ITエンジニアは独立しやすい? メリットや年収を詳しく解説
更新日:11月1日
ITエンジニアは比較的独立しやすく、独立後に年収とスキルアップのチャンスが広がるメリットもあります。ただし安定収入を得るためには、高度なスキルや営業力などが必要です。
本記事では、ITエンジニアが独立するメリットや収入、必要なスキルなどを詳しく解説します。
独立に適した事業モデルと案件を獲得する方法も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
ITエンジニアが独立するメリット
ITエンジニアの独立には、下記のようなメリットがあります。
ITエンジニアが独立するメリット
- 需要が多くリスクが低い
- 自由な働き方ができる
- 高収入が見込める
- スキルアップのチャンスが広がる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
需要が多くリスクが低い
DX推進と慢性的なIT人材不足によって、ITエンジニアの需要は高まっています。
経済産業省の「IT人材需要に関する調査」によれば、2025年に最大58.4万人、2030年には78.7万人のIT人材不足が予測されています。(参考:IT人材需給に関する調査)
最近ではフリーランス向けのエージェントサービスも増えているため、案件の獲得も難しくありません。高報酬案件も多く、リスクを抑えながらの独立起業が可能です。
独立に初期費用がほとんどかからないのも大きなメリットでしょう。基本的にパソコンさえあれば自宅で仕事をはじめられます。
自由な働き方ができる
独立をすれば会社員よりも業務スタイルの自由度が高くなり、ライフスタイルに合わせた働き方を選べます。時間や場所に縛られずに働けるのは魅力です。
納期や工程は決まっていますが、自分のペースで仕事を進められるため、プライベートと仕事の両立もしやすくなります。
高収入が見込める
ITエンジニアとして独立すれば、自分の技術力と経験に応じた報酬を設定できます。実力次第で収入アップの可能性も高まるでしょう。
独立後の年収は案件や稼働率によっても異なりますが、500万円~800万円程度が一般的な年収です。なおフリーランス向けのエージェントサービスを利用すれば、年収換算1,000万円以上の案件獲得のチャンスもあります。
会社員が給与を上げるにはそれなりの時間が必要ですが、フリーのITエンジニアは短期間でも収入を伸ばせるのは大きなメリットです。
出典:フリーランスエンジニアの実態調査-2023年1月- |Relance
スキルアップのチャンスが広がる
フリーランスはさまざまな案件を経験できるため、スキルアップのチャンスが広がります。新しい技術やツールに触れる機会も増えるでしょう。
自分の興味や関心に基づいて、スキルを深める方向性を選択できるのもメリットです。時間的な制約も少ないため、効率的にスキルアップを図れます。
ITエンジニアが独立する方法
ITエンジニアが独立する際には「個人事業主(フリーランス)」か「法人の設立」を選択します。それぞれにメリットとデメリットがあるため確認しておきましょう。
個人事業主(フリーランス)
個人事業主は、会社としてではなく個人で事業を展開するビジネス形態です。クライアント企業と業務委託契約を結び、受託報酬や相談料などを受け取ります。
国民健康保険の加入や開業届の提出といった手続きは必要ですが、独立開業の手間はそれほど多くありません。従業員の管理も不要です。
手間とコストを減らしたい場合は、個人事業主からスタートしたほうがいいでしょう。ただし、社会的信用が低く融資を受けにくいなどのデメリットはあります。
法人設立
法人は、法人格を取得して事業を展開するビジネス形態です。所得金額によっては、控除を差し引いても個人事業主より税率が低くなります。
個人事業主 | 195万円以下:5% 195万円超330万円以下:10% 330万円超695万円以下:20% 695万円超900万円以下:23% 900万円超1,800万円以下:33% 1,800万円超4,000万円以下:40% 4,000万円超:45% |
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法人 | 800万円以下の部分:15% 800万円超の部分:23.2% ※資本金1億円以下の法人 |
独立後の所得が700万円~800万円を超えるようであれば、法人化を検討してもいいでしょう。
ただし、開業時の手続きは多く、初期費用もそれなりにかかります。株式会社の場合は25万円前後、合同会社は10万円前後の初期費用が必要です。また、経営が赤字であっても法人住民税の均等割を納める必要があります。
出典:一人で会社を作る時に必要な費用は?会社設立や事業開始にかかる費用一覧 | 経営者から担当者にまで役立つバックオフィス基礎知識 | クラウド会計ソフト freee
ITエンジニアが独立するための準備と手順
独立のリスクを最小限に抑えるためにも、事前準備の流れを確認しておきましょう。
- スキルとポートフォリオを整理する
- ビジネスプランと資金計画を立案する
- 各種手続きを行う
- 営業力と受注力を強化する
それぞれ詳しく解説します。
スキルとポートフォリオを整理する
独立前にホームページを作成して、プロフィール、スキル、実績などを公開しましょう。ポートフォリオをまとめておけば、自分の強みを視覚的に訴求できます。潜在顧客に対するアピールとしても効果的です。
技術や事例紹介などの動画を作成してYouTubeにアップロードしてもいいでしょう。専門分野に関する記事も執筆して発信したいところです。
ビジネスプランと資金計画を立案する
独立には事業計画が不可欠です。必ず事前に計画書を作成してビジネスモデルを明確にしておきましょう。無計画な独立はビジネスの失敗につながるため注意が必要です。
独立前に決めておきたいビジネスプラン
- 事業内容(サービスの概要)
- ビジョン
- 強み(専門性、実績)
- 対象市場の規模と動向
- ターゲット企業
- 付加価値と差別化のポイント
- 価格
- 営業チャネル
- ロードマップ
- マイルストーン など
独立に必要な資金の試算と調達方法も検討しておきます。開業費用だけではなく、当面の生活費や設備投資費も見積もっておき、具体的な準備金額を算出しましょう。
理想と現実のギャップは避けられません。プランを立案する際には、過剰に楽観的な目標を立てすぎないように注意しましょう。
各種手続きを行う
退職前後の手続きと必要書類を確認して、開業に遅れが生じないようにしましょう。
退職前
遅くても退職希望日の1か月前までに退職の旨を伝えます。民法では2週間前までと定められていますが、早めに伝えたほうが丁寧です。
企業によっては退職願を提出する必要があるため、事前に社則を確認しておきましょう。雇用保険被保険者証や源泉徴収票の受け取り手続きも行います。
退職後
個人事業主としてスタートする場合は、所轄の税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。また都道府県税事務所には「事業開始等申告書」を提出します。
法人を設立する場合は法務局で法人登記を行い、税務署・都道府県税事務所・市区町村の役所に「法人設立届出書」を提出します。
保険の手続きも忘れないようにしましょう。社会保険から国民健康保険への変更期限は退職後14日以内です。変更手続きは地元の役所で行います。厚生年金・共済年金から国民年金への切り替え手続きも必要です。
営業力と受注力を強化する
技術力が高くても、営業力と受注力が伴わなければ独立後の収入は安定しません。
課題を解決するソリューションの提案力も重要ですが、個人事業主として活動するのであれば質疑応答や交渉力なども高めておきたいところです。
案件は継続して獲得する必要があるため、営業活動を通じて潜在顧客や業界関係者とのネットワークを広げておきましょう。提案と受注の過程で、自身の強みやブランド力の確認と営業力の強化も期待できます。
ITエンジニアの独立に必要なスキル
ITエンジニアが独立するためには、下記のようなスキルが必要です。
- 高度な技術力と専門性
- 自己管理能力
- コミュニケーション能力
- 経営管理能力
それぞれ詳しく見ていきましょう。
高度な技術力と専門性
ITエンジニアが独立するには、高度な技術力と専門性は必須です。
要件定義、設計開発、テストといった一連の工程を行えるのは当然の要件として、複数の開発言語や各種ツールなどの知見も求められます。
クラウド関連やサイバーセキュリティなどの高度な専門知識とスキルもあれば、深い洞察力とソリューション提案力を発揮できます。
自己管理能力
独立には自己管理能力も必要です。独立後は自分で仕事の進め方を管理しなければいけません。納期を守るための時間管理や、優先順位をつけて作業を行う能力も不可欠です。
不安定になりがちな収入と、不規則稼働のストレスに耐える心身の健康管理も求められます。モチベーションの維持が難しくなると、仕事に支障をきたす恐れがあるため注意しましょう。
コミュニケーション能力
クライアントとのコミュニケーション能力も重要です。要件の聴き取り、提案内容の説明、進捗報告などの場面では、わかりやすく効果的なコミュニケーションが求められます。
顧客のニーズを的確に汲み取れなければ、満足度の高いサービスを提供できません。コミュニケーション不足は誤解やトラブルの原因にもなります。
経営管理能力
事業を効率的に運営して収支を安定させるためには、経営管理能力が欠かせません。財務管理や資金計画などの経営ノウハウを習得して、実践できるようにしておきましょう。
法務や税務、労務などのビジネス関連知識も身につけておきたいところです。経営管理能力がなければ、エンジニアの仕事に専念できなくなります。
ITエンジニアが独立で失敗しないための注意点
ITエンジニアが独立する際には、下記のような点に注意する必要があります。
- 資金繰りの重要性を意識する
- セキュリティ対策を万全にする
- プライベートと仕事は区別する
- スキルアップを欠かさないようにする
それぞれ詳しく解説します。
資金繰りの重要性を意識する
収入と経費を適切に管理して、収支の過不足を調整しましょう。
ITエンジニアの独立には初期費用がほとんどかかりませんが、安定した収入が得られるまでは貯金で生活費を賄わなければいけません。
獲得できる案件数に波がある可能性も考慮しておきましょう。案件が重なる時は収入も多くなりますが、収入が減る時期もほぼ確実に訪れます。
所得税や住民税、消費税などの支払いも必要です。納税資金を準備しておかなければ滞納リスクが高まります。
セキュリティ対策を万全にする
機密データや重要な情報システムに携わるケースも多いため、セキュリティ対策を万全にしましょう。パスワードの適切な管理や認証の強化、データの暗号化などは必須です。
情報漏えいのリスクを最小限に抑え、顧客の信頼を裏切らないように万全の対策を講じましょう。
プライベートと仕事は区別する
自宅をオフィスにする場合は、意識的に仕事とプライベートを区別しましょう。
決められた就業時間を設け、時間外は仕事を控えるといったルール作りが有効です。別室や専用スペースを仕事場所として使い、生活空間と分けたほうがいいでしょう。
プライベートを大切にすれば、仕事へのモチベーションやストレス対策にもつながります。家族の理解も求めながらワークライフバランスを保ちましょう。
スキルアップを欠かさないようにする
ITの技術は日々進化を遂げているため、最新の知識を習得しておきましょう。書籍や動画で学習を続けたり、勉強会やセミナーに参加したりすれば、最新の技術トレンドを把握できます。
業務を通じて実践的な経験を積み重ねることも大切です。独学はモチベーションが下がりやすいため、スキルアップへの意識を高めて取り組み続けましょう。
クライアントは個人事業主や小規模事業者に高いスキルを期待しています。
ITエンジニアの独立に適した事業モデル
自身の強みや志向性に合わせて最適なモデルを選択しましょう。複数の事業を組み合わせて運営すればリスクの分散と収益の安定につながります。
- システム開発
- ITコンサルタント
- OSS活動
- 研修会やセミナーの講師
それぞれ詳しく見ていきましょう。
システム開発
システム開発は代表的な事業モデルです。企業のIT化を支援するさまざまなシステムを提供します。システムエンジニアやプログラマーには最適な事業です。
自宅でシステムを開発するだけでなく、企業常駐の受託開発案件も少なくありません。開発プロセス全体をコントロールする能力は求められますが、長期的な安定収入を得られる可能性があります。
ITコンサルタント
IT関連のコンサルティングサービスを提供する事業モデルです。ITエンジニアの知見を直接活かせます。ITに関する高度な経験とスキルがあれば、信頼されるコンサルタントになれるでしょう。
業務は戦略的なサポートだけではなく、導入効果の分析や運用保守体制の整備なども含まれます。高度な経営コンサルティング力を問われる事業ですが、高収入を期待できるのは大きなメリットです。
OSS活動
OSS活動は、主にオープンソースソフトウェアの開発・保守を行い、その活動自体を事業化する形態です。
基本的には寄付や有料サポートなどで収入を得ます。優れたOSSの開発者として知られるようになれば、企業からの有償サポートや講演の依頼も期待できます。
収入の安定性に不透明な面もありますが、スキルアップとキャリアアップにつながるのは間違いないでしょう。
研修会やセミナーの講師
ITエンジニアの実務経験と専門知識を活かして、各種セミナーや研修会の講師を務める事業モデルです。企業の技術者に向けた最新技術の解説や、プログラミング指導といった内容が想定されます。
経験とスキルをベースにユニークで付加価値の高い講義を用意できれば、高収入も可能です。
ITエンジニアが独立後に案件を獲得する方法
ITエンジニアが独立後に案件を獲得する方法には、下記のような種類があります。
- エンジニア向け求人サイト
- クラウドソーシングサービス
- SNS
- エンジニア向けエージェント
スキルや働き方のスタイルに合わせて複数の方法を併用すれば、案件の安定確保にもつながります。
エンジニア向け求人サイト
エンジニア専門の求人サイトを利用する方法です。さまざまな案件から自分のスタイルに合った仕事を選択できます。
希望単価や勤務地なども指定できるため、案件の検索に手間がかかりません。企業と直接やり取りできるのも大きなメリットです。
クラウドソーシングサービス
インターネット上で個人と企業を仲介するサービスを利用する方法です。
登録後に自身のスキルや実績を明記しておけば、企業から声がかかる可能性があります。掲載されている案件に自分から提案することも可能です。
安価な案件が多く継続受注も難しいですが、独立直後に実績を積みたいときには役立つでしょう。
主なクラウドソーシングサービスには「Lancers」や「CrowdWorks」などがあります。
SNS
SNSを介して案件を獲得するITエンジニアも増えてきました。自身のSNSアカウントで技術的な発信をすれば、ビジネスチャンスにつながる可能性があります。
ただし、有益な情報の継続的な発信が不可欠です。技術的な議論があれば積極的に参加してみるのもいいでしょう。
案件の獲得に役立つSNSには「LinkedIn」や「Facebook」「X(旧Twitter)」などがあります。継続して案件を獲得するためにも、複数のSNSに登録しておきましょう。
エンジニア向けエージェント
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ITエンジニアの独立に関するよくある質問
ITエンジニアが独立するのに年齢は関係ない?
独立に年齢は関係ありません。20代でもスキルさえあれば十分に独立できます。年齢よりも実績と経験年数のほうが重視されると考えていいでしょう。
ITエンジニアが独立するまでに何年ぐらいかかる?
独立までに5年~10年程度の実務経験を積むのが望ましいでしょう。この期間に高度な専門性を習得して、プロジェクト遂行能力や人脈形成などの独立に必要なスキルを培えます。優秀な人材であれば2年~3年程度での独立も可能です。
独立後の年収水準はどのくらい?
案件や稼働率によって年収は異なりますが500万円~800万円程度が一般的です。実力次第では1,000万円以上の高年収も夢ではありません。
営業の経験がなくても大丈夫?
営業の経験があれば有利ですが、なくても案件は獲得できます。たとえば、ITエンジニア向けのエージェントサービスを利用すれば、案件獲得や報酬の交渉を一任できるため営業経験は不要です。
未経験からでもITエンジニアとして独立できる?
完全な未経験からの独立は困難です。最低限のスキルを習得するためにも、着実に実務経験を積みましょう。学校や職業訓練などで基礎を学び、会社員として実務経験を積む方法が現実的です。
まとめ
ITエンジニアの独立には、自由な働き方や収入アップの可能性といったメリットがあります。
ただし、収入の不安定さと事業運営における責任は伴います。
独立に踏み切るかどうかは、各人の価値観や人生設計によって異なるでしょう。心構えと準備を万全にすれば、ITエンジニアとして自由にビジネスを展開し、高い収入を実現できるはずです。