと思います。
ゼネラリストからより専門性が求められる時代に
関氏:
問題解決力や論理的思考力といったゼネラリスト的な能力に加えて、専門性の重要性が増していると思います。
「ゼネラリスト的な能力に加えて」と言いましたが、一部の外資系戦略コンサルを除けば、かつてのコンサルティング業界ほどゼネラリスト的な思考力は求められませんし、それよりも専門性の方が重要だったりします。
例えば、デジタル領域のプロジェクトであれば、単に問題解決力や論理的思考力が高い人よりも、類似案件をやったことがある人の方が重宝されています。
同様に、IT系のサービス開発プロジェクトであれば、IT会社でプロダクト開発経験がある人、マーケティングのプロジェクトであれば、大手企業でデジタル広告の運用に取り組んでいた人が重宝されるイメージです。
外資系戦略コンサルなどのイメージから、コンサルタントには高い論理的思考能力が求められると思われがちですが、以前に比べると入り口のハードルは下がっているように思います。
聞き手:
入り口のハードルが下がった背景としては、どういったことがあるのでしょうか。
関氏:
DXもそうですが、コンサルティングで扱う領域が広がっていることが挙げられます。
コンサルティングで扱う領域を業界や機能などで細かく切り、さらに実行フェーズまで広げていくと、それらを一人で統率することは難しくなります。当然、その分野の専門的な知識やスキルを持っていて、上手くやれる人を配置し、チームとして要件を満たす方が良いのです。
そうすると、ゼネラリスト的な能力だけがものすごく高い人よりも、ゼネラリスト的な能力を一定水準持ちつつ、専門性やチームをまとめる力を備えている人の方が良かったりするんです。
未経験のコンサル志望者は古いコンサルタント像を捨てよう
聞き手:
これからコンサルティング業界を目指す未経験者の中には、「コンサルタント=戦略コンサル」といったイメージを持っている方も多いかもしれません。実際のところ、求職者側はコンサルティング業界の実態を正しく認識できていると思いますか。
関氏:
中途の転職市場で言えば、実態をあまり知らない方も多く見受けられますね。
要因としては、転職活動の期間が短いということもありますが、ファーム側が発信する情報だけではリアルな部分が掴みづらい側面があると思います。
聞き手:
後者について言えば、ファーム側は良いことしか発信しないといったイメージでしょうか。
関氏:
それもあると思います。コンサルティングと一口に言っても、戦略コンサルに代表される「示唆を出す」様な仕事がある一方、実はアウトソーシング的な業務が多いとか、SIerとあまり変わらないプロジェクトがあるとか、そういう事をファーム側はあまり言いたがらないですよね。
あとは、多くのコンサルティングファームはパートナー制で情報統制が敷かれていて、業界の特性上、社員が外部で好き勝手に情報を発信することはできません。
対して、ファームを卒業した人はある程度自由に話すことができるので、結果的にファーム卒業生の古い情報ばかりが世の中に出回っている実態があります。これも求職者が業界の実態を把握しづらい要因になっていると思います。
聞き手:
確かに個人の発信で言えば、現役を退いている戦略コンサルタントの情報が目立ちますし、業界未経験者がそういった情報にばかり触れていると、コンサルタントに対するイメージをアップデートしづらいかもしれませんね。
関氏:
はい、実際、求職者の業界に対するイメージと実態との間にギャップが生じてしまい、業界に入ってみたらイメージと違ったというような採用のミスマッチも生じています。
あと、入る前から昔の戦略コンサルのイメージで「自分には難しそうだ」と諦めてしまう人が結構いると思っていて、これは業界にとっても求職者にとっても、もったいないと感じています。
今のコンサルタントには、頭の良さや特別な才能はそこまで必要なくて、それよりも大切なのはお客さんの気持ちを理解できる事やファームの知見を活かして価値提供できる事です。何でも自分一人で価値を生み出さなければならないということではなく、周囲の知見も活用しながら、価値提供できれば良いのです。
聞き手:
最後に、コンサルティング業界への転職を検討されている方に、メッセージをお願いできますか。
関氏:
コンサルティング業界に興味を持っている方は、まずは古いコンサルタント像を捨てるところから始めてみると良いと思います。
コンサルティング業界は給与水準が高い上に、最近ではワークライフバランスがどんどん改善してきているので、そういった点でも魅力的だと思います。
まとめ
今回は、リブ・コンサルティング代表の関氏をゲストに迎え、2000年代以降のコンサルティング業界の変化をはじめ、今後のコンサルタント像などについて伺いました。
リーマンショックやコロナなどの社会情勢によって、コンサルティング業界やコンサルタントに求められるものは日々変化しています。一方で、世の中に溢れる業界やコンサルタントに関する情報と実態とにギャップが生じています。
これからコンサルティング業界を目指す未経験者の方は、古いコンサルタント像を捨てるところから始めることをお勧めします。本記事が読者にとって少しでも参考になれば幸いです。