2022.08.15 フリーランス向け保険|種類や年代ごとにおすすめの保険を紹介
フリーランスで仕事をする人にとって、病気や失業などへの備えは重要です。しかし、フリーランス向けの保険について、会社員との違いや特徴についてよくわからないという方も多いのが実情です。
本記事では、フリーランスに適した保険とはどのようなものか、おすすめの保険の種類をそれぞれ詳しく説明します。また、必要な保険は年代によって変わるため、20代から50代以上までの年代別のおすすめも解説します。
すでにフリーランスとして活動している人や、これからフリーランスになることを検討している人は、ぜひ参考にしてください。
目次
・フリーランスの健康保険は会社員とどう違う?
・フリーランスの公的医療保険の選択肢とは?
- 会社の健康保険を任意継続する
- 家族の健康保険組合に扶養として入る
- 国民健康保険組合に加入する
・フリーランスのリスクに備える保険も加入しておくと安心!
- 就業不能保険・所得補償保険
- 賠償責任保険
- 労災保険
- その他の保険
・年代別!フリーランスにおすすめの保険
- 20代のフリーランスにおすすめの保険
- 30代のフリーランスにおすすめの保険
- 40代のフリーランスにおすすめの保険
- 50代のフリーランスにおすすめの保険
・まとめ
フリーランスの健康保険は会社員とどう違う?
一般的な健康保険の名称は、フリーランスが加入する「国民健康保険」と会社員が加入する「一般被用者保険」に分けられます。それぞれの保険の仕組みや保険料は異なるので改めて確認しておきましょう。
会社員が加入する「一般被用者保険」は、加入者の保険料を会社が半額負担してくれる仕組みです。毎月の保険料は給与から差し引かれるため、会社員は自分で振り込みなどの手続きをする手間が発生しません。保険組合によって、提供する福利厚生や健康増進関連サービスの内容などは異なります。
フリーランスが加入する「国民健康保険」は、各自治体が運営する公的な健康保険です。国民健康保険は国民皆保険制度の一つで、国民が安い保険料で必要な診療を受けられるよう加入が推奨され公費が投入されています。保険料は自治体ごとに算出方法が異なるため、実際に支払う保険料の金額もさまざまです。国民健康保険に加入せず保険証がない場合は、かかった医療費を全額負担しなければなりません。
会社員からフリーランスになる際には、退職の次の日から14日以内に住んでいる自治体へ、国民健康保険加入の届け出が必要です。本人だけでなく家族も加入できるため、保険料など具体的な内容も確認しながら手続きをしておきましょう。
フリーランスの公的医療保険の選択肢とは?
基本的に、フリーランスとして働く人は国民健康保険に加入します。ただし、健康保険の選択肢は国民健康保険以外にも複数あります。選ぶ健康保険によっては保険料が安くなる可能性もあるため、何があるのかを把握しておくとよいでしょう。
会社員からフリーランスになる場合は、それまで加入していた健康保険を任意継続する選択肢もあります。また、家族の健康保険組合に扶養として入る場合や、国民健康保険組合に加入する場合の要件なども紹介するため、参考にしてください。
会社の健康保険を任意継続する
会社員からフリーランスになる場合は、国民健康保険に加入しないで勤務していた会社の健康保険を任意継続することも可能です。それまで入っていた健康保険なら、会社を辞めてからも同じように利用できると考え、早速手続きしたくなるかもしれません。
ただし、任意継続にはメリットもありますが、保険料は全額自己負担になるなどのデメリットもあります。次に解説する任意継続の条件などを事前に把握してから検討しましょう。
任意継続をするメリット
任意継続をする人に扶養家族がいる場合は、扶養家族の保険料を払わずに済むメリットがあります。ただし、任意継続には求められる条件があるため、確認が必要です。
一つ目は配偶者や扶養家族の年収が130万円未満であること、二つ目は扶養家族によっては同居していることなどが必要とされます。
扶養家族が1人だけでなく複数人の場合でも、全員の保険料を払わなくてもよいため、国民健康保険よりも任意継続をした方がお得になることもあります。任意継続のメリットは会社員時代に入っていた健康保険組合の福利厚生などが継続して受けられる点です。
また、任意継続の健康保険料は標準報酬月額によって決まり、上限額の設定は30万円です。会社員として30万円以上の月収を得ていた人は、国民健康保険よりも保険料が安くなる可能性があります。国民健康保険の限度額は99万円で、所得が高いと支払う保険料も上がってしまうため所得額が多い人ほど任意継続するメリットが大きいでしょう。
任意継続をするデメリット
勤務していた会社の健康保険を任意継続する場合のデメリットは、支払う保険料が全額自己負担になる点が挙げられます。退職前に会社が負担していた分も支払うことになるため、保険料は倍増します。また、任意継続するには退職日までに2カ月以上会社に勤務し、社会保険に加入していなくてはなりません。
さらに、任意継続に加入できるのは2年間という期限がある点にも注意が必要です。2年間の期間満了日の翌日に保険証を返却することが求められています。任意継続期間中に1日でも保険料の支払いを滞納すれば脱退扱いとなる点もデメリットに挙げられるため、フリーランスになってから任意継続を選ぶ場合は、支払いを忘れることのないように注意しましょう。
家族の健康保険組合に扶養として入る
フリーランスとして仕事を始めてから、年収が130万円以下になる可能性も考えられます。このようなケースでは、家族が健康保険に入っているなら扶養に入ることも検討するとよいでしょう。夫と妻など家族が別々に健康保険に入るよりも、一人が家族の扶養に入る方が保険料を安くできる可能性が高くなります。
フリーランスとしての収入が130万円を超えるようなら、家族の扶養に入ることはできません。その場合は国民健康保険に加入するのがおすすめです。家族が会社員で子どもがいるなら、子どもだけ家族の健康保険組合に入る選択肢もあります。
国民健康保険組合に加入する
国民健康保険組合は、医療関連や士業など特定の職業の人が加入できる保険制度です。職業のほか、居住地などによっても加入できる国民健康保険組合は異なります。フリーランスになってからの所得が一定額を超えている場合は、国民健康保険よりも保険料が安くなるケースもあるため、加入できる条件などを確認しておきましょう。
主な国民健康保険組合を次に紹介しますが、これら以外にも職業や地域ごとに多くの組合があることも特徴です。お住まいの地域には、どのような国民健康保険組合あるのかを確認するとよいでしょう。
【国民健康保険組合の例】
・関東信越税理士国民健康保険組合
・文芸美術国民健康保険組合東
・東京技芸国民健康保険組合
・京都料理飲食業国民健康保険組合
・大阪文化芸能国民健康保険組合
文芸美術国民健康保険(文美国保)
国民健康保険組合の例として、文芸美術国民健康保険(文美国保)について紹介します。文美国保は写真や美術関連、デザイナー、ライターなどのクリエイター分野の職業のフリーランスが加入できる保険です。文美国保に加入するには、フリーランスとして行う業務が、加盟団体の業務と同じと判断されなければなりません。
文美国保の特徴は、国民健康保険のように被保険者の収入に比例して保険料が上がらない点です。文美国保では、組合員の人数や組合員の家族の人数に応じて保険料が決まり、加入する組合員の保険料に家族の人数分の保険料が定額で加算されます。フリーランスの収入額が直接影響しないため、多く稼げる人ほど保険料がお得になる仕組みです。
文美国保に加入するには、初めに文美国保に加盟している団体の会員になる必要があります。ただし、会員になるには文美国保が行う審査を通過しなくてはなりません。職業や地域の条件に当てはまるのかを確認してから申し込むようにしましょう。
フリーランスのリスクに備える保険も加入しておくと安心!
フリーランスで仕事をしていると「自分は大丈夫だろう」と考え、保険への加入を見送ることがあるかもしれません。しかし、フリーランスには保険に加入した方がよい理由がいくつもあるため、保険加入を検討することをおすすめします。
一つには、保険に入っていないと、ケガや病気になって仕事ができなくなっても傷病手当金を受給できないことです。収入がなくなれば一気に生活に支障が出てしまうでしょう。
また、会社員とは違い厚生年金が加算されないため、もらえる老齢年金の金額が少ないのも理由の一つです。そして、仕事上のミスで損害賠償を請求された場合には、会社員と違い誰にも守られません。
ここでは、フリーランスとして知っておきたい健康保険以外の保険について、概要やメリットなどを紹介します。
就業不能保険・所得補償保険
思わぬ病気やケガで急に働けなくなった場合に、生活に必要な費用を補う社会保険が就業不能保険や所得補償保険です。どちらも収入を補うものですが、就業不能保険は生命保険、所得補償保険は損害保険と、保険の種類が異なります。就業不能保険と所得補償保険には、保険の内容も違うのが特徴です。
保険金の支払い対象とならない免責期間は、所得補償保険よりも就業不能保険の方が長くなっています。また、就業不能保険の補償期間が60歳までなど長期に設定されているのに対し、所得補償保険は1年間など短い点も対照的です。フリーランスの万が一の備えに収入を補填するものとして選ぶ際には、加入する前にどちらが必要なのかを十分に検討するようにしましょう。
賠償責任保険
フリーランスになったら一度は検討しておきたいのが賠償責任保険です。誰しも仕事中に人や物に対して思わぬ事故を起こしてしまう可能性が、絶対にないとは言えません。例えば、クライアントに納品した制作物の不備や著作権侵害なども想定されるトラブルです。
情報社会の昨今では、情報漏えいのリスクも高まっています。このような万が一のトラブルに備えるために加入するのが賠償責任保険です。
会社員の場合は何らかのトラブルがあると会社が対応してくれますが、フリーランスは自分で責任を持って対処しなければなりません。しかし、賠償額が大きい場合は支払いできなくなるでしょう。従来では法人向けが主流であった賠償責任保険も、フリーランスを対象にすることが増えて選びやすくなっています。
労災保険
労災保険は2021年9月から加入対象が広がり、一部のフリーランスも労災に加入できるようになりました。新たに対象とされたのは「自転車を使用して貨物運送事業を行う者(フードデリバリーなど)」「ITフリーランス」です。
もともとは労働者に対する補償を行う保険でしたが、労働者以外で一定の要件を満たす場合は特別加入制度としての補償が適用されるようになりました。
ITフリーランスの場合は「情報処理に係る作業」をしている人が適用の要件です。主な保障内容には、仕事中や通勤中のケガや病気、障害が残った場合または死亡などがあります。
【主な保障内容】
・ケガや病気などの治療費などの療養費
・ケガや病気などで休業する際の休業期間の給付
・治療後に障害が残った場合の給付
・死亡した場合の遺族への給付
【対象範囲】
・情報処理システム、管理、監査、セキュリティ管理など
・情報処理システムに関する業務の一体的な企画
・ソフトウェアやWebページに関する業務
その他の保険
万が一に備えて加入すると安心できる保険は、フリーランスだけに限らず、ライフスタイルや年齢に応じて検討するのがおすすめです。例えば、病気やケガによる入院や手術に備える医療保険へ加入しておくと安心でしょう。
死亡リスクに備えるなら、一定期間の死亡保障のある定期保険や収入保障保険、生涯に渡って保証が付く終身保険が適しています。将来受け取る年金を増やすためには個人年金保険、住宅を保証するのが火災保険や地震保険です。
年代別!フリーランスにおすすめの保険
フリーランスで働く場合、年代によってライフスタイルや仕事量、病気のリスクなどが変化する点にも注意が必要です。保険は一度加入したから終わりというわけではなく、定期的に見直しをしなければ、現状に合った保障内容になりません。
年代によって加入するべきおすすめの保険は異なります。また、同じ種類の保険でも商品によって保証内容はさまざまなため、十分に検討しましょう。ここでは、年代ごとに起こりやすいリスクの特徴と、それをカバーできる保険について説明します。
20代のフリーランスにおすすめの保険
20代のフリーランスの場合は、結婚する人としない人で加入しておいた方がよい保険は分かれます。ただし、結婚の有無にかかわらず若い人ほど保険料が安くなるため、将来を見据えて早めに保険に加入しておくと安心です。
20代のフリーランスは、賠償責任保険と労災保険の他に、就業不能保険を加えるとよいでしょう。万が一、働けなくなったときには、公的制度を受けながらできるだけ多くの保険金を受け取れる方が安心感につながります。
20代で結婚する場合は、自分だけでなく家族のことも考慮して医療保険や死亡保険も検討することをおすすめします。特に、女性は妊娠や出産を想定して早めに女性疾病に備えた医療保険を検討して加入しておくとよいでしょう。
30代のフリーランスにおすすめの保険
30代のフリーランスの場合は、子どもの将来を考えた保険の検討を開始する年代と考えられます。フリーランスに必要な賠償責任保険や労災保険の他に、就業不能保険には引き続き加入しましょう。
住宅ローンで家を購入した場合は、団体信用生命保険(団信)へ加入することになります。万が一、契約者が亡くなっても住宅ローンが免除される保険です。
また、それまでよりも病気のリスクが高まる30代のフリーランスは、医療保険への加入もおすすめです。女性は、子宮内膜症など女性特有の病気や出産に伴うリスクが高まるため、女性向け医療保険を検討するとよいでしょう。ライフステージが変わりやすい30代は、その都度どのような保障内容が必要なのかを確認しながら保険を見直すことが大切です。
40代のフリーランスにおすすめの保険
フリーランスとして働く40代になると、子どもの教育費や住宅ローンが家計を圧迫する傾向にあります。ただし、子どもが成長するにつれて必要な保障額も減っていくため、40代はこれまで加入していた保険の見直しにちょうどよい時期です。死亡保障以外の保険料や保障内容が、現状のライフスタイルに合っているのかを再確認しましょう。
がんのリスクが心配で十分な備えをしておきたい場合は「がん保険」に加入しておくと、がんに特化した保障が得られます。また、40代のフリーランスは就業不能保険の他、将来への貯蓄でもある個人年金保険を検討するのもおすすめです。さらに、掛け捨ての死亡保険を見直して貯蓄性のある商品に変更するという選択肢もあります。
50代のフリーランスにおすすめの保険
50代のフリーランスは、家庭のライフスタイルごとに必要な保障が大きく異なるのが特徴的です。子どもが独立し夫婦2人だけの生活になったのなら、それまで加入していた高額な死亡保障は不要になるでしょう。一方、50代でも子どもの教育費や住宅ローンが続く場合もあります。そのため、就業不能保険の他に医療保険やがん保険などの生命保険を中心に見直しをするとよいでしょう。
また、50代からは将来を見据えて老後のための保険も検討していきたいところです。個人年金保険は50代からでも加入でき、受け取り方法も選べます。同じ死亡保険でも、掛け捨てではなく貯蓄性のある死亡保険がおすすめです。
まとめ
フリーランスは、必要な保険を自分で選び加入しなければなりません。会社が手続きをしてくれる会社員とは違い、主体性を持って現状に合うものを選ぶことが大切です。健康保険の他に、万が一のときに保証を受けられる社会保険にも加入した方が安心でしょう。
保険は年代によって必要な保障が変わるため、ライフステージごとに見直すことで保険料を抑えることも可能です。また人によって結婚や出産、子育てなどライフスタイルの変化が生じる年齢は異なります。そのため、変化が起こったタイミングで保険を見直すのがおすすめです。
保険は商品によって保障内容はさまざまなので、本記事で紹介した保険の種類を参考に最適なものを選ぶようにしましょう。